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最終更新日:2019.05.13 公開日:2019.05.13

今年で30周年! 世界で愛される「ロードスター」の歴史を追いかけてみた【オートモビルカウンシル2019】マツダ編

今年で生誕30周年を迎えたマツダ「ロードスター」。現行の4代目まで、2018年12月末時点で累計約110万台を生産しており、世界中で愛されている名車だ。ここでは、4月5日から7日まで開催された「オートモビルカウンシル2019」(幕張メッセ)での展示車両をもとに、その歴史を振り返ってみる。

初代の前期モデルであるNA6CE型「ユーノス・ロードスター」1989年式。ユーノスとはかつて存在したマツダのブランド名だ。初代は1989年9月に登場し、1993年7月にマイナーチェンジ。エンジンを1597ccの直列4気筒「B6-ZE[RS]」型から1839ccの直列4気筒「BP-ZE[RS]」型に換装し、車両型式はNA8C型となった。「オートサロン2019」マツダブースにて撮影した。

 マツダの今年の出展テーマは、「ロードスター ~30年の物語、そして今~」。30年にわたる歴史を有するライトウェイトスポーツ「ロードスター」の歴史に触れられる内容だった。初代NA型から現行4代目ND型までの市販「ロードスター」と、その可動プロトタイプ、そして初代をベースにしたコンセプトカー「クラブレーサー」の6台が展示された。

 ライトウェイトスポーツとは、軽量で走りが軽快なスポーツカーのことで、英国車を中心にして1960年代に世界で一大ブームを起こした。しかし70年代に入ると排気ガス規制に対応できなかったことなどから、数々の名車が消え、そしてメーカーそのものも姿を消していった。そんな”古き良きライトウェイトスポーツ”を復活させたのがマツダであり、「ロードスター」である。

“サンタバーバラの冒険”で「手応えを感じた」可動プロトタイプ

 マツダは1983年11月に、当時の最新技術でライトウェイトスポーツを開発するプロジェクトを立ち上げる。プロジェクトを立ち上げて2年に満たない1985年9月に完成したのが、自走可能なプロトタイプだ。

1985年9月に完成した可動プロトタイプ。初代と比較して、フロント部分のデザインが異なるほか、全体的なプロポーションも微妙に違う。デザインはこの時点ではまだ試行錯誤している段階で、この後も何段階かの変遷を経て、初代にたどり着く。

 プロトタイプの基本シャシーは、英国の自動車エンジニアリング企業であるインターナショナル・オートモーティブ・デザインがマツダからの依頼を受けて開発。そしてエンジンとトランスミッションは4代目「ファミリア」から、サスペンションは初代「RX-7」からと、主要コンポーネントは当時のマツダ車から流用して製作された。

 こうしてできあがったプロトタイプは、その正体を隠して米カリフォルニア州サンタバーバラの街において試走を行った。ドライバーは街をゆく人々に多くの質問を受け、時には子どもたちに囲まれるほど大好評だったという。このときの試走は、”サンタバーバラの冒険”と呼ばれており、「ロードスター」誕生までの大きなトピックとして歴史に刻まれている。

可動プロトタイプ「ロードスター」のリアビュー。リアのデザインは初代とはかなり異なる。

「人馬一体」のコンセプトを実現した初代は1989年2月にワールドプレミア

 サンタバーバラの冒険から3年半後の1989年2月、米シカゴオートショーにて「MX-5ミアータ」としてワールドプレミアした初代。日本国内では、当時存在したユーノスブランドから「ユーノス・ロードスター」として同年9月に発売された。1983年11月のプロジェクト立ち上げから5年強。新時代のライトウェイトスポーツ「ロードスター」がいよいよデビューを果たしたのであった。

初代「ユーノス・ロードスター」E-NA6CE型1989年式のサイドビュー。全長3970×全幅1675×全高1235mm、ホイールベース2265mm、トレッド前1405/後1420mm。車重(5速MT車)940/(4速AT車)1000kg。排気量1597cc・直列4気筒DOHCエンジン「B6-ZE[RS]」型、(5速MT車)最高出力120ps/6500rpm、最大トルク14.0kg-m/5500rpm、(4速AT車)最高出力110ps/5500rpm、最大トルク14.0kg-m/4500rpm。サスペンション前後共にダブルウィッシュボーン式。ブレーキ前・ベンチレーテッドディスク/後・ディスク。

 初代の開発コンセプトは、ドライバーとクルマが一体となって走る楽しさを感じられる「人馬一体」である。マツダの考える「人馬一体」とは、「走る」、「曲がる」、「止まる」というクルマの基本3要素と、「視る」、「聴く」、「さわる」の人の五感の3要素を突き詰め、そして高次元でバランスさせることで実現するものである。この「人馬一体」はその後も揺らぐことなく継承され、現行の4代目ND型にも受け継がれている。

 開発過程では人の感性を中骨とし、クルマの各部品を小骨とした特性要因図「フィッシュボーンチャート」が作成された。クルマ全体の「感性」のバランスを見るのに活用したという。フィッシュボーンチャートの活用などにより、FR駆動、オープン2シーターボディ、タイトなコックピット空間、前後重量配分50:50、ダブルウィッシュボーンサスペンションといった、マツダの考えるライトウェイトスポーツを実現するための要素が固められていったのである。

 初代は1997年12月まで生産され、帰ってきたライトウェイトスポーツとして世界中で歓迎され、グローバル生産台数は43万1506台を記録。マツダはこれ以降、初代を指標として、「走る歓び(よろこび)」を目指すクルマ作りを掲げるのであった。

初代のリアビュー。全体的に角の取れた丸みのあるデザインが特徴だ。数多くのトライ&エラーののちに、このデザインにたどり着いた。

日本初公開! 初代がベースのコンセプトカー「クラブレーサー」

 1989年2月の米シカゴオートショーで市販「MX-5ミアータ」が世界初公開されたとき、同時に展示されたコンセプトカー(ショーモデル)が「クラブレーサー」だ。マツダノースアメリカのデザインスタジオが手がけた。

初代をベースにしたコンセプトカーである「クラブレーサー」。ヘッドランプが、リトラクタブル方式から樹脂製カバーに覆われた固定式に変更されている。

 市販車と大きく異なるのはヘッドランプ。市販車ではリトラクタブル式だが、樹脂製カバーに覆われた固定式に変更された。そしてリアは、6インチの大型リアスポイラーが装着されている。機構面では、走行パフォーマンス向上を目的に、ショックアブソーバーを独ビルシュタイン製に変更されている。

 ボディカラーのブライトイエローは、今回合わせて展示された4代目ND型の「30周年記念車」(ソフトトップモデル)のレーシングオレンジにインスピレーションを与えたという。

「クラブレーサー」のリアビュー。6インチの大型スポイラーとフューエルリッドが目を引く。

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続いては2代目から4代目を紹介!

「人馬一体」のコンセプトをさらに突き詰めた2代目は1998年1月に登場

 初代の登場から8年。ユーザーのニーズの変化、開発・生産技術の進展などにより、マツダは「ロードスター」のボディを作り替えることを決断。そして2代目が1998年1月に登場した。ブランドの廃止によりユーノスの名は外されている。

世界限定7500台が生産された、2代目NB8C型をベースにした「10周年記念車」(1999年式)。スペックは同じだが、専用の内外装や装備が採用されている。2代目のスペックは、全長3995×全幅1680×全高1235mm、ホイールベース2265mm、トレッド前1415/後1440mm。車重1030/1060kg。排気量1839cc・直列4気筒DOHCエンジン「BP-ZE[RS]」型、最高出力145ps/6500rpm、最大トルク16.6kg-m/5000rpm。サスペンション前後共にダブルウィッシュボーン式。ブレーキ前・ベンチレーテッドディスク/後・ディスク。

 2代目も「人馬一体」のコンセプトを継承。さらに、初代が培った楽しさの幅を広げることを目的とし、「Lots of Fun」というコンセプトも掲げられた。それは「Fun of Styling(スタイリングを眺める楽しさ)」、「Fun of Sports Driving(クルマを手足のように操る楽しさ)」、「Fun of Open Air Motoring(風を感じながら走る楽しさ)」の3種類である。

 2代目は初代のアンダーボディを継承しているが、そのままではなくボディ剛性と安全性の向上が図られた。また前後重量配分50:50は軽快な走りに必須として維持されている。そしてエクステリアデザインは、初代よりもさらに丸みがあるイメージとなった。また、空力性能と前方視界の向上を目的とし、リトラクタブル式のヘッドランプを固定式にしたところが大きな変更点だ。

 エンジンは初代の前期モデルに搭載された1597ccの「B6-ZE[RS]」型と、マイナーチェンジ後に搭載された1839ccの「BP-ZE[RS]型の2種類が用意された。それぞれの車両型式はNB6C型とNB8C型だ。

 2代目の販売中、世紀の変わり目を迎え、2000年には初代との累計で53万1890台を記録。「2人乗り小型オープンスポーツカー」の累計生産世界一としてギネスブックに認定された。2代目自体の販売台数は29万123台。2005年8月に3代目にバトンタッチした。

2代目の「10周年記念車」のリアビュー。ボディカラーは同車専用のイノセントブルーマイカ。ホイールは光沢バフ仕上げが施されたアルミ製を採用。内装色はブラックベースに、ボディカラーと協調するブルーを組み合わせたツートーン。メーター外周のクロームメッキリング、カーボン調素材を用いたセンターコンソールパネルなども設定。また国内仕様のみは、ピストンなど一部のエンジン部品を厳選して部品を組んで重量バランスを調整し、吹け上がり、伸び、レスポンスの良さを実現した。

「人馬一体」と「Lots of Fun」を継承しながらも新設計となった3代目は2005年3月に初披露

 3代目の開発は、初代の開発が始まってから20年近くが経った2002年3月からスタートした。初めて「ロードスター」の開発に関わる若手メンバーも多かったことから、100名近い開発メンバー全員で「人馬一体」のコンセプトを正しく理解し、共有することから始めたという。

3代目NCEC型のソフトトップモデル「RS」(6速MT)をベースにした国内仕様「20周年記念車」(2009年式)。スペックは通常のNCEC型と同じだが、専用の内外装や装備が採用されている。全長3995×全幅1720×全高1245mm、ホイールベース2330mm、トレッド前1490/後1495mm。車重1090~1140kg。排気量1998cc・直列4気筒DOHCエンジン「LF-VE」型、最高出力170ps/6700rpm、最大トルク19.3kg-m/5000rpm。サスペンション前・ダブルウィッシュボーン式/後・マルチリンク式。ブレーキ前・ベンチレーテッドディスク/後・ディスク。

 初代と2代目のデザインの特徴は、低く流れるようなショルダーラインとプロポーションで、3代目もそれを継承した。マツダの場合、同じスポーツカーでも「RX-7」のように3代それぞれ異なるデザインを採用している場合もある。しかし「ロードスター」では極力先代のイメージを踏襲するスタイルが採用された。

 さらに、ピュアなライトウェイトスポーツの本質とした「シンプル」、「コンテンポラリー(現代的な)」、「ファン」、「フレンドリー」という4つのキーワードが掲げられ、エクステリアデザインが作り上げられていった。

 また「人馬一体」を実現する最重要要素として「軽量化」にも改めて注目。当時最新のCAE技術を導入し、軽量化構造が追求された。同時に、超高張力鋼板と高張力鋼板の効果的な使い分けも進められた。その結果、2代目に対してボディ剛性が強化され(曲げ剛性22%、ねじり剛性47%)、その一方でホワイトボディの総重量は1.6kgの軽量化を実現したのである。

 3代目は2005年3月にジュネーブモーターショーでワールドプレミアとなり、国内では同年8月から発売を開始。2015年5月までの10年にわたって販売され、グローバルの合計生産台数は23万1632台だった。

「20周年記念車」のリアビュー。ボディカラーはクリスタルホワイトパールマイカで、内装色は赤と黒の組み合わせ。ソフトトップモデルのほかにも、ルーフなどを自動で収納するリトラクタブルハードトップモデルの「VS」(6速AT)にも「20周年記念車」は設定された。欧州市場用の「20周年記念車」には、トゥルーレッドとオーロラブルーマイカのボディカラーも用意された。

最新技術「SKYACTIV TECHNOLOGY」が導入された現行4代目は2015年5月に発売開始

 4代目は「人馬一体」、「Lots of Fun」の両コンセプトを不変のテーマとして継承しつつ、そこに新コンセプト「Joy of the Moment, Joy of Life(人生を楽しもう)」が追加された。初代から3代目までの単純な継承を目指すのではなく、クルマを楽しむ感覚=「感(かん)」が開発キーワードとなった。

現行4代目ND5RC型(ソフトトップモデル)をベースとした「30周年記念車」(日本初公開)。全長3915×全幅1735×全高1235mm、ホイールベース2310mm、トレッド前1495/後1505mm。車重990~1040kg。排気量1496cc・直列4気筒DOHCエンジン「P5-VRP[RS]」型、最高出力132ps/7000rpm、最大トルク15.5kg-m/4500rpm。サスペンション前・ダブルウィッシュボーン式/後・マルチリンク式。ブレーキ前・ベンチレーテッドディスク/後・ディスク。

 まず、初代並みの「軽快感」や「手の内・意のまま感」を実現するため、マツダの最新技術「SKYACTIV TECHNOLOGY」を導入。ボディ、シャシー、パワートレインを一新して徹底的な軽量化も施され、トータルで100kg超の軽量化を達成した。ボディだけの重量なら、歴代最軽量である。

 さらに、全長を歴代モデル中最も短い3915mmとしながらも、エンジン搭載位置は最も低かった3代目よりもさらに13mm下方に、15mm後方にすることに成功。乗員位置も20mm下げ、15mm内側に寄せられた。その結果、ボンネットと全高を引くすることができ、同時に重量物の集中化も図られてクルマの一体感を向上さたという。

 エクステリアデザインに関しては、これもまたマツダの最新デザインテーマである「魂動(こどう)」が取り入れられた。路面に貼りつくような安定感と同時に、低く構えて前後左右に俊敏にダッシュするような瞬発力が表現されている。

 4代目は大きく2種類あり、排気量1496ccの「P5-VP[RS]」型エンジンを搭載したソフトトップモデルが「ND5RC」型。そしてもうひとつが、2016年に追加された「ロードスターRF」と呼ばれる「NDERC」型だ。こちらはルーフを電動で収納できるリトラクタブルファストバックモデルで、こちらは排気量1997ccの「PE-VPR[RS]」型を搭載している。

 2015年5月から2018年12月末までの累計生産台数は、13万6346台。初代には及ばないが、3代目とほぼ同じペースで伸びている。

「30周年記念車」のリアビュー。「30周年記念車」はリトラクタブルファストバックモデルのNDERC型にも設定されており、両モデル合わせて世界限定3000台が生産される。初代のコンセプトカー「クラブレーサー」のボディカラー・ブライトイエローに影響を受けた、レーシングオレンジで塗装されている。RAYSと共同開発した鍛造アルミホイール、レカロ製シート、ビルシュタイン製ダンパー、ブレンボ製フロントブレーキキャリパー、ニッシン製リアブレーキキャリパーなどを備える。


 誕生してから30年という時間は実に長い。30年もの間、世界中の多くのファンに世代を超えて愛され続けているのは、マツダが熱意を持って生み出した「ロードスター」の開発コンセプトに、多くの人が共感したからではないではないだろうか。ライトウェイトスポーツが持つ魅力のポテンシャルに気がつき、それを1980年代の技術で再誕させたことは、「ロードスター」を開発した人々の慧眼だったに違いない。

 現在の日本では、FR駆動の車種自体が大きく数を減らしている。しかしキビキビとした楽しい走りを体感するには、FRが最も適していることで異論はないだろう。今後も、「ロードスター」のような徹底して考え抜かれた開発コンセプトでもって、新たな市場を開拓するチャレンジングなクルマに出てきてほしいところである。

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