リコーの一般車両搭載型「路面性状モニタリングシステム」
車両後部に取り付けられた「路面性状モニタリングシステム」。今回は、三菱「パジェロ」に取り付けられているが、どの車種にも対応している。
路面の舗装状態が悪化すると、徒歩にしろクルマにしろ移動時の安全性と快適性が損なわれるし、スムーズに移動できなければそれだけ経済性も悪化してしまう。
現在、路面の舗装状態の検査は一般的に、検査機器を搭載したマイクロバス程度のサイズがある専用車か、人力で牽引する検査機を用いて行われている。しかし、それぞれ一長一短があった。専用車は人力に比べれば効率的だが、細い街路などでは利用できない。一方の人力の検査機は、細い街路での使用も問題ないが、作業に時間を要してしまうという弱点を抱えていた。
そこでリコーは新たな検査システムを開発すべく、2016年7月から2017年8月まで、国土交通省、秋田県、仙北市とともに「路面性状モニタリング実証実験コンソーシアム」に参画し、実証実験に取り組んだ。検査システムの開発に際しては、「一般車両に搭載できること」と「撮影から計測結果までの業務プロセスを自動化・高度化すること」を技術的な指針とし、道路舗装の状態計測の頻度・範囲を従来方式と比べてより拡大することを目標とした。
ステレオカメラを複数組み合わせて性能とコンパクトさを達成!
そして誕生したのが、複数のステレオカメラを組み合わせた、一般車両に搭載可能な「路面性状モニタリングシステム」だ。今回は三菱「パジェロ」に搭載され、一般財団法人土木研究センターが実施した「路面性状自動測定装置の性能確認試験」を受検。そして、合格したことが9月10日にリコーから発表された。ステレオカメラで構成される検査システムが性能確認試験に合格したのは今回が初めてだという。
同システムの特徴であるステレオカメラは、人の目と同じように2台のカメラによる視差情報が利用されている。これにより、視野内の対象物の奥行き情報(3次元情報)を得ることが可能だ。今回のシステムでは、複数台のステレオカメラが組み合わせられており(台数は未公表)、3次元情報をより正確に取得できるようにしている。
そして今回は三菱「パジェロ」に搭載されているが、同システムを取り付けられるだけのサイズがあって、安定走行ができるのであれば、車種を選ばずに搭載可能だ。一般車で利用できるようになったことから、従来の専用車で入れなかった細い街路にも入っていくことができ、検査効率の向上が期待できる。
試験項目と認定範囲、そして今回のシステムの測定方式(リコー測定方式)と、その結果。試験はすべて昼間に行われている。
路面性状モニタリングシステムはどのように検査する?
道路管理では維持管理の総合的な指標として、「ひび割れ率」、「わだち掘れ量」、「平たん性」のデータをから算出される「MCI(Maintenance Control Index:舗装の維持管理指数)値」が利用されている。今回のシステムは一定速度で走行しながら、それを算出することが可能だ。
まず、ステレオカメラで路面の3次元画像と輝度画像を同時に撮影。そして撮影された画像のうち、3次元画像からは「わだち掘れ量」と「平たん性」を算出。また輝度画像を用いてAI(機械学習)による機械判読で「ひび割れ率」を算出。こうして、撮影から計測結果までの業務プロセスの自動化・高度化を実現したのである。
これらの性能に加え、一般車両に搭載でき、なおかつ時速50km程度で走りながらの計測を行えることから、同システムは効率的かつ網羅的に路面の舗装状態を把握できるようになった。同システムなら対象とする道路を走るだけで情報を取得できるので、道路修繕の優先順位や時期の決定をより的確に素早く行いやすくなるのである。
リコーは、同システムそのものを販売するのではなく、同システムを用いたサービスの提供を2019年度前半から開始する計画だ。価格などの詳細は追って発表される予定だ。
路面性状モニタリングシステムの詳細をまとめた動画。