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最終更新日:2018.01.10 公開日:2018.01.10

[PR]東京の橋を守れ!早めの老朽化対策で低コストに長寿命化を!!

千住大橋を支える「支承(ししょう)」。表面的にはかなり錆びており、速やかに補修が必要な状態にある。

 現在、東京に、クルマや人が通行するために建設された橋がいくつあるかご存じだろうか? なんと、その数は6158橋にもなる。しかも、20年後には60%以上の橋が50年を超えてしまう状況を迎えている。

 東京内にある橋は交通量が多く、それらが老朽化による損傷で通行不可となったとき、物流がストップするなど経済的な損失は大きい。もちろん、地域住民の日常の利便性も損なわれる。

 また文化的な価値がある歴史的な橋も多く、市民の共有資産を次世代に伝えていくという面からも、どのように保全していくかが大きな課題となっている。

 そこで、国土交通省関東地方整備局東京国道事務所は、「千住大橋」を例にしたインフラの保全の取り組みに関する説明会を開催。建設されてから長く活躍しているインフラの損傷を公開し、長寿命化のための取り組みを発表するとともに、保全への社会的な理解を求めた。

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東京内にある橋はどのように管理されている?

点検作業は常時実施中!

荒川区と足立区の間の隅田川に架かる千住大橋。隅田川に架かる日光街道(国道4号)の橋で、荒川区南千住エリアと足立区の北千住エリアを結んでいる。現在は、下り車線と上り車線が別々の橋となっており、歴史が長いのは手前側の下り車線の方。奥側の高い方が上り車線の千住大橋。

 説明会によれば、現在、東京都にある橋は、国交省、高速道路会社、東京都、市区町村がそれぞれ維持管理を受け持っているという。現在行われている定期点検は、東京都にあるすべての橋の約半分にあたる3202橋を終えたところである(2017年11月24日現在)。

 点検結果は、以下の4段階で評価される。

【健全性の診断 判定区分表】
●I 健全:構造物の機能に支障が生じていない状態
●II 予防保全段階:構造物の機能には支障が生じていないが、予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい状態
●III 早期措置段階:
構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態
●IV 緊急措置段階:構造物の機能に支障が生じている、または生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態

 点検を終えた3202橋の点検結果は以下のとおり。都内には、緊急に措置を講ずべき「IV」の橋が3橋あり、その次に措置を早期に講ずべき「III」の橋が521橋ある。首都東京といえども、実はかなり多くの橋が補修に取りかからなければならない状況にある。

千住大橋の支承を別角度から。全体的に著しく腐食しているのがわかる。

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インフラの予防保全について迫る!

橋の予防保全とは?

 現在、東京国道事務所では、ぎりぎりまで使って補修する「事後保全型」ではなく、損傷が軽微なうちにこまめに補修を行う「予防保全型」を推進している。工事の回数は増えるものの、1回ごとの作業が小規模で済むので、長期で見たときには事後保全型よりも低予算で橋を維持できるのだという。

 下図のように当初予算は必要だが、その後20年で予算の縮減が可能という。ただすべての橋の維持は難しく、重要性に応じた集約化・撤去の視点も必要だ。

予防保全によって図れるコスト縮減を表したグラフ。予防保全は最初は事後保全よりも費用を必要とするが、ある時点で逆転し、20年といった長いスパンで見た場合、結果としてコストを縮減できる。対象は国土交通省管理道路のうち橋梁、トンネル、舗装、そのほか構造物(土工、附属物):費用は修繕、点検、耐震補強」期間は2017~2037年(20年間)。また年平均は、予防保全は約2300億円、事後保全は約2500億円。

 現在、インフラの修繕作業は予防保全型への転換が進められており、インフラの長寿命化とライフサイクルコストの縮減が図られている。東京国道事務所では、健全性III、IVに早急に着手しつつ、健全性IIの予防保全を進めていくことが必要であると考えている。

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続いては千住大橋の歴史と形式を紹介

歴史的な価値からも千住大橋の予防保全は重要

 千住大橋は、日光街道の隅田川を渡る橋として、1594年、徳川家康の命で最初の木橋が架けられた。松尾芭蕉が1689年に出立した場所として知られるなど、東京国道事務所が管理する橋の中では、日本橋に次いで長い歴史を持つ橋だ。

千住大橋の上から。鋼タイドアーチ橋とは、このような形状をした橋のことをいう。なお、車道のすぐ脇は自転車専用道路。

 現在の千住大橋(下り線)は、関東大震災後の復興事業の一環として1927年に架け替えられ、記録上では8代目となる。全長は91.54m。

 橋のタイプとしては「鋼単純リベットタイドアーチ橋」で、著名な橋梁技術者の増田淳氏が設計。同タイプの橋としては日本最古のひとつとされ、荒川区の文化財に指定されているほか、荒川区、足立区共に地元の支援団体がある。なお、上り線の橋は1973年になってから新たに架設されたものだ。

足立区側の堤防に描かれた、松尾芭蕉と弟子の河合曾良。

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最後は千住大橋の補修工事の今後の予定

設計当時に想定していなかった事態も発生する

千住大橋の足立区側のもうひとつの支承。錆が一直線になっていることから、ここに水面があった時期があることがわかる。本来、支承は水に浸からないように設計されるが、現在は浸かってしまうときがあり、その点も課題となっている。

 今回の取材で、錆びてしまった千住大橋の支承が公開されたわけだが、なぜ錆びてしまったのか、疑問に思われるだろう。上の画像を見てもらうと、錆の境目が一直線で、ここまで水面が来ていることが推測できる。

 実は、1927年当時は支承が水に浸かるようなことがないように設計されたのだが、90年という時を経て、隅田川の水位が想定以上に上昇しているためだという。その結果、支承は水に浸かることが増え、このように錆びてしまった。さらに、千住大橋が架かる隅田川は川の水が塩を含んでいるため、金属の構造物がさらに腐食しやすいという難点もある。

構造的に雨水が溜まってしまう箇所も見つかっていて、塗装の劣化や錆の原因にもなっている。今後、雨が外側に流れ落ちるようにするなど、こうした構造的な問題点も対処をしていく計画だという。

 千住大橋はこれまで、1976年、1977年、1986年、2007年に補修が行われ、2007年には補強工事も行われている。2019年からは、長寿命化のための補修・補強工事をスタートさせる予定だ。また2027年に架橋100周年を迎えた後に、2028年からもさらなる長寿命化のための取り組みを推し進める予定である。

 橋は適切に保全していかなければ、いつかは崩落してしまうという宿命を持つ。あなたが歩いたり、クルマに乗ったりして渡っているいつもの橋もそれは同じ。次に橋を渡るときは、安全に渡れるのもこまめな保全が行われているが故であることも思い出してほしい。

2018年1月10日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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