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最終更新日:2018.03.27 公開日:2018.03.27

【2018/3/20~4/18】 猫を愛し描いた画家のユニークな眼差し「猪熊弦一郎展 猫たち」

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猪熊弦一郎 題名不明 1987年 インク・紙 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵 ©The MIMOCA Foundation

 無類の猫好きの画家・猪熊弦一郎(いのくま げんいちろう)が描いた猫の作品の展覧会「猪熊弦一郎展 猫たち」が、東京の「Bunkamura ザ・ミュージアム」にて4月18日まで開催中である。

猪熊弦一郎とは?

 猪熊弦一郎(1902~1993)は、三越の包装紙「華ひらく」のデザイン(1950年)やJR上野駅の大壁画《自由》(1951年)といった作品で知られている。
 1938~1940年にフランスに滞在しアンリ・マティスに指導を受けた。1955年再びパリへ向かう途中、立ち寄ったニューヨーク(NY)に魅了され、そのまま留まり20年間あまりNYを拠点に活動する。この滞在で画風は具象から抽象へと変化した。帰国後は東京とハワイを行き来し、90歳で死去するまで生涯現役で制作を続けた国際的な画家である。

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猪熊弦一郎(1902-1993) 撮影:高橋章

 猪熊はNYに滞在し抽象画に専念した期間を除き、生涯にわたり猫を描いてきた。いちどに1ダースの猫を飼っていたというほど愛猫家であった彼の芸術に、猫はインスピレーションを与え続けた存在だった。
 彼のNY時代の抽象画作品を集めた展示コーナー『猪熊弦一郎の世界』を見れば分かるように、猪熊の作品は猫だけに留まらない。この企画展では、モチーフとしても私生活でも作家にとって重要な存在であった猫への視線を通して作家の人となりを知ることができるのが興味深い。また、マティスの影響が見える作品、展示コーナー『モニュメンタルな猫』での新しいスタイルを確立しようと幾何学的で抽象的な作品を試した50年代など、さまざまな創作に挑戦した画業の変遷が猫を通してうかがえるユニークな展覧展である。

妻・文子と猫

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猪熊弦一郎 《青い服》 1949年 油彩・カンヴァス 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵 ©The MIMOCA Foundation

 猪熊はひと目ぼれして結婚したという妻・文子と猫を組み合わせた作品を多く遺している。猫との出会いも猫好きだった妻を通してで、一緒に暮らすようになると自然に猫とも暮らすようになったという。《青い服》は戦後、田園調布で再び暮らしはじめた当時のもので、太い線のやわらかなタッチとカラフルな色彩にパリで師事したアンリ・マティスの影響がみられる。細部を省略し色面によって画面が構成されている画風は、猪熊が色と形のギリギリのバランスを追求していたからであるという。

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猪熊弦一郎 《妻と赤い服》 1950年 油彩・カンヴァス 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵 ©The MIMOCA Foundation

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描く対象は愛するもの

猫を描くということ

 「古来猫の絵は沢山見て来たが、一つとして私は好きにならなかった。猫の小さな猛獣性を美しく描き画にする事は仲々難事中の難事であるから。昨年の始めから私は勇気を出してこの永い間見て来た猫を描いて見る事にした。描けば描く程面白いのである。今では猫のどんなポーズでも見ないで描き得るが、画には仲々ならない」(「美術手帖」1949年11月号)

 これは1949年に猪熊が残した言葉であるが、つまり彼は50年から猫を描きはじめ、90年代まで描き続けている。彼が描いた猫の姿は、写実的なスケッチ、子どもが描いたような純粋な線描、デフォルメした油彩画と多岐にわたり、実にさまざまな形の猫の画を遺している。本展では猫の作品だけで約160点の作品が展示されている。

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猪熊弦一郎 題名不明 1987年頃 インク・紙 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵 ©The MIMOCA Foundation

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猪熊弦一郎 《自転車と娘》 1954年 水彩、クレパス・紙 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵 ©The MIMOCA Foundation

画業の完成

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猪熊弦一郎 《不思議なる会合》 1990年 アクリル・カンヴァス 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵 ©The MIMOCA Foundation

 「愛しているものをよく絵にかくんです。愛しているところに美があるからなんです」(”「歩く教室」写生会アルバム”「少年朝日」1950年12月号)

 作家のこの言葉は、対象に対する姿勢を端的に示す。作風の変化と追求、海外での生活、愛妻との死別などさまざまな変遷をたどりながら猪熊は猫を描き続けた。『再び猫を描く』から最後の展示コーナー『猫のコンポジション』では、猪熊が1985年頃からスケッチブックや小さなメモ帳に描いた多数の作品などを見ることができる。それらの作品はどの線にも迷いがなく、猫への愛情と描くことの喜びに満ちている。

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猪熊弦一郎 題名不明 1986年 鉛筆・紙 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵 ©The MIMOCA Foundation

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招待券プレゼントのお知らせ

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猪熊弦一郎展 猫たち

【会期】
2018年3月20日(火)~4月18日(水)
【開館時間】
10:00~18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
【休館日】
会期中無休
【会場】
Bunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2-24-1)
【入館料】
一般1,300円 他 ※詳細は以下BunkamuraHPでご確認ください
【アクセス】
渋谷駅(ハチ公口)より徒歩7分 他
【Bunkamuraホームページ】
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_inokuma/

「猪熊弦一郎展 猫たち」招待券プレゼント応募は終了しました。
賞品は抽選の上、2018年4月4日に発送しました。
たくさんのご応募ありがとうございました。

2018年3月27日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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