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最終更新日:2017.11.22 公開日:2017.11.22

【クルマ解体新書】車内のワイヤーハーネス、総延長はどれぐらい?

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東京モーターショー2017のヤザキ(矢崎総業)ブースにて撮影。ヤザキがワイヤーハーネスを担当したある車種の実際の配線をイメージして、それ再現した展示物。こうしたケーブルやワイヤー類は、ワイヤーハーネス、ケーブルハーネスなどと呼ばれる。

 現代のクルマは自動ブレーキなどの安全運転支援系の先進技術も搭載されるようになり、これまで以上に電子化が進んでいる。高級車ともなると、複数の種類のセンサーを多数搭載し、エンジンなど基幹部分を制御するECUだけでなく、センサー情報を処理する専用のCPUなども搭載し、クルマというよりは、クルマの形状と機能を持ったコンピューターといったイメージになりつつある。

 また車内を見渡しても、オーディオ類の装備は当然だし、今ではカーナビもほぼ標準装備。フロントにもリアにもワイパーはあるし、リアウィンドウにはデフォッガー(曇り止めの熱線)が配されている。さらに、電動式の調節機能を備えたシートもそう珍しくはないし、中には電動サンルーフがオプション設定されているようなクルマもある。とにかく直接見えるところも見えないところも、電子機器・電動機構などが増え続けているのである。

 当然、それらの機器には電源ケープルが必要だし、センサーはデータをCPUへ送信するワイヤーも必要で、複数のCPU間でデータのやり取りなども行われている。今ではさまざまな機器が接続されており、車内がネットワーク化されていることから「車内LAN」と呼ばれたり、ネットワークの種類を示す「CAN」などの専門用語もたくさんある。

 このようにワイヤーハーネスはクルマの利便性の追求によりハイテク化が進むと同時に延び続けており、すべてをつないだ総延長はもうkm単位となっている。

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フロント部分の運転席側をアップ。エンジンルーム内は、スパークプラグやECUなどがあるため、接続されるケーブル類は多い。ECUの右横にあるのは機能モジュール。「R/B」とは「リレーブロック」のことで、電気信号を受け取ってオン/オフなどを行うリレー回路が取り付けてあるブロック。

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ワイヤーハーネスの展示物の各部をアップで!

まるで車体の各所に張り巡らされた神経と血管網!

 それでは各部をアップにして、ワイヤーハーネスの入り組んだ様子を紹介しよう。ケーブルやワイヤーを流れる電流やデータは、人間でいえば血管を流れる血液や神経を伝わる電気刺激みたいなもの。ここまで入り組んでくると、生物の体内の血管網や神経網のようでもある。

 今回撮影したヤザキブースの広報担当者に話を伺ったところ、今回の展示物はさすがにすべてのワイヤーハーネスを再現しているわけではないそうだが、実際のクルマでは総延長が3~4kmにもなったという。それだけの長さになると重量もかなりのもので、何10kgにもなるらしい。

 また記者がそれとは別に調べたところでは、電子化・電動化が非常に進んだ超高級車やスーパーカークラスになると、中には10km前後になるようなクルマもあると聞いた。それだけの長さになると重量がかさむだろうし、車内にどう這わせるかといった難しさも出てくる。限られたスペースでどう配線するかは、技術と工夫が非常に求められる状況になっているのだ。

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フロントの助手席側。ヒューズ機能を持たせたケーブルの、その機能がある部分を「ヒュージブルリンク」という。「ヒュージブルリンクブロック」とはそれをまとめたパーツのこと。さまざまな機器に一斉に過大な電流が流れてしまわないよう、ヒュージブルリンクでケーブルが焼き切れるヒューズやブレーカーのような安全装置的仕組みである。

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エンジンルームから運転席にかけて。インストルメンタルパネルやメーター類、ルーフやシート、さらにはドア関連とケーブル類が数多く集中しているのがわかる。

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エンジンルームから助手席にかけて。運転席のようにメーターなどがないが、それでもケーブル類は多い。「J/B」とは、「ジャンクションブロック」の略語で、高速道路のジャンクションと同じで、ケーブルやワイヤーを分岐させるブロック。

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続いては車体の後部を見てみる!

さらに車体中央~後部のアップ

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助手席から後席にかけてのワイヤーハーネス。シートに電動機能やヒーター機能などがあれば、その分のケーブル類が増える。ドアも現在は運転席ですべて制御できるパワーウィンドウが当たり前だし、ドアミラーも電動なので、どのドアにもワイヤーハーネスがつながっている。さらに近年はドアミラーに後方の死角から接近するクルマがあることを示すインジケーターを配した車種もあり、ワイヤーハーネスを必要とする機器は増え続けている。

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GPSなどのアンテナ類とも当然ケーブルがつながっている。また車体後部のバッテリーなどへ向かって、フロア下を高電圧用ワイヤーハーネスが這わせてあったりする。オレンジ色のワイヤーハーネスはハイブリッドのワイヤーハーネスだ。

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リアエンド。トランクにもワイヤーハーネスがあるのがわかる。オレンジ色のハイブリッドのワイヤーハーネスは、リチウムイオンなどの後部に搭載されたバッテリーに接続されている。「高電圧用バッテリーバスバーモジュール」の「バスバーモジュール」とは、母線として用いられる導電性の金属棒(バスバー)部品のこと。

2017年11月22日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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