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最終更新日:2017.11.30 公開日:2017.11.30

【2017/10/24~2018/1/8】 ゴッホと日本の想いが交差する 「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」

フィンセント・ファン・ゴッホ《オリーヴ園》1889年、油彩・カンヴァス、クレラー=ミュラー美術館蔵 © Kröller-Müller Museum,Otterlo

 ファン・ゴッホと日本との相互関係にスポットをあてた企画展「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」が、2018年1月8日まで東京・上野の東京都美術館にて開催中だ。

ゴッホと日本、お互いへの夢が交差する心を揺さぶられる展示

 「画家たちの天国以上、まさに日本そのものだ。」
 これはフィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)が、南仏に移り住んだ時の高揚感に満ちた言葉である。ファン・ゴッホにとって日本は創作の源であり、夢にまでみた理想郷だった。逆に日本人も画家ファン・ゴッホを高く評価し愛してきた。

 2部構成で展開される本展覧会では、第1部ではファン・ゴッホが日本からどんな影響を受け、どんなイメージを抱いていたのかを彼の作品約40点と、同時代の画家の作品や浮世絵など約50点によって多角的に紹介する。第2部では日本人がファン・ゴッホのゆかりの場所を訪れた初期の「ゴッホ巡礼」について、約80点の豊富な資料によって展示されている。

 日本を夢想したファン・ゴッホと、ファン・ゴッホに憧憬した日本人。双方の想いと夢が時を隔てて交差するエモーショナルな展覧会である。

ファン・ゴッホと日本

 1880年代のパリはジャポニスム(日本趣味)の最盛期だった。1886年にファン・ゴッホはそのパリで多くの浮世絵に出会った。

左:フィンセント・ファン・ゴッホ《花魁(溪斎英泉による)》1887年、油彩・綿布、ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵 ©Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)。右:溪斎英泉《雲龍打掛の花魁》1820~1830年代(文政後期~天保前期)、木版・紙

 ファン・ゴッホは浮世絵の鮮やかな色彩や作品としての質の高さに見せられる。当時まだ安価だった浮世絵を集め、展覧会を開き、《花魁(溪斎英泉による)》のように模写をし、肖像画の背景にも書き込んだ。

 彼はパリで印象派の影響を受け、オランダ時代の暗い色彩を捨てて明るい印象派風の作品を描くようになったが、浮世絵と接することでさらに革新的な独自の画風を生み出すようになったのである。

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ゴッホに影響を与えた日本

静物画における影響

 「日本美術を研究すると、明らかに賢く哲学的で、知的な人物に出会う。その人は何をして時を過ごしているのかだろうか。地球と月の距離を研究しているのか。(…)いや、違う。その人はただ一本の草の芽を研究している。(…)どうかね。まるで自分自身が花であるかのように自然の中に生きる。こんなに単純な日本人が教えてくれるものこそ、まずは真の宗教ではないだろうか。」

 このファン・ゴッホの言葉は、万物に神が宿るとする日本人の宗教観や自然の捉え方を的確に言い当てている。
 西洋美術では伝統的に、聖書やギリシャ神話を扱う歴史画が最高位に据えられ、つづいて人物画、その下に風俗画や風景画、静物画が位置づけられた。逆に日本画では木々や花々が重要な画題をなし、そこに見られる自然に対する親しみは、ファン・ゴッホの植物に対する見方にも影響を及ばさずにはいられなかったのである。

フィンセント・ファン・ゴッホ《夾竹桃と本のある静物》1888年、油彩・カンヴァス、メトロポリタン美術館蔵(ジョン・L.・ローブ夫妻寄贈) ©The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY

遠近法を超えた表現へ

 また浮世絵の持つ、斬新な構図、画面を断ち切るように手前にそそり立つ木、人間の視覚的体験をもとした風景画、陰影を消し去った切り取ったようなスタイルは、遠近法などの伝統に縛られていた当時の西洋美術を変革させた。
 同じような感化は、陰影を消し、浮世絵のように平坦ですっきりした色で彩色した《寝室》のようにゴッホの絵画の中にも見ることができる。

フィンセント・ファン・ゴッホ《寝室》1888年、油彩・カンヴァス、ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵 ©Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

時空を超えて成就したゴッホの夢

 日本はファン・ゴッホの画業の最後に至るまで、彼の芸術観のなかに生きつづけた。そして、その夢は1890年、画家の死とともに断たれる。

 しかし、その想いは消えてはいなかった。1914年を皮切りに、今度は日本の画家たちがファン・ゴッホに触れることを夢見て、彼の終焉の地である南仏オーヴェルに次々に巡礼に訪れ、「芳名録」に言葉や絵を残していく。

 展示の第2部で紹介されているその膨大な資料を見ていると、ファン・ゴッホの夢が時空を超えて別の形をとって成就したこと、ファン・ゴッホ自身が生きていたらこの展示の実現を喜んだであろうことが想起され感慨深い。

フィンセント・ファン・ゴッホ《画家としての自画像》1887/88年、油彩・カンヴァス、ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵 ©Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

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招待券プレゼントのお知らせ

展覧会「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」
【会期】
2017年10月24日(火)~2018年1月8日(月・祝)
【開室時間】
9:30~17:30 ※会期中の金曜日は20:00まで
※入室は閉室の30分前まで
【休室日】
月曜日 ※1月8日(月・祝)は開室
【年末年始休室】
12月31日(日)、1月1日(月・祝)
【会場】
東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)
【最寄り駅】
・JR「上野駅」公園口より徒歩7分
・東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口より徒歩10分
・京成電鉄「京成上野駅」より徒歩10分
【公式サイト】
http://www.gogh-japan.jp/

「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」のご招待券プレゼント応募は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。賞品は抽選の上、2017年12月11日(月)に発送しました。

2017年11月30日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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