トヨタ・カムロード、19夏の新型キャンピングカー
キャブコンのベース車として、多くのキャンビングカービルダーに長年にわたり採用されてきたトヨタ「カムロード」。2月のジャパンキャンピングカーショーで2019年式が発表され、半年経って採用車種がどの程度増えたのかを調べてみた。
キャブコンバージョン、略してキャブコンと呼ばれるキャンピングカーは、トラックのシャシーにキャンパーシェル(居住スペース)を搭載した、スペース的に余裕があるタイプである。多くは、運転席(キャビン)の上にバンクベッドと呼ばれるひさしのようなでっぱりが存在するのが外見的な特徴だ。バンクベッドは就寝スペースなので、キャブコンはミニバンをベースにしたバンコンよりも就寝定員が1~2名多い。またキャブコンの車両価格は、下は400~500万円台からで、上はオプションを含めると1000万円オーバーのものもある。
展示されたキャブコンの半数近くを占める「カムロード」
キャブコンのベースとして選ばれいている車種は多いが、長年にわたって多くのビルダーで採用されてきたのがトヨタ「カムロード」だ。今回、170台以上のキャンピングカーが出展され、キャブコンは40台以上(軽自動車ベースの軽キャブコンも含めて)。そのうち、「カムロード」ベースはベースは20台ほどと、半分近い割合を占めているのである。
「カムロード」は、トヨタのトラックである「ダイナ/トヨエース」をベースに、キャブコン用シャシーとして専用に開発されたもの。そして、より安定した走行ができるようにと、後輪のワイドトレッド化とWタイヤ化を施した新型車の開発をトヨタに働きかけてきたのが、国内屈指のキャンピングカービルダーであるナッツRVだ。海外仕様の「ダイナ/トヨエース」に最適なモデルがあったことから、粘り強く働きかけたところ、それをベースに2019年式を開発することが決定。そして、2月のジャパンキャンピングカーショーでお披露目となったという次第だ。今回は3台の2019年式「カムロード」を採用したキャブコンが展示された。
ナッツRVの2019年式ベースの新車は「クレア5.3W エボリューション Wタイヤ」
北九州の本社と工場を中心に、全国に多数の営業所を構えるナッツRVは、大手キャンピングカービルダーの1社。今回は、出展社中最大の13台を展示した。「カムロード」ベースのキャブコンはそのうちの5台。その中で、2019年式がベースの新車が「クレア5.3W エボリューション Wタイヤ」だ。
「クレア」シリーズは、国内外問わず高い評価を得ている高性能・高機能な部品を採用することにこだわって製作された。例えば、エントランスドアは独HARTAL社製、アクリル製二重窓は独DOMETIC社製など、キャンピングカー大国のドイツ製品も多い。また、乗り心地の向上のために独自のショックアブソーバーを国内大手のKYB社と共同開発するなど、”高級”キャブコンなのが特徴だ。シリーズは6車種あり、それぞれベッドのサイズや車内のレイアウトなどの仕様が異なる。「5.3W」は、車両後部に横幅1200mmのダブルサイズを2段構成としているほか、対面式ダイネットスペースを簡易ベッドにできるマルチレイアウトなどを採用したモデルだ。
また”エボリューション”とは、同社が独自に開発した急速充電が可能な「EVOLUTION SYSTEM」の搭載車であることを示す。インバーター機能付き家庭用エアコンをバッテリーのみで使用でき、また連続して使用したい場合もほぼアイドリングのみで十分となっている。さらに、バッテリーは3~6時間の走行でフル充電が可能。節電に神経質にならなくてもいい点が大きな魅力として人気を博している。
VANTECHは2019年式を採用した新型「CORDE Leaves ワイドトレッドWタイヤ」を初披露
所沢市に本社を置き、全国に多数の営業所を構えるVANTECH(バンテック)も国内の大手キャンピングカービルダーの1社だ。「カムロード」ベースのキャブコンは、「CORDE」(コルド)シリーズ、「ZIL」(ジル)シリーズなど数多くを販売する。今回は2019年式をベースとした「CORDE Leaves ワイドトレッドWタイヤ」を初披露した。また、同社の「カムロードベース」キャブコンはすべて2019年式「カムロード」に対応したことも併せて発表されている。
”Leaves”とは葉のことで、1枚1枚は色や形が異なる複数の葉が木でつながり、共に生きることをイメージしている。葉になぞらえ、キャンピングカーのオーナーにも「人と人とのつながり」や「共に生きる幸せ」、そして「人と自然の距離が近づくように」という想いが込められた1台だ。特徴は、同社の1ランク上の「ZIL」シリーズに近づけ、「CORDE」シリーズで最も広い車内を実現したこと。またエントランスにFRP製防水フロアを使用し、雨の日も靴のままで室内に入れるなど、利用シーンを考慮した設計となっている点も嬉しい。
9つの特別装備を持つ東和モータース販売の「WOHN NEUN R2Bレイアウト」
東京・杉並区に本社を、首都圏と札幌に複数の支店を構える大手キャンピングカービルダーの1社、東和モータース販売。同社は軽キャンパー、バンコン、キャブコンに加え、海外の大型モーターホームの輸入を手がける。さらには、キャンピングカーの中古車の買取・販売、レンタル事業なども行う。今回は、2月のジャパンキャンピングカーショーで披露した2019年式「カムロード」をベースとした、「WOHN」(ヴォーン)シリーズの「NEUN R2Bレイアウト」を再度出展した。
”NEUN(ノイン)”とはドイツ語で9のこと、「NEUN R2Bレイアウト」は標準仕様に9つの特別標準装備を加えた特別グレードであることを意味する。中でも、バッテリーチャージメーカーの世界的大手であるスウェーデン・CTEK(シーテック)社が開発した「D250SA」と「SMARTPASS120」の2製品を組み合わせた高効率の充電システムがポイントだ。サブバッテリーの充電はオルタネーターから電圧・電流の調整も全自動で効率的に実施。温度センサーも装備で過充電の防止機能も備えている。また両製品の組み合わせにより最大140Aの電流にも対応可能となり、家庭用エアコンを使用してもサブバッテリーの消費を最小限に抑えられるようになっている。
既述の通り、2019年式「カムロード」はワイドトレッド化とダブルタイヤ化によって走行時の安定性が大きく増したが、その分車両価格は従来のシングルタイヤモデルよりも高額になる。今回紹介した大手キャンピングカービルダーは、自社のキャブコンをすべて2019年式に切り替えるというわけではなく、購入者の要望に合わせて、従来のシングルタイヤモデルか、2019年式かを選べるようにしている。
また今回は、3社以外で2019年式をベースにしたキャブコンを展示しなかったが、だからといって扱わないというわけではない。そもそもキャンピングカーはシャシーに合わせてキャンパーシェルをハンドメイドで架装するものなので、「カムロード」ベースのキャブコンを製作しているキャンピングビルダーなら問題ないはずだ。まずは相談してみるといいだろう。