霊柩車軍団にくまモン骨壺。Pepper導師にキティちゃん墓石。「エンディング産業展」
カラーリングだけでなく、形状まで自由になりつつある骨壺のデザイン。派手な骨壺を求める人が近年、多いという。画像は、トモエ陶業の骨壺たち。
8月23~25日に東京ビッグサイトで開催された、葬儀・埋葬・供養などに関する設備・機器・サービスの展示会「エンディング産業展 2017」。
光岡自動車などによる、豪勢なストレッチリムジンを改造した霊柩車などが出展されたほか、IT化が進んでいる様子なども見て取れた。その模様をお伝えする。
豪勢な霊柩車を4車種展示した光岡自動車
「オロチ」などの和風でクラシックなテイストの自動車メーカーとして知られる光岡自動車。同時に、同社オリジナル車やトヨタ車などをベースとした霊柩車を製造していたり、海外の霊柩車の輸入代理店業なども行っている。今回はそうした中から新型車3車種+既存1車種を出展した。
リンカーン MKT センターストレッチリムジン
光岡自動車が初めて披露する「リンカーン MKT センターストレッチリムジン」。リンカーンはフォードのブランドのひとつで、同車はフォードジャパンでは扱っていないクロスオーバーSUVの「リンカーン MKT」がベースとなっている。それを特装車製造メーカーの米クォリティーコーチワークス社が架装・改造し、光岡自動車が正規代理店として輸入している。車両価格は1485万円(税込)。
棺を収める後部の棺室。なお米カリフォルニア州に本拠地を置くクォリティーコーチワークス社は、世界最大級の特装車専門メーカー。装甲車や防弾車、エグゼクティブ用のストレッチリムジンなどのほか、霊柩車も手がけており、光岡自動車が正規輸入代理店として契約を締結した。
「リンカーン MKT センターストレッチリムジン」の全長は7215mm。ベース車両は5273mmなので、2m近く延長されている。同車の発売は展示会初日の8月23日からスタートした。
ガリューセンターストレッチリムジン
光岡自動車オリジナルの高級セダン「ガリュー」をベースとした霊柩車「ガリューセンターストレッチリムジン」。同車オリジナルの霊柩車シリーズ「おくりぐるま」シリーズの1台だ。全長は6560mm。車両価格は885万円(税別)から。
「ガリューセンターストレッチリムジン」の棺室。なお、ガリューとは、我流のことであり、「自分なりの哲学を持ち、頑固に自分の人生を生きる姿」といった意味が込められている。
光岡残りの2台は「アルファード」と「リューギ」がベース
光岡自動車はトヨタ車を中心とする国産車を架装した霊柩車も多数製造している。そうした他メーカーのクルマを改装した中で今回新型として披露したのが、トヨタの大型ミニバンをベースにした寝台霊柩兼用車の「アルファード フュージョン」だ。そして、以前から活躍している同社オリジナルセダンをベースとした霊柩車「リューギ センターストレッチリムジン」。
アルファード フュージョン
「アルファード フュージョン」。フュージョンとは「融合」という意味だが、同シリーズは霊柩車と寝台(搬送)車としての機能も併せ持っている。1台2役として利用できる次世代の寝台霊柩車としている。アルファードの兄弟車であるヴェルファイア、そして同じくトヨタの大型ミニバンのエスティマのどれでもベース車両にすることが可能。車両価格は排気量2.4Lの2WD/FF車で417万円(税別)。
多様化する葬儀形態や様式に対応することを目的としているのがフュージョンシリーズで、外見の装飾は必要最低限だが、遺体搬送用の寝台車としても霊柩車としても利用できるよう、単なる機能的な搬送車ではなく上質な装飾が内部にも施されている。
リューギ センターストレッチリムジン
「リューギ センターストレッチリムジン」。光岡自動車のクルマはフロントマスクがクラシックカー風の雰囲気が特徴。車両価格は528万(税別)から。
「リューギ センターストレッチリムジン」の棺室内。
手前が「リューギ センターストレッチリムジン」で、奥が「アルファード フュージョン」。全長はリューギが約500mm延長した5105mmで、アルファードはノーマルのままの4915mm。
老舗のTRGは2台の新型車を出展
福岡において、霊柩車やVIP用ストレッチリムジンなどの架装・改造を行って50余年という老舗のTRG。今回は、「ノンストレッチ」をコンセプトとした、アルファード(トヨタ)ベースの新型車「ディアナ」と、遺体の搬送車と霊柩車を兼用できる寝台霊柩兼用車の次世代モデル「ロータスII」(同じくアルファードベース)を出展した。
アルファード ディアナ
同社の「みちびき」シリーズの最新モデルとなる「アルファード ディアナ」。ノンストレッチ・コンセプトとは、車体を延伸することで剛性や耐久性などがメーカー純正の状態より落ちてしまうことを考慮し、ノーマル状態で特大棺でも積載できることを目的として開発された。フロントマスクはオプションのドレスアップパーツを装着しており、ノーマルのアルファードとは異なる。
「アルファード ディアナ」の棺室内。ボディを延伸していないため、2列目以降のスペースを利用しており、乗車人員は2名となっている。車両価格はベース車両価格+参考架装価格360万円(税別)。
アルファード ロータスII
「アルファード ロータスII」。10年前から活躍している先代「ロータス」の次世代モデルで、「みちびき」シリーズの1台。全長は4930mmとなっており、こちらもノンストレッチタイプ。なお同社によれば、外装デザインにラッピングを用いた業界初の霊柩車だという。
「アルファード ロータスII」の棺室。遺体の搬送車としての作業性の高さと、霊柩車としての装飾などを考慮した寝台霊柩兼用車。車両価格は、ベース車両価格+参考架装価格240万円(税別)。
カワキタの霊柩車「クラシック Lクラス」
霊柩車や搬送車などを架装・改造を行う富山市が本拠地のカワキタ。今回は「カワキタクラシック Lクラス洋型霊柩車」を出展した。ティアナ(日産)をベースとしたストレッチリムジン型の霊柩車だ。
「カワキタ クラシック Lクラス」は、全長6430mm。ベース車両のティアナのが4880mmなので、1550mmボディが延伸されている。なお、フロント部分がオリジナルでクラシックなデザインに仕立てられている。5名乗りで、車両価格は753万8400円(税込)。
棺の全長は2100mmまで対応。棺室のフロアは大理石調となっている。LED照明が充実しているほか、壁面や天井はレザー仕上げ。
サントイのペット火葬車
三重県四日市市に本拠を構えるサントイは、ボイラー設備に始まり、火葬炉の設計・製造を手がけ、現在ではペット火葬のための出張用の車載火葬炉や、その搭載車でのペット火葬サービスを行っている。日産「NV350キャラバン」にペット用火葬炉を搭載した「移動火葬車」を出展していた。
ペット用火葬炉を搭載したNV350キャラバンベースの「移動火葬車」。展示車両は、オプションを含めて車両価格727万6640円(税込)。
搭載している火葬炉は「PK25S型動物焼却炉」。中型犬まで対応。
車内の様子。バッテリーはホンダの発電機「EU16i」を採用。また火葬炉には、黒煙制御用として、「異常温度上昇防止装置」を搭載。脂の多い動物遺体を火葬する際、燃料供給を絶っても起きてしまいがちな、異常高温による黒煙発生を制止する装置だ。
トモエ陶業のデザイン性の豊かな骨壺たち
トモエ陶業はカラフルでさまざまなデザインをあしらった骨壺を展示。派手な骨壺を求めている人が増えているという。
1ページ目のトップ画像左下のくまモン骨壺をアップで。思わずほほえんでしまうような、こうしたデザインも現在では求められるようになってきている。
エスケーはクルマ系のイラストをあしらった骨壺を!
クルマ好きにとっては、愛車や憧れのクルマなどを骨壺にあしらってもらいたいという人もいることだろう。エスケーは、世界的に知られた名古屋のスーパーカーも扱うカスタマイズショップのリバティウォークとコラボレーションし、R35型GT-R(日産)などをペイントした骨壺を出展した。
R35型GT-Rをあしらった骨壺。画像のようにモノトーンのほかフルカラーの骨壺もある。カスタマイズショップのリバティウォーク社がペイントを担当した。
エンディング産業にまで進出したPepperくん
ニッセイエコが出展したのが、真言宗、浄土宗、曹洞宗のさまざまな経典を読経できるという、「Pepper(ペッパー)導師」。取材した時は見られなかったが、モーション(Pepperくんの動作パターン)が作成されているので木魚なども叩けるらしい。
IT化が進むエンディング産業の最もわかりやすい例といえるのが、この「Pepper導師」。菩提寺がなかったり遠かったりする人などの利用を想定しているという。
バルーン宇宙葬友の会はバルーンで成層圏へ散骨!
株式会社バルーン工房が設立した「バルーン宇宙葬友の会」が行っているのが、バルーンで高度30~40kmぐらいの成層圏までバルーンで浮かび上がって、そこでバルーンの破裂を利用して散骨し、偏西風に乗って地球を周回するという「バルーン宇宙葬」だ。
ちなみに、厳密にはどこからが宇宙というのは確率された定義はないのだが、国際航空連盟では100km(10万メートル)から上空を宇宙と定義している(そこもまだ大気圏内でもあり「熱圏」)。しかし、高度20km(2万メートル)まで上がれば間違いなく地球が球体であることを実感できるとされており、30km以上なら宇宙にとても近いのもまた事実だろう。
バルーン宇宙葬の仕組み。バルーン宇宙葬では、地球が間違いなく丸く見える高度で散骨される。費用一式は24万円(税別)で、遺骨の粉末化にかかる費用が別途2万円(税別)。
銀河ステージの本格宇宙葬
銀河ステージが手がけるのが、スペースメモリアル、つまり宇宙葬だ。米スペースX社の国際宇宙ステーションへの補給などで活躍している民間ロケット「ファルコン9」やNASAのロケットに搭載する、本格的な宇宙葬を行っている。しかも、かつては非常に高額だった宇宙葬が、実はかなりコストダウンが進んでいる。
最高高度100kmへの高さへと打ち上げる(落下中に遺骨は飛散する)「宇宙飛行プラン」が48万6000円(税込)。最長240年にわたって軌道上にとどまれる「人工衛星プラン」が102万6000円(税込)。NASAのロケットを利用して月へと向かう「月旅行プラン」は270万円(税込)。そして、NASAの惑星探査のタイミング次第となるが、深宇宙探査機にカプセルを搭載してどこまでも宇宙を飛んでいくというのが「宇宙探検プラン」で、こちらも270万円(税込)。
宇宙葬を証明する「打ち上げ証明書」など。まだまだ生身で宇宙へ行くには多額の費用を必要とするが、米国で民間のロケットなどが運航を開始したことにより、宇宙葬に関してはかなりコストダウンが進んでいる。
キティちゃんは仕事を選ばない!
最後はキティちゃんの石像をお見せしよう。墓石などを扱った展示会「ジャパンストーンショー2017」が同時開催されたが、そこで一般社団法人日本石材産業協会が出展した。仕事を選ばないプロ中のプロといわれるキティちゃんだけあり、墓石風とはあっぱれとしかいいようがない。
墓石に使われる石材によるキティちゃん。そのうち、実際にこんなお墓とかもできそうである(すでにあるのかも)。
2017年8月29日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)