クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

クルマ最終更新日:2018.05.09 公開日:2018.05.09

【三菱のラリーカーを集めてみた!】「ランサー」シリーズ大集合

 ラリーでの活躍が記憶に残る国内メーカーはいくつかあるが、三菱がそのひとつなのは間違いないだろう。現在はワークス活動から撤退してしまっているものの、2000年代までWRC世界ラリー選手権やパリ・ダカール・ラリー(現ダカール・ラリー)などで大活躍。いくつもの名ラリーカーや世界王者を世に送り出し、一時代を築いてきた。

 そんな三菱のモータースポーツ活動の歴史を振り返ると、初めて国際的なモータースポーツに挑戦したのは、1962(昭和37)年のことだった。「500」で「マカオグランプリ」に参戦したのだ。その5年後の1967(昭和42)年にはラリーに初挑戦。オーストラリアの「第2回サザンクロスラリー」に「コルト1000F」で出場し、そこから”ラリーの三菱”は始まっていったのである。なお、そのときは1000ccに満たない小排気量ながら、総合4位(クラス優勝)という成績を残した。

 ここでは、そうした三菱の新旧ラリーカーを集めてみた。

サファリで初参戦初優勝! 「ランサー 1600GSR」

sn180501-04-01b.jpg

A12型「ランサー 1600GSR」(1974年サファリ・ラリー優勝車)。全長3965×全幅1525×全高1360mm、ホイールベース2340mm、車重920kg(※1)。エンジンは排気量1597cc(※2)、直列4気筒8バルブSOHC「4G32」。最高出力は148ps(108.9kW)/7000rpm、最大トルクは16.5kg-m(161.8N・m)/5500rpm。トランスミッションは5速MT。駆動方式はFR2WD。MEGA WEB・ヒストリーガレージにて撮影。※1:車重830kgという資料もあり。※2:排気量1598ccという資料もあり。

 1973(昭和48)年2月に発売が始まった「ランサー」はコンパクトで軽量なことが特徴で、そのスポーツモデルが画像の「ランサー 1600GSR」だ。同車の国際ラリーへの参戦は、1973年の第8回サザンクロスラリー。このときは初参戦にもかかわらず初優勝を飾り、しかも1~4位を独占するという快挙を成し遂げた。

 三菱と「ランサー 1600GSR」の名を世界に轟かせたのが、当時の世界3大ラリーのひとつで、”カーブレイカー・ラリー”、”世界一過酷なラリー”などと評されたサファリ・ラリー(ケニア)に挑戦したこと。1974(昭和49)年のことである。

 当時のサファリ・ラリーは全長6000kmを5日間かけて走り抜けるという、現在からは考えられない内容。2018年のダカール・ラリーが全長8000km強を14日間で走るのに比べると、1日の走行距離がどれだけ長いかがわかるだろう。しかし、「ランサー 1600GSR」は並み居る強豪を押しのけ、なんと初参戦で初優勝。さらに1976(昭和51)年に優勝したときは、表彰台を独占するという驚異的な結果となった。

 その後、「ランサー 1600GSR」は1977(昭和52)年まで、国際ラリーで7度の総合優勝を獲得。そして、オイルショックの影響で三菱はモータースポーツ活動を自粛し、ラリーシーンから一時的に姿を消したのであった。

sn180501-04-02.jpg

「ランサー 1600GSR」を後方から。ラリーで無敵とまでいわれ、アフリカでは「キング・オブ・カー」と賞賛された。サファリ・ラリーで優勝したケニア人ドライバーでスペシャリストのジョギンダ・シンは「優れたハンドリング性能、強靱なボディ、そしてメンテナンスのしやすいシンプルな構造を備えたマシンがなければ、サファリでの優勝なんて夢物語」とし、「ランサー 1600GSR」に出会えたことを大いに感謝したという。MEGA WEB・ヒストリーガレージにて撮影。

→ 次ページ:
復活の「ランサー」!

オイルショックから復活の「ランサー EX 2000 ターボ」

sn180501-04-03.jpg

A176A型「ランサー EX 2000 ターボ」(1982年WRC1000湖ラリー3位入賞車)。全長4420×全幅1620×全高1390mm(※3)、ホイールベース2440mm。車重1040kg。エンジンは排気量1997cc(※4)、水冷直列4気筒8バルブSOHCターボ「4G63」。最高出力は280ps(206kW)/7000rpm、最大トルクは33.7kg-m(330.5N・m)/5000rpm。トランスミッションは5速MT。駆動方式はFR2WD。MEGA WEBヒストリーガレージにて撮影。※3:全高4230×全幅1710という資料もあり。※4:排気量は1996ccという資料もあり。

 オイルショックで撤退した三菱が再びラリーシーンに戻ってきたのは、1981(昭和56)年のことだった。「ランサー」の2代目となる「ランサー EX」の輸出専用モデル「2000 ターボ」の欧州への輸出開始に合わせ、同車をベースとした。なお”EX”とは、超える、勝る、優れるなどの意味を持つ英語の”exceed”を表す。

 舞台はWRCとし、中でも欧州のスプリント・ラリーに的が絞られ、アクロポリス(ギリシャ)、1000湖(フィンランド)、サンレモ(イタリア)、RAC(イギリス)の4つに参戦した。

 この時期のWRCは、アウディが革命を起こしていた。1981年から、4WD+ターボというどのチームも試さなかった機構を持ったラリーカー「クワトロ」が圧倒的な速さを見せつけており、2台体制のどちらもリタイアしない限り、2WDマシンでは絶対に勝てないという状況となっていたのである。

 そうした中、「ランサー EX 2000 ターボ」は1982(昭和57)年8月の1000湖ラリーにおいて、2WDマシンでトップとなる総合3位に入賞を果たし、強豪三菱の復活を印象づけることに成功した。

 三菱はこの後、翌1983(昭和58)年の1000湖ラリーでWRCを撤退。ただし、それは4WDマシンの開発のためだった。

WRC96年王者マシン! 「ランサー エボリューション III」

sn180501-04-04b.jpg

CE9A型「ランサー エボリューション III」(1995年WRC第7戦ラリー・オーストラリア優勝車)。全長4310×全幅1695×全高1420mm、ホイールベース2510mm。車重1230kg(※5)。エンジンは排気量1997cc、水冷直列4気筒DOHCターボ「4G63」。トランスミッションは6速MT。駆動方式はフルタイム4WD。なお、最高出力は290ps(213.3kW)、最大トルクは50.0kg-m(490.3N・m)。MEGA WEBヒストリーガレージにて撮影。

 三菱が4WD+ターボマシンの開発を進めた結果、1984(昭和59)年に「スタリオン4WDラリー」が誕生し、1987(昭和62)年の「スタリオンターボ」、1988(昭和63)年の「ギャランVR-4」と続く。そして、1992(平成4)年、三菱を代表する1台「ランサー エボリューション(ランエボ)」(CD9A型)が遂に誕生した。通称「ランエボI」は戦闘力があった「ギャランVR-4」を遥かに上回る旋回性能を有し、なんと1km当たり1秒も早いタイムを計測したのである。

 WRCには1993(平成5)年に投入されたが、この年は未勝利に終わり、勝利はその後継として1994(平成6)年の中盤に投入された「ランエボII」(CE9A型)に託される。そして1995(平成7)年第2戦、新搭載の電子制御式アクティブAWDシステムが大いに貢献して遂に勝利を得たのであった。

 そしてさらに戦闘力をアップさせた画像の「ランエボIII」(型式はIIから踏襲のCE9A型)が1995年の第4戦に投入された。「ランエボIII」は第7戦で早くも勝利し、翌1996(平成8)年は9戦中5勝を挙げ、トミ・マキネン(現TOYOTA GAZOO Racingチーム代表)が初の王座を獲得。これが、マキネンと三菱にとってもWRCでの初のタイトルとなったのである。なお、「ランエボIII」までが第1世代と呼ばれる。

 この後、「ランエボ」シリーズは着実に進化を遂げ、マキネンは1999(平成11)年の「ランエボVI」(CP9A型)まで4年連続でドライバーズチャンピオンを獲得。WRCにおける三菱の黄金期を築いた。また1998(平成10)年に、「ランエボV」(VIと同じCP9A型)で三菱はマニファクチャラーズタイトルも獲得した。

→ 次ページ:
三菱最後のグループAラリーカー!

三菱最後のWRCグループAマシン「ランエボVI TME」

sn180501-04-05.jpg

CP9A型「ランエボVI トミ・マキネン・エディション」(WRC用グループAラリーカー2001年仕様・レプリカ車)。全長4350×全幅1770(全高未公表)、ホイールベース2510mm。車重1230kg。エンジンは排気量1997cc、水冷直列4気筒DOHCターボ「4G63」。最高出力は290ps(213.3kW)/6000rpm、最大トルクは52.0kg-m(510N・m)/3500rpm。トランスミッションは6速MT。駆動方式はフルタイム4WD。モータースポーツジャパン2018にて撮影。エンジンのスペックは実際のラリーカーのもの。

 マキネンの名を冠した「ランエボVI トミ・マキネン・エディション(TME)」(CP9A型)は「ランエボ6.5」ともいうべき「ランエボVI」の進化型だ。その外見的な特徴は、「ランエボVI」から引き継いだ左右非対称のフロントマスク。右ヘッドランプの下にのみオイルクーラー用のエアダクトが設けられており、機能に合わせた空力デザインとなっていた。

 「ランエボVI TME」のWRCへの投入は2000年第9戦からで、同年の選手権は最終戦までもつれ込んだ。「ランエボVI TME」は最終戦で勝利し、マキネンの5年連続王座を達成するかに見えた。しかし、まさかのレギュレーション違反で最終戦のポイントが剥奪されてしまい、その結果として僅差で王座を逃すこととなった。レギュレーション解釈の誤解が招いたターボに関する違反が原因だった。

 そして翌シーズン初戦から投入された2001年仕様は、前年仕様よりもリア・サスペンションのストロークを30mm延長してハンドリング性能を向上させたほか、フライホイールの軽量化でエンジンレスポンスの改善が施された。画像の「ランエボVI TME」はそのレプリカ車だ。

 2001年仕様「ランエボVI TME」は同年第10戦まで投入され、3勝を挙げた。これにより1993年から始まったグループA仕様「ランサーエボリューション」は通算25勝をマークし、有終の美を飾ったのである。なお「ランエボ」は「IV」から「TME」を含む「VI」までを第2世代と区分される。

 三菱はこの後、第11戦からは同社で初の開発となる、WR(ワールドラリー)カー「ランサーエボリューションWRC」を投入(ただし、登録上は「ランエボVI」からはWRカー扱いだった)。なおWRカーとは、グループAマシンよりも広い範囲で改造を行ってもいいラリーカーのことである。

三菱WRC最後のワークスマシン「ランサーWRC05」

sn180501-04-06.jpg

「ランサーWRC05」。全長4360×全幅1800(全高資料なし)、ホイールベース2600mm。車重1230kg。エンジンは排気量1996cc、水冷直列4気筒DOHCターボ「4G63」。最高出力は300ps(220.6kW)/5500rpm、最大トルクは55kg-m(539N・m)/3500rpm。トランスミッションは5速セミAT。駆動方式はフルタイム4WD。約10年前のイベントのモータースポーツジャパン2007にて撮影。

 三菱は2001年からWRC専用に開発したWRカー「ランサー エボリューション WRC」を投入。2002年は、その改良型の「ランエボWRC2」で参戦するが、2003年は一時的に撤退。そして戦闘力のあるWRカーを3か年で開発する計画を立て、2004年の復帰1年目に「ランサーWRC04」を投入した。その後継車として2005年に投入されたのが画像の「ランサーWRC05」である。なお、2004年からは車名から”エボリューション”が外された。

 「ランサーWRC05」の外見的な特徴は、当時の新レギュレーションである最大1800mmの全幅に合わせたことで、フロント/リアフェンダー、リアクォーターパネル、バンパーなどの形状変更が「ランサーWRC04」から行われた。また拡幅に合わせ長尺のサスペンション・リンクやドライブシャフトが採用された。またサスペンションは新規に設計され、アップライトも改良されている。

 そしてエンジンは、従来通り2L・直列4気筒ターボの「4G63」型だが、新型ウェイストゲートとアンチラグバルブが採用され、マネジメントシステムも改良された。

 なお、三菱は当初WRカーを3か年計画で開発する予定だったが、2005年をもってワークス活動から撤退し、この後は「ランエボVII」以降の市販車をベースとした、プライベーターによるPCWRCプロダクションカー世界ラリー選手権や全日本ラリー選手権などへの参戦が続けられることになる。

→ 次ページ:
PCWRCや全日本ラリーなどで活躍!

PCWRCなどで活躍した「ランエボIX」

sn180501-04-07b.jpg

CT9A型「ランサーエボリューションIX グループN仕様(奴田原文雄選手)」(2006年PCWRCモンカルロラリー優勝車)。全長4490×全幅1770(全高資料なし)、ホイールベース2625mm。車重資料なし。エンジンは排気量1997cc、水冷直列4気筒DOHCターボ「4G63」。最高出力は260ps(191.2kW)/5500rpm、最大トルクは50kg-m(490N・m)/3500rpm。駆動方式はフルタイム4WD。約10年前のイベントのモータースポーツジャパン2007にて撮影。

 2005年で三菱のWRCへのワークス参戦は終了となったが、2006年以降も市販の「ランエボ」シリーズをベースとした競技車両で、プライベーターの多くがWRCの下位クラスのPCWRCプロダクションカー世界ラリー選手権やアジアパシフィックラリー選手権、そして全日本ラリー選手権(JRC)などの各国の選手権に参戦した。

 PCWRCとは市販車ベースの競技車両で参加できる世界選手権で、その2006年シーズンの第1戦である伝統のモンテカルロ・ラリー(WRCと併催)で優勝を飾ったのが、2018年現在も日本人トップラリーストのひとりである奴田原文雄(ぬたはら・ふみお)選手だ。

 「ランエボIX(ナイン)」(CT9A型)のグループN仕様(改造範囲の制限されており、市販車に近い仕様)で参戦し、優勝を飾った。なお、その年のPCWRCでは惜しくも選手権2位となり王者を取れなかったが、並行して参戦したJRCの総合/JN4クラスでは王者となった。

 「ランエボIX」の市販車は2005年3月に登場し、先代「ランエボVIII」からの変更点は、左右に楕円形のエアダクトが設けられたフロントバンパー、ディフューザー形状一体型のリアバンパー、中空ウィング型のカーボン製大型リアスポイラーなどが採用されたことで、スタイルが一新されたこと。

 また「ランエボ」シリーズとしては初めて、三菱オリジナルの排吸気連続可変バルブタイミング機構「MIVEC(Mitsubishi Innovative Valve timing Electronic Control system:マイベック)」が採用されたこと。そのほかエンジンに関しては、チタンアルミ合金とマグネシウム合金を利用したターボが採用され、レスポンス向上や回転数全域での高出力化が図られた。

 ちなみに、「ランエボ」は「VII」から「IX」までが第3世代に区分される。

現時点でシリーズ最終モデルの「ランエボX」

sn180501-04-08.jpg

CZ4A型「ランエボX グループN仕様」(田口勝彦選手の2008年ラリージャパン参戦車両)。全長4495×全幅1810×全高1480mm、ホイールベース2650mm。車重1530kg。エンジンは排気量1998cc、水冷直列4気筒DOHCターボ「4B11」(MIVEC搭載)。最高出力は280~310ps(206~230kW)/6500rpm、最大トルクは43.0~43.7kg-m(421.7~429N・m)/3500rpm。トランスミッションは6速MTもしくはセミATの1種である6速TC-SST。駆動方式はフルタイム4WD。なお、スペックはすべて市販車のもの。

 「ランエボX」(CZ4A型)の発売は2007年10月のこと。「ランサー EX 2000ターボ」時代から改良される形で搭載されてきた「4G63」から、同年8月に発売された三菱「ギャラン フォルティス」から搭載されるようになった新型エンジン「4B11」にスイッチしたことが大きな特徴。それに加え、プラットフォームもスタイリングもすべてを一新しており、「ランエボ」の中では唯一の第4世代として、特別な位置付けの1台となっている。

 ただし、ハイテクを武器とする「ランエボ」らしさは踏襲しており、車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」や、6速トランスミッションに2つの自動クラッチを組み合わせたセミAT「TC-SST(Twin Clutch Sport Shift Transmission)」などを備えていた(5速MTも用意されており、競技用にはそちらが選ばれることが多い)。

 画像は、三菱系の日本人ラリーストである田口勝彦選手が、2008年のWRC第14戦ラリージャパンに、”三菱ディーラーチーム”としてグループN仕様の「ランエボX」でPCWRCにスポット参戦したときのマシン。田口選手は2012年からは全日本ダートトライアル選手権に主戦場を移しているが、それまでは三菱系日本人ラリーストのトップのひとりだった。このときは、田口選手はグループN/PCWRCクラスの7位(総合16位)で、「ランエボX」に乗った日本人選手の中ではトップとなった。

 「ランエボX」はファイナルエディションが2015年に発売され、そこで長い歴史を持つシリーズは終了。ただしJRCでは、奴田原選手ら”ランエボ使い”は2018年現在も「ランエボX」で参戦しており、ライバルのスバル「WRX STI」勢と最上位クラスのJN6で激戦を展開している。

2018年5月9日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

この記事をシェア

  

応募する

応募はこちら!(6月30日まで)
応募はこちら!(6月30日まで)