丸の内でスマートモビリティ「RODEM」を使った実証実験。未来の観光はどう変わる?
2020年の東京オリンピックにおける外国人観光客の増加を見据え、公共交通機関から降りた後の「ラストワンマイル」を担うモビリティの必要性が高まっている。そんな中、単に移動するだけではない新たなモビリティサービスを提供すべく実証実験が始まった。
株式会社NTTドコモ、三菱地所株式会社、株式会社三菱地所設計、株式会社テムザックが3月22日まで東京・丸の内エリアにおいて実施する、次世代スマートモビリティ「RODEM(ロデム)」を用いた観光客向け公道実証実験を紹介しよう。
次世代スマートモビリティ「RODEM」とは
「RODEM」は、ロボットメーカーであるテムザック(福岡県宗像市)が開発した、1人乗りのスマートモビリティ。前傾姿勢で乗車し、ジョイスティック1本でコントロールできる。最高速度は時速6キロ(今回の実証実験では時速4キロに制限)で、家庭用の100V電源で8時間充電すると約15キロ走行できる。
もともとは、介護現場からの「ベッドから車いすへの乗り移りをロボット技術で解決して欲しい」という声により開発をスタート。通常の車いすでは、腰かけた状態から180度回って車いすに座る必要があるため、転倒事故が起きやすく、補助をする介護者にも大きな負担があった。それを解決すべく、前から乗るという方法をとったことが大きな特徴である。RODEMの詳細については関連記事(開発は約10年! 座れれば足となれる介護用スマートモビリティ「ロデム」。量産第1号が草津総合病院に導入)でも紹介している。
今回の実証実験では、RODEMにタブレット端末を装着。ARによる周辺スポットの案内、NTTドコモの「dグルメ」の情報を用いた周辺レストランの案内、「はなして翻訳」を用いた多言語翻訳など、観光客が周辺の情報に簡単にアクセスしながら移動するという、新しい観光のスタイルを提案している。
屋外仕様のRODEMに試乗。その乗り心地は?
今回の実証実験では、屋内仕様が4台、屋外仕様が3台の計7台が用意されている。屋外仕様では、段差などでのガタツキを抑えるためサスペンションが搭載されているほか、障害物を検知して自動で停止する機能が備えられている。3~5センチほどの段差は難なく乗り越えられる。
RODEMに乗車すると、まず首かけタイプのスピーカーを装着。操作説明や周辺情報の音声案内はそこから聞こえてくる。操作説明は、搭載されたタブレットで5分程度の動画を見るだけで完了。ジョイスティックを行きたい方向に傾けるだけでとても簡単である。また、スマートフォンによる遠隔操作にも対応している。
前輪にオムニホイールを搭載しているので、その場で180度回転することができるのが面白い。5分も乗っていると慣れてきて、直感的に操作できるようになった。
走行スピードは、ゆっくり歩行するのと同じくらいで歩行者と同じ空間を移動するのにちょうどいい。目線もほぼ歩行者と同じくらいで、観光であれば風景を楽しみながら移動できるだろう。実際に歩道を走行してみたが、段差などのガタツキもさほど感じず、快適な乗り心地だった。
ジョイスティックの操作が可能で安定姿勢がとれれば、子どもからお年寄りまで使用可能。体重約100kgまでの人が乗ることができるという。ちなみに、記者会見に登場した「メイプル超合金」の安藤なつさんは、足が太くて入らないという理由で乗ることはできなかったそうだ。
タブレットによる観光案内
ARによる周辺案内では、上写真のように実際の映像に重なる形で、案内が表示される。タブレットの操作をしながら運転しなくてもいいように音声での操作にも対応している。
例えば、音声操作をオンにして「お腹空いた」と言うと、周辺のグルメ情報を表示。マップを利用して、最短ルートで案内してくれる。お店によっては、クーポンのQRコードが表示されることもある。
NTTドコモの担当者は「将来的には、AR案内で見つけたお店にタブレットから注文。自分のスマホでキャッシュレス決済。受け取り時間に取りに行くだけという、観光地での待ち時間をなくすことも考えている」とコメントした。
また、アートや歴史的建造物を前にすると、自動で詳細説明が表示される。多言語に対応しているので、搭乗者の母国語で説明が出てくるのはとても嬉しい。さらに観光地の景観保護の観点から、看板を立てる必要がなくなるというメリットも期待できるという。
このように、タブレットが観光ガイドの役目を果たしてくれることで、観光客が街を回遊する仕組みを提供することもできる。単に移動するためモビリティから、観光そのものにコミットする総合的なサービスとなりそうだ。
体験者の反応は?
実証実験初日となった18日は、2時間という短い開催時間にも関わらず、約30名が体験。「操作は簡単だった」「アトラクションのようで面白い」「乗り捨てできたら良い」というような声が聞かれたという。
テムザックの担当者によると「現在、センサーを使用した障害物の検知、信号の判別などを検証中。将来は、目的地に到着して乗り捨てたRODEMが、充電ステーションに自動運転で戻る仕組みを実現する予定」だという。また、今後も実証実験を重ね、2020年の東京オリンピックでの導入を目指しているそうだ。
道交法上では、電動車いすと同じ扱いとなり、操作性や安全性の観点からは、公道利用は問題ないところまで来ているという。RODEMに乗った観光客が街中を走行し、歩行者と共存する未来はそう遠くないだろう。
実証実験の開催概要
内容:「RODEM」に乗車し、取り付けたタブレットにより各種回遊支援サービスを提供しながら丸の内エリアを周遊。
日時:3月18~22日10:00~17:00(18日のみ14:30~17:00)
発着場:3月18~19日 丸の内ビル1階 マルキューブ
3月20~22日 新東京ビル1階 JNTO TIC
※当日の天候により中止の可能性あり。
※当日は先着順に乗車案内。
※体験にあたっては、現地での規約への同意と係員の指示に従う必要あり
※小学生以下の方は屋内コンテンツのみ体験可能(要保護者の同伴および同意)
※飲酒者は乗車不可
【体験できる内容(1つ選択)】
1.屋内での試乗体験(18、19日のみ)
遠隔操縦体験を含め、本実証での提供内容全般を簡単に体験。
2.仲通りでの自由回遊
丸の内周辺のスポットを、ARや音声などの案内を受けながら自由回遊。
3.スタンプラリーでアート体験
「丸の内ストリートギャラリー」で展示中のアートを巡るスタンプラリー。ARによるアートの解説。
4.キッチンカーでキャッシュレス体験(時間によって体験できない場合あり)
登場体験者限定で、仲通りのキッチンカーにて「d払い」でのキャッシュレス体験。
5.歴史体験ツアー
丸の内エリアの歴史的建造物を巡りながら、動画や音声対話形式でさまざまな解説を実施。丸の内の理解を深める。