「救出救助車」に「排煙高発泡車」!? 日本最強の装備を誇る東京消防庁の消防車に迫ってみた! その1
日本で最も装備と人員が充実した消防組織が東京消防庁だ。さまざまな状況の火災に対応すべく、陸海空の数々の消防装備を揃えており、消防車だけを見ても実に多種多様。ここでは、そうした数々の消防車を紹介する。
東京消防庁は1948年3月7日に発足し、島しょ地域と稲城市を除く東京都のほぼ全域の消防防災業務を担う組織で、約1万8400人(うち、消防士は1万8000人弱)の職員が所属している。本部は東京都千代田区にあり、管轄区域を10の方面に分けており、消防署は81署、消防分署は3署、消防出張所は208所ある。人員は日本最大、その装備の充実ぶりも日本随一といえよう。
消防・救急車両は2018年4月1日現在、1977台を配備。その主な内訳は以下の通りだ。
ポンプ車:489台
はしご車:86台
化学車:48台
救助車:29台
指揮隊車:93台
救急車:251台
そのほか多数
車両の中には、無人走行放水設備の「デュアルファイター」(無人走行放水車「ドラゴン」と障害物除去車「セーバー」の2種類でワンセット)、救出ロボット「ロボキュー」などのロボット系(無人機)の消防・救助車両も含まれる。ほかにも10艇の消防艇、8機の消防ヘリコプター(1機は総務省消防庁からの運行受託)を擁し、さらに近年はドローンも配備されており、2019年の出初め式では観客席の安全のための監視に用いられた。
ここでは東京消防庁に配備されているさまざまな消防車を紹介する。撮影は、2019年1月6日に東京ビッグサイトで行われた出初め式の一環として実施された車両広報展示にて行った。
最大地上高約22mの屈折アームを装備した「屈折放水塔車」
「屈折放水塔車」ははしご車に分類されている、高所火災などに対応した放水車。伸ばすと最大地上高が22mにもなる屈折式の二節ブーム(アーム)を備えており、高所火災に加えて化学火災などの消防隊が容易には近づけない現場において、高所から放水したり、化学火災用の泡を放射したりすることが可能だ。最大放水量は毎分3800L、最大泡放射量は毎分3400L。
30m級、40m級、先端屈折式と、東京消防庁の「はしご車」は大別して3種類
今回展示されていたのは、全油圧駆動4連はしごを備えたバスケット方式の「30m級はしご車」。より高所で作業を行うための40m級はしご車に対し、30m級はより離れた建物での救出などを行えるよう設計されている。30m級の中には、セットバックしている建物に対応するための「先端屈折式はしご車」もある。
通常装備では接近できない被災地にも向かえる頑丈さが特徴の「救出救助車」
続いては、救助車系を紹介。「救出救助車」は、大規模震災など、通常装備では消防隊が接近できない被災地に人員や装備を輸送するための車両だ。過酷な被災地に一番乗りできるよう、走破性を高めるための工夫がなされている。6輪駆動を採用し、パンクしにくくするための細いタイヤを装着(太いタイヤの方が接地面積が広いのでパンクする確率が高い)、車高もベース車両より大幅に高くしている。その車高の高さを利用し、浸水した地域での人が乗ったままの車両の救出も行える。
さらに、耐衝撃加工が施された金属製アンダーガードを備え、フロントウインドウも防護用の金網が覆う。カーゴ部分には水上バイクなどを積載するための昇降装置を備え、火災から車両を保護することを目的とした自衛用噴霧装置も装備している。どんな被災地でも救助に来てもらえそうな、頼もしさを有した1台である。
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続いては「水難救助車」や「特殊災害対策車」など!
水難事故が発生した際に人命救助を行う「水難救助車」
「水難救助車」は、河川や港湾、また台風などで水難事故が発生した際に被災者などの救出や捜索を行うための救助車両だ。隊員が潜水するためのスキューバセットを複数収納し、ゴムボートやその船外機も収納。そのほか、各種水難救助資機材を積載している。照明装置やシャワー装置なども装備。
NBC災害が発生した際に活躍する「特殊災害対策車(除染車)」
「特殊災害対策車」は「除染車」ともいわれ、化学車の一種だ。NBC(核・細菌・化学)災害が発生した際、有害物質が衣服や肌などに付着してしまった被災者が、着替えたりシャワーを浴びたりして除染するための機能を有する。
上写真で、ラダーが3脚設置されているが、その先が着替えができる小部屋やシャワー装備があり、歩行可能な人なら一度に3人が利用可能。また下写真の車両後部の設備は、自分では歩行不可能な人がシャワーで除染するための部屋。中にベッドとシャワー設備がある。
屋内に充満した煙の排出と、化学消火用泡の大量発泡が可能な「排煙高発泡車」
「排煙高発泡車」はふたつの異なる機能を有しており、”排煙”は建物内や地下などに充満している煙を排出することを意味する。下写真の大型のフレキシブルダクトを建物などに挿入して煙を吸引、車両上部から排出する。
そしてもうひとつの”高発泡”は、化学火災用の泡を大量に発泡できる機能を指す。同機能があることから、「排煙高発泡車」は化学車の一種となっている。
東京は一般住宅が密集する地域もあれば、工場地帯もあるし、高層ビルもあれば地下街も多い。港湾部にはコンビナートや大型倉庫などもあり、一口に火災といっても、さまざまな状況の火災が発生する可能性がある。また、近年ではテロなどによるNBC災害のような危険性もあるし、大規模な震災も予想されている。
東京都の人口は1385万人強。周辺地域から通勤・通学する人たちも含めれば、さらに多くなる。そうした人々を守るため、今回紹介したさまざまな消防車を駆使して、消火や救助活動を行っているのが東京消防庁なのだ。
今回は、定番のはしご車系に始まって、救助車系、そして化学車系をご覧いただいた。消防車というと、ポンプ車とはしご車のイメージがどうしても強いが、さまざまな状況に対応するため、東京消防庁には幾種類もの車両が用意されている。その2では、指揮車や支援車などを紹介する。また、東京消防庁航空隊と消防ヘリについての記事はこちらから。同様に、東京消防庁の水上消防を担う消防艇についてはこちらから。