日本の道路点検システム、アメリカで続々と業務受注!
赤外線カメラを搭載した車両による橋梁コンクリート床の夜間撮影状況(赤外線画像を合成)
高速道路の点検システムというと、それぞれの国が独自に開発しているイメージがあるが、NEXCO西日本が開発した「高解像度カメラ(HDV)と赤外線カメラを用いた橋梁点検技術」が米国で次々と業務を受注しているのだそうだ。
この点検システムをアメリカで展開しているのは、NEXCO西日本が2011年に設立した米国の子会社「NEXCO-West USA, Inc.(本社:ワシントンD.C.)」という会社。アメリカでこのシステムが高評価を受けている理由は複数あるが、そのひとつが「通行止めナシ」に点検できるということ。
これまで、アメリカでは道路や橋梁を点検する際、道路を一時的に封鎖して行われていたが、NEXCOのシステムは車両に搭載し、走行しながらでもトンネルや道路のひび割れ点検が可能。加えて、橋梁部など高所点検では遠隔操作での検知もできるそうだ。コスト的、時間的にも非常に高いパフォーマンスを発揮できるというわけだ。
→ 次ページ:
日本の技術が認められるまでの道のり
アメリカで認められるまでには、困難も多かった
橋梁部など高所でも遠隔操作で詳細な点検が可能
高解像度カメラにより、0.5ミリ以下のひび割れも検出する
NEXCO-West USA, Inc.の松本正人社長によると、アメリカでの事業展開後、しばらくはなかなか受注を得られず苦労したそう。日本ではおなじみのNEXCOだが、アメリカでの実績はゼロ。現地では全く無名の会社ゆえ、当初は「(NEXCOとMEXICOが似ていることから)メキシコの会社?」など勘違いされることもあったとか。
そこで、「とにかく日本のハイレベルな点検システムを知ってもらいたい」という一念で、フロリダ半島の先端にある「セブンマイルズブリッジ」で赤外線や高解像度画像による「無償点検」のデモンストレーションを実施した。当局の担当者に、アメリカにはなかった点検システムの素晴らしさを実感してもらったことをきっかけに、契約の受注も徐々に増えた。現在ではアメリカ10州からの受注実績を獲得している。加えて、ブラジルのイタイプダム(中国三峡ダムに続く世界第2位の発電量を誇る巨大構造物)の点検プロジェクトの契約にも成功している。
現在では入札でも勝てるようになり、道路だけでなく、建造物や大型ダム、地下鉄のトンネル点検などの業務も受注できるまでになった。日本のインフラ点検システムが海外で高い評価を得ていることはとても誇らしい。今後の展開が楽しみである。
2018年4月16日(雨輝・加藤久美子)