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【2017/10/7~12/17】絵画の中の闇にスポットを当てた 稀有な展覧会「怖い絵」展

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ポール・ドラローシュ 《レディ・ジェーン・グレイの処刑》 1833年 油彩・カンヴァス ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵 Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey, © The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902

 名画の隠された恐怖を読み解く異例の展覧会「怖い絵」展が、東京・上野の森美術館にて10月7日(土)~12月17日(日)まで開催され、話題を集めている。

その闇を知ったとき、名画は違う顔を見せる

 ドイツ文学者の中野京子氏が2007年に出版し、ベストセラーを記録した「怖い絵」。本展示は、シリーズ化されるまでになった著作「怖い絵」への絶大な反響が発端になっている。

 「絵画は知ったほうが楽しい」と中野氏は言う。いつのまにか予備知識という先入観なしに作品と向き合うことが絵画の正しい鑑賞法だと植えつけられてしまった私たちに、中野氏は一枚の絵に隠された背景や画家の意図などを通してその奥に隠された「恐怖」という新たな世界を引き出した。その知的スリリングの領域へと足を踏み込んでいく稀有な展覧会が「怖い絵」展である。

「怖い絵」展の見どころ

① 「恐怖」というテーマ性をもったこれまでにない切り口の展覧会!しかも「怖い絵」の著者・中野京子氏特別監修!

 「怖い絵」展は、「怖さ」をテーマに、約80点の西洋絵画・版画が一堂に会した、明確なコンセプトの展示である。

 一見、何も怖いものは描かれていないのに、その時代の、文化の、関わった人々の、さまざまな絡み合いを知るうちに、恐怖がじわじわと画面からにじみ出てくる。ナビ役を務める中野氏の豊かな感性と独自の視点が作品に暗黒色の息吹を与えている。

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オーブリー・ビアズリー  ワイルド『サロメ』より《踊り手の褒美》 1894年 ラインブロック・紙 個人蔵◆◆聖書に出てくる聖ヨハネの死を、オスカー・ワイルドは官能的でデカダンの香り漂う戯曲「サロメ」に書き換えた。その挿絵を彩ったのがビアズリーである。右手で血の滴るヨハネの首を掴み口づけをしようとするサロメの鬼気迫る姿が描かれている◆◆

② ロンドン・ナショナル・ギャラリーの至宝「レディー・ジェーン・グレイの処刑」が初来日!他にもターナー、モロー、ビアズリー、セザンヌなど、ヨーロッパ近代画家・版画の巨匠による作品が集結!

 展示の目玉のひとつはなんといっても、この絵を見に世界中から年間600万人がロンドン・ナショナル・ギャラリーを訪れ、そのために床をメンテナンスしなければならないほどだというポール・ドラローシュ作「レディー・ジェーン・グレイの処刑」だ。繊細な筆致と緻密な構成で描かれた、縦2.5m、横3mにおよぶ大作は圧巻の一言。

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ポール・ドラローシュ 《レディ・ジェーン・グレイの処刑》 1833年 油彩・カンヴァス ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵 Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey, © The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902

 「9日間の女王」として知られ、16歳にて散った英国史上初の女王の処刑シーンを、中野京子氏はこう読み解く。以下に「怖い絵 泣く女」より一部を抜粋する。

中野京子による「レディ・ジェーン・グレイの処刑」の解説

 「きわめて演劇的な、計算しつくされた画面。左に巨大な円柱があり、宮廷の一間とおぼしき場所で処刑が行われようとしている。その円柱にすがりつき、背中を見せて泣く侍女と、失神しかける侍女。後者の膝におかれたマントと宝石類は、直前までジェーンが身につけていたものだ。斬首の際、邪魔になるので脱がねばならなかった。若き女王は真新しい結婚指輪だけを嵌め、サテンの艶やかな純白ドレスは花嫁衣裳のようでもあり、自己の潔白を主張するかのようでもある。目隠しをされたため、首を置く台のありかがわからず手探りするのを、中年の司祭が包み込むように導こうとしている。台には鉄輪が嵌められており、動かないように鎖で床に固定されている。ジェーンの身分を考慮した房付きの豪華なクッションが足元にあり、ここに腹這いとなって首を差し出すのだ。床には黒い布が敷かれ、その上に血を吸うための藁が撒いてある。若々しく清楚な白い肌のこの少女は、一瞬後には血まみれの首なし死体となって、長々と横たわっているのだ。そこまで想像させて、この残酷な絵は美しく戦慄的である。」

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首筋がゾクゾクとする感覚

奥深き恐怖の世界

 死、病気、苦痛、暴力、戦争、自然災害、未知、悪霊、人間の持つ憎悪、孤独、貧困、差別…….。
 恐怖のバラエティは豊富で奥が深い。展示を見ながら絵画の裏にある恐怖をひとつ、またひとつ発見するごとに背筋にゾクゾクした戦慄が走っていく。
 また、絵画を見ながら、とりたてて怖くない絵画と直視できないほど恐怖を感じる作品があることに気がつくことだろう。人は作品を通して自分の中にある恐怖の元、トラウマ、子供の頃の経験など、普段は隠れている”自分”と向き合うことになるのがまた怖い。

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フランソワ=グザヴィエ・ファーブル 《スザンナと長老たち》 1791年 油彩・カンヴァス ファーブル美術館蔵 © Musée Fabre de Montpellier Méditerranée Métropole, France – Photographie Frédéric Jaulmes – Reproduction interdite sans autorisation◆◆無防備な裸体の女性に、異様に接近する中年の男たち。旧約聖書外典に載っている「スザンナの水浴」がモチーフの本絵画は、絶大な権力をもつ2人の長老によるセクハラ&パワハラの古代版だ◆◆

恐怖を垣間見たいという欲求

 「人は安全な場所から恐怖を垣間見たいというどうしようもない欲求を持っている」(中野氏)。それがこの展示の成功の所以であると思う。

 しかし、現在ハリウッドを初め話題になっているセクシャルハラスメント(権力者による暴力)を「スザンナと長老たち」の中に、新燃岳の噴火など震災を「ポンペイ最後の日」の中に、睡眠中に見る悪夢を「夢魔」の中に見ることができる。つまり、絵画の世界の恐怖が決して他人事ではなく今、私たちに起こっていること、起こりえることだと気づくと、展示を見終わった後にも恐怖がにじんでくるだろう。

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フレデリック=アンリ・ショパン 《ポンペイ最後の日》 1834-50年 油彩・カンヴァス プチ・パレ美術館蔵 © RMN-Grand Palais / Agence Bulloz / distributed by AMF◆◆紀元79年のヴェスヴォオ火山噴火により、古代ローマの保養地ポンペイが一夜にして地獄絵の世界に豹変した。大地が揺れ、火の粉や有毒ガスから逃げまどう様子や、満員の馬車に乗り込もうとする男を棒で殴ろうとする男、惨事に露呈する人間の本姓が写実的に描かれている◆◆

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ヘンリー・フューズリ 《夢魔》 1800-10年頃 油彩・カンヴァス ヴァッサー大学、フランシス・リーマン・ロブ・アート・センター蔵 © Frances Lehman Loeb Art Center, Vassar College, Poughkeepsie, New York, Purchase, 1966.1◆◆眠りは自我の統制がきかない一種の死のようなものである。眠っている間に何か恐ろしいことが起こっているのではないか。そんな恐怖を妖しくエロチックに表現したフューズリの作品。仰向けに眠る女性の腹の上にいるのは、夢の中でレイプする男の妖怪インクブスである◆◆

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JAF会員優待のご案内

※招待券プレゼント企画は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。

怖い絵展

【会期】2017年10月7日(土)~12月17日(日)
【開館時間】平日10:00~17:00、土曜日9:00~20:00、日曜日:9:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
【休館日】会期中無休
【会場】上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
【最寄り駅】JR「上野駅」
【公式サイト】http://www.kowaie.com/

JAF会員優待のご案内

本稿でご紹介した「怖い絵」展の入場料がJAF会員優待にて割引となります!
詳しくはJAFご当地情報ページをご確認ください。

※ご注意
・入場料支払時に JAF PLUS 11月号(東京版)掲載のクーポン券提出が必要です。
・JAF会員証の提示では割引になりませんのでご注意ください。

2017年10月19日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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