“最低”時速が110キロ!?中国の高速道路にビックリ。
2009年に新車販売台数が世界一となり、2018年末の四輪車(乗用車・トラック・バス)保有台数も2億5000万台超で間もなく世界一となる中国。急速な車の普及に合わせて高速道路網の整備も急ピッチで進むが、その最低時速が110キロであるという。どういうことか? モータージャーナリストの加藤久美子がレポートする。
中国に初めて高速道路ができたのは1988年
筆者が最初に中国本土を訪れた1999年当時、中国ではまだ自家用車がほどんど普及しておらず、高速道路が供用されていたのは北京や上海など大都市の周辺だけだった。それが2007年頃から急速に建設が進み、その後は1年間に約6000kmの高速道路建設が進められ、2018年末には14万kmを突破したという。もちろん国土が広いことなど、日本とは諸々の事情が異なるのだが、日本の高速道路は約50年間かけて総延長約9000kmに達したところなので、中国の高速道路建設がいかにスピーディに行われているかがわかるだろう。
追い越し車線の”最低”時速は110キロ!
筆者にとって4回目となった中国への旅。今年初めて気づいたのが高速道路の「最低速度」である。現地についてからタクシーで高速道路を走っていると、制限速度表示に衝撃の数字があることに気が付いたのだ。上写真にあるように、赤丸で最高時速120キロのを示すマークの横に青いマークで最低時速が示されているのだが、そこにはなんと「110」と書いてあったのだ。
筆者が驚いて「もしかして? え? 110って何の数字?」とつぶやいていると、撮影担当として隣に座る息子がササっとスマホで調べて「最低時速110キロってことみたいだよ」と一言。
さらに続けて「1番左が追い越し車線で、最低時速が110キロで最高時速が120キロみたい。ちなみにトラックは追い越し車線を走れないらしい」と教えてくれた。
確かに左端の標識に「客車道、小客車道、貨車禁行」つまり「乗用車、小型乗用車専用の車線なので貨物車は走行禁止」と書いてある。なるほど、確かに中国では左のレーンをのろのろ走っている車はいない。左の車線が追い越し車線で、しかも最低時速が110キロだからだ。
中国の高速道路では、2004年に時速120キロに引き上げ済み
日本でいう道交法にあたる「中華人民共和国道路交通安全法」では2019年現在、高速道路の最高時速は120キロとなっている。日本では今年3月から東名高速の一部区間で試験的に最高時速120キロが施行されたばかりであるが、中国では15年前の2004年5月に時速110 キロ→時速120 キロに引き上げられていた。もちろん最低速度違反も最高速度違反も取り締まりの対象となるという。
知っての通り、日本の高速道路の多くの区間では最低時速は50キロ。最高時速は100キロである。高速道路といえども50キロも速度差のある車が走行している可能性がある。かたや中国の乗用車用車線に限って言えば、追い越し車線で速度差10キロ。走行車線で速度差30キロと日本に比べると速度差が小さくなっているのだ。
一般的に、相対速度差が小さい方が安全と言われ、交通流量の乱れも少ないものである。追い越し車線で最低時速を110キロに定めるのは、それなりの合理性があるのではないかと考えさせられたのであった。