クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Cars

最終更新日:2018.05.11 公開日:2018.05.11

【三菱のラリーカーを集めてみた! その2】「パジェロ」などクロスカントリー・ラリー参戦車

 WRC世界ラリー選手権や、ダカール・ラリーなど、数々のラリーで活躍してきた三菱。そのラリーカーを紹介する第1弾では主にWRCで活躍した名車「ランサー」や「ランサーエボリューション」シリーズを紹介したが、続いてはダカール・ラリーで大活躍した「パジェロ」など、クロスカントリー・ラリーに参戦した車両を取り上げてみる。

パリダカで増岡浩が優勝! 「パジェロ スーパープロダクション」

チーム日石三菱ラリーアート「パジェロ スーパープロダクション仕様」(増岡浩選手搭乗・2002年ダカール・ラリー優勝201号車)。全長4110×全幅1975mm(全高資料なし)、ホイールベース2570mm、車重資料なし。エンジンは排気量3497cc、V型6気筒DOHC「6G74」。最高出力は260ps(191kW)/6000rpm、最大トルクは36kg-m(353N・m)/3500rpm。トランスミッションは6速MT。駆動方式は4WD。10年前のイベントである「モータースポーツジャパン2007」にて撮影。

 1952(昭和27)年に米ウィリス社と契約して翌年から「ジープ」のノックダウン(現地)生産をしてきた三菱は、海外での販売が可能な自社製クロスカントリー4WDを求めて開発に入る。そして、1973(昭和48)年の第20回東京モーターショーで参考出品され、9年という時間をかけて開発されて1982(昭和57)年から販売が始まったのが「パジェロ」だ。三菱はその「パジェロ」でもって、ダカール・ラリーに翌1983(昭和58)年の第5回から挑戦を開始した。

 第5回大会には市販車無改造クラスに参戦。サハラ砂漠を含み、総走行距離も約1万3000kmという、市販車にとってこの上ない苛酷なラリーに初参戦してクラス優勝、総合でも11位に食い込み、「パジェロ」の名が世界に知れ渡ることとなった。

 その後、三菱は「パジェロ」で総合優勝を果たすようになり、毎年開催前には優勝候補に挙げられるような強豪ワークスとなっていく。そうした中、1997(平成9)年の第19回大会では「パジェロ」を駆る篠塚建次郎選手が日本人初のダカール・ラリー総合優勝を達成。そのときは、増岡浩選手の「チャレンジャー」も加えると、三菱は4位までを独占した。

 そして画像の「パジェロ スーパープロダクション(SP)仕様」は、2002(平成14)年の第24回大会に参戦した1台で、201号車は増岡選手が駆ったマシン。増岡選手はこの年に、遂に総合優勝を手にしたのである。

 SPとは、プロトタイプ(T3)部門と、それまで三菱がワークス参戦してきた市販車改造(T2)部門を併合し、この年から新設されたクラスのことだ。「パジェロSP仕様」は前年までと同様に市販「パジェロ」のショートタイプをベースとしている。エンジンはカムの改良で低中速性能を向上させ、軽量化が施された。ボディの軽量化も施され、エンジンと合わせて合計で100kgほど2001年仕様よりも軽くなっている。そのほか冷却性能と信頼性の向上、ギア比の変更やドライブシャフトの強化、サスペンションの改良による走破性の向上も実施された。

「パジェロSP仕様」を前方から。サスペンションは前後共ダブルウィッシュボーンを採用。ブレーキは前後共ベンチレーテッドディスクだが、ブレーキキャリパーのポッド数が異なる。より制動力を求められる前が6ポッドで、後ろが4ポッドだ。燃料は500Lも搭載する。ホイールはスピードライン製で、タイヤはBFグッドリッチ製。なお、撮影した「モータースポーツジャパン2007」のデモ走行を担当したのは、増岡選手本人。

→ 次ページ:
新しい”エボリューション”が登場!

このマシンも進化した!「パジェロ エボリューション」

チーム・レプソル三菱ラリーアート「パジェロエボリューション」(2007年仕様・MPR13型)。全長4195×全幅1990mm(全高資料なし)、ホイールベース2775mm、車重1825kg(規則最低重量)。エンジンは排気量3997cc、V型6気筒DOHC「6G7」。最高出力は270ps(199kW)/5500rpm、最大トルクは42.5kg-m(417N・m)/4500rpm。トランスミッションは6速MT。駆動方式はフルタイム4WD(デフロック付きフロッキングデフ)。

 新開発の競技専用車として2003年の第29回ダカール・ラリーに投入されたのが、「パジェロエボリューション(パジェロエボ)」だ。画像は、2007年仕様である型式名「MPR13」。第29回には4台が投入され、ステファン・ペテランセルの通算3度目となる総合優勝により、三菱ワークスは7連覇、通算12勝という偉業を達成した。

 MPR13型「パジェロエボ」の特徴は、まずサブフレームを廃止し、軽量化と高剛性化を図るため、一体構造の完全新設計のマルチチューブラーフレームが採用されたことが挙げられる。燃料タンクやスペアタイヤなどの重量物をより低位置かつ中央に配置したほか、エンジンにおいてはドライサンプ用オイルタンクをベルハウジング内に配置して、低重心化とマスの集中化を果たし、ハンドリングに磨きがかけられた。

 ボディは、形状の最適化と前面投影面積の縮小による空力性能の向上が図られたことで、Cd値(空気抵抗係数)が前年型MPR12より約5%向上。そのほか、各冷却器に取り込んだエアを流れるようにし、冷却性能を向上させている。サスペンションに関しては、悪路走行時の路面干渉にさらに配慮が施された形状を細部に採用し、基本ジオメトリーの最適化、スプリングレートやダンパー減衰特性の改良なども行って走破性能の向上が図られた。

 エンジンに関しては、動弁系部品の軽量化とフリクションの低減によるスロットル・レスポンスやドライバビリティ(運転しやすさ)を向上。さらに、燃料噴射制御の精度向上と最適化で、瞬間トルクの安定化も図られた。

 こうして、2018年現在も破られていない、7連覇、通算12勝という大記録を三菱ワークスは達成したのである。

第29回大会でサポートカーとして活躍!「デリカD:5」

CV5W型「デリカD:5」(2007年ダカール・ラリー仕様)。全長4730×全幅1795×全高1870mm、ホイールベース2850mm、車重1770~1800kg。エンジンは排気量2359cc、直列4気筒DOHC「4B12」。最高出力は170ps(125kW)/6000rpm、最大トルクは23.0kg-m(226N・m)/4100rpm。トランスミッションは6速CVT。駆動方式は電子制御4WD。「モータースポーツジャパン2007」にて撮影。

 ダカール・ラリー第29回大会で、MPR13型「パジェロ」の7連覇・通算12勝を支えるためにサポートカーとして投入されたのが、発売直前のCV5W型「デリカD:5」だった。同車は、「”ミニバンの優しさ”と”SUVの力強さ”の融合」をテーマとして開発されたワンボックス型ミニバンで、「デリカ」シリーズの5代目となる。市販車が発売されたのは第29回大会終了から10日後の1月31日。

 「デリカD:5」は、状況において2WDと2種類の4WDと3種類を使い分けられる電子制御式4WDシステムを備え、高い最低地上高と大きな対地障害角を大径タイヤなどで実現していることから、積載量がある上にオフロードでの走破性も高い1台である。各種機材を搭載し、なおかつスタッフ数名を載せて安全かつ確実に、砂漠を含む起伏の多いアフリカならではの大地を走破するのに最適と判断され、サポートカーに採用された。画像のサポートカーはアンダーガードや補助灯を備え、「パジェロエボリューション」と合わせたデザインが施され、競技車両のような精悍さを獲得している。

 サポートカーといえどもその道程は苛酷で、各ビバーク(拠点)間を競技ルートとは異なる迂回路で走行できるのだが、総走行距離は競技ルートと同等の8000km前後になる。競技車両のようにタイムを争ってはいないが、耐久性が絶対的に求められるのがダカール・ラリーのサポートカーなのだ。

 「デリカD:5」は、当時の三菱系日本人ラリーストのトップのひとりだった田口勝彦選手がドライバーを担当し、見事に8000kmを完全走破。三菱ワークスの7連覇・通算12勝を達成するのに大いに貢献したのである(撮影したモータースポーツジャパン2007のデモ走行も、田口選手自身が担当)。

→ 次ページ:
レアなラリーカーと現時点の三菱最新ラリーカーを紹介!

ハンドドライブ仕様の「トライトン」

「トライトン ハンドドライブ仕様」(アジア・クロスカントリー・ラリー2007参戦車)。全長4995×全幅1800mm。全高は資料なし(市販車は1780mm)、ホイールベース3000mm、車重資料なし(市販車は1840kg)。エンジンは排気量3496cc、V型6気筒DOHC「6G74」。最高出力は178ps(131kW)/4750rpm、最大トルクは30.1kg-m(295N・m)/3500rpm。トランスミッション、駆動方式資料なし(市販車は4速AT、イージーセレクト4WD)。撮影はモータースポーツジャパン2007。

 1990年代後半に2輪ロードレース世界選手権のトップカテゴリー・GP500クラスで将来を期待されていた青木3兄弟の次男、拓摩選手。しかし、1998年にテスト中の事故で下半身不随となってしまう。そんな彼がドライバーに転向し、クロスカントリー・ラリーに出場するため、手だけの操作でアクセルとブレーキもコントロールできるようにしたのが、画像のピックアップトラック「トライトン」だ。

 拓摩選手が初めて参戦した国際ラリーが、FIA公認のクロスカントリー・ラリーとしてはアジアでは最大となる、タイが舞台のアジア・クロスカントリー・ラリー。拓摩選手はその第12回の2007年大会に参戦した。8月5~10日に開催され、バノクからパタヤまで約2250km(競技区間1100km)を見事完走。総合7位、ガソリン車クラス2位という好成績を残した。

 なお、「トライトン」は現在、日本では発売されていない。

三菱の最新競技車両「アウトランダーPHEV」

「アウトランダーPHEVラリーカー」(2015年バハ・ポルタレグ500参戦車両)。全長4695×全幅1800×全高1710mm、ホイールベース2670mm、車重1830~1900kg。エンジンは排気量1998cc、直列4気筒DOHC「4B11」。最高出力は118ps(87kW)/4500rpm、最大トルクは19.0kg-m(186N・m)/4500rpm。フロントモーターの最高出力82ps(60kW)、14.0kg-m(137N・m)。リアモーターの最高出力82ps(60kW)、最大トルク19.9kg-m(195N・m)。リチウムイオン電池総電圧300v、12kWh。駆動方式はフルタイム4WD。競技車両のデータは未公表で、掲載スペックはすべて市販車のもの。

 毎年、年が明けて早々に行われるダカール・ラリーの前哨戦として参加するチームや選手も多い、ポルトガル自動車連盟主催のクロスカントリー・ラリー「バハ・ポルタレグ500」。2015年の第29回大会は、スペシャルステージ(競技区間)約440km、リエゾン(移動区間)約230kmで構成され、FIA(国際自動車連盟)主催のクロスカントリーラリー・ワールドカップ第10戦として開催された。4輪、2輪合計で300台以上が参戦する人気のある大会だ。

 三菱はEVおよび4輪制御の両技術を磨くため、2015年時点で世界唯一のツインモーター4WDだったプラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」の市販車をベースにしたラリーカーを開発。フロントとリアのモーターの高出力化、ジェネレーターの発電量のアップ、駆動用バッテリーの容量アップなどの改造が施された。

 またオフロードの走破性を高めるため、地上高およびサスペンション・ストロークの増大、ラリー専用大径タイヤの装着なども行われた。そのほかプログラムも改良され、ラリー専用制御でトラクション性能が強化されている。

 バハ・ポルタレグ500は、WRCのようなハイスピードのグラベル(砂利道)から、起伏の激しい悪路まで多様なコースで構成される。しかも、間に修理などを行えるサービス時間を20分挟むものの、スペシャルステージとリエゾンと合わせて約500kmを連続走行する構成となっており、モーターやバッテリーには大変な負荷がかかる。それこそが、モーターやバッテリーなどの技術を鍛える場として選ばれた理由だ。

 ダカール・ラリーで活躍した増岡浩氏が監督権選手を務めて参戦し、結果は走行時間11時間45分47秒で見事完走。総合47位となった。

 撮影したのは「オートモーティブワールド2017」の明電舎ブース。同社のモーター、インバーター、ジェネレーターなどのPHEVシステムが市販「アウトランダーPHEV」に搭載されており、改良・強化も行った。

2018年5月11日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(12月1日まで)
応募はこちら!(12月1日まで)