【第28回 国際文具展:その1】 日本文具大賞も発表! 世界中の文房具が大集合!
最新のステーショナリーグッズが勢揃いする「第28回 国際 文具・紙製品展ISOT」が、7月4日から6日にかけて東京ビッグサイトで開催された。
その年のもっとも優れた文具に贈られるアワード「日本文具大賞」受賞作品から往年のベストセラー、そしてまもなく発売予定の最新グッズまで、39か国2,640社が出展した文具の中から、ひときわ目を引いたモノを紹介しよう。
第26回日本文具大賞 機能部門グランプリ作品
今年の日本文具大賞機能部門のグランプリに輝いたのは、カール事務器社「エクスシザース」である。
刃物の街・岐阜県関市で作られたこのハサミ、切れ味が驚くほど素晴らしい。従来のハサミの2倍という3mmの厚さのステンレス鋼板を使っていること、ハンドルの末端まで銅材が入っているため刃先まで力を伝達しやすいこと、指にかかる力を分散させるハンドルなどがその秘密である。インダストリアルな印象の角ばったデザインもクールだ。
エクスシザースは黒、赤、白の3色展開
クラフトマンが作るこだわりのビジネスマンのための高品質ノート
新橋を拠点にする1971年創業の老舗印刷会社・河内屋が2017年に立ち上げた文具ブランド「KUNISAWA」は、モノにこだわりをもった大人の男にふさわしい作品を展開している。
出展されていたのは2~3日前に出来上がったばかりのもの。広告代理店、グラフィックデザイナー、カメラマン、アーティストなどと共に仕事をしてきた経験から生まれた、紙の質感・書き心地の良さを追求したノートで、側面に施されたコッパー(銅)による天金加工や箔押しが印刷会社たるクラフトマンシップを感じさせる。ノート、メモ帳、ブロックタイプ、リングノートなどがある。
記憶を残すための自分だけの手帳
日本文具大賞 デザイン部門 優秀賞を受賞した啓文社印刷の手帳「tete(テテ)」は、4つのパーツを組み合わせ、世界でひとつの自分だけの手帳をカスタマイズする。
左:栃木レザーを使用したテテの革カバー。右:豊富な種類をそろえた革カバーの金具。後ろ:刻印用のアンティーク調イラスト。
① 革カバー 4色展開で、使い込むほど手にしっくりと馴染んでくる。独特の風合いと自然な存在感を保つため余計な表面加工をしていない。
② 金具 革カバーの金具はアルファベットやアンティーク調のデザインを選べる。
③ 刻印 活字とアンティークイラスト版の組み合わせを自分で選択し、革カバーに味わい深い活版印刷で刻印してくれる。名前、言葉、思い出の日付、イラスト版など好きな内容を刻印することで自分だけの手帳が出来上がる。
④ 表紙・裏表紙・リフィル リフィルはマンスリーやウィークリーをはじめ、横罫線、方眼、レビュー、四つの四角、絵日記、万年筆用紙を使用した無地、切り取りメモなど19種類ある豊富なラインアップ+グレーピンク、ブルーの3色展開。書き味が柔らかくペンの引っかかりが少ないトモエリバーという用紙を使用。薄くて軽く裏写りがしないという特徴があり、手帳用としては最適な素材である。
スマホのカレンダー機能を利用する人が多い今の時代、あえてこういった手帳を製品化したのは、「記憶に残る印刷物を作っていく」という印刷会社のフィロソフィーを提言していきたいためであるという。特別感があったり、思いがこもったモノの方が長く使われるという発想から生まれたテテは、革カバーがだんだんと手に馴染むように、記憶も自分らしい方法で留めたい人にぴったりだ。
130年の歴史を誇るオーストリアの文具メーカーも参戦!
1887年創立のオーストリア最古の文具メーカー「Kores(コレス)」も、今年はじめて文具展に出展した。
創立130年を祝うコレス社のポスター
洗練されたデザインが目立つ文具の中で、どことなく垢抜けしなくもない(?)コミカルでポップなコレスのブースはある意味目を引いた。オーストリアの文具の需要層は主に小中高生であり、そういった年齢層を意識したデザインとなっているのがコレスの製品がポップな理由だそうだ。
車好きならばきっと欲しくなる修正テープ「Scooter(スクーター)」は、黒、赤、緑の3色。木の色のスクーターは、100%再生可能なリサイクル紙から作られている。ラッキョウのような形をしているが持ちやすい。
ぼってりとした形の接着剤「Glue(グルー)」。さかさまにして使うときに握りやすい形状をしており、先端も乾燥して固まらないよう工夫されている。右が万能用、左が木専用の接着剤。
ドイツ最大の接着剤メーカーはエコで勝負!
黄色の製品が目印の「UHU(ウーフ)」は、文具から工業用まであらゆる種類の接着剤を提供している、ドイツでは知らない人はいないほど有名な接着剤メーカー。
ウーフの新作は環境大国ドイツらしい商品「ReNature(リネイチャー)」である。現在市場に出ている接着剤の90%が石油から作られているが、リネイチャー・液体接着剤はのり部が70%自然素材からできており、容器は88%リサイクル可能、リネイチャー・スティックタイプはのりが58%、ボトルは100%リサイクル可能な環境にやさしい製品である。
液体のりは先端部を回す角度により、3種類の太さののりが引けるよう機能的にできている。
日本ののりといえば、ここ!
のりといえば1899年創業の「アラビックヤマト」である。
子供の頃、誰もが使った懐かしいヤマト糊(右)は天然系の原料「植物性でんぷん」を創業以来使っており、今でも小学校や幼稚園で愛用されている。塗った部分が蛍光色になり乾くと色が消えるタイプ(中央)は、塗り残しやはみだしを防ぐのに便利。ソフトでなめらかな塗りあじのスポンジキャップタイプ(左)は、2009年にグッドデザイン ロングライフデザイン賞を受賞した最も売れているベーシックタイプ。スポンジキャップとのり自体とのバランスにノウハウがあり、こう見えて技術的に難しい製品であるという。
職人技の飛び出す絵本
ページをめくると精密に作られた恐竜が飛び出す「ジュラシック ブック」は、小西印刷所の3Dポップアップブックである。
レーザーで繊細にカッティングしたパーツを1点1点人の手で組み立てたアートのような技巧作品で、日本文具大賞デザイン部門優秀賞が授与された。
ミラノ大聖堂など世界の有名建築や様々なモチーフを立体化したポップアップ式グリーティングカードは、今後ミュージアムショップでも人気が高まりそうだ。ジェラシックブック、グリーティングカードともに今年の秋からの発売が予定されている。
ミラノ大聖堂を忠実に再現した飛び出すグリーティングカード
机上を楽しく彩るブロック クリップたち
「Block Clip(ブロック クリップ)」は、クリップとブロックの両方がドッキングしたデザインフィル社が展開するプロダクト「ミドリ」のアイデア製品。
バラバラしたり失くしたりしがちなクリップをケースなしでも保管でき、机上に飾ることも可能という機能性とユーモアが融合した今までにない製品で、日本文具大賞デザイン部門優秀賞を受賞した。
クリップを組み合わせて作ったワニとフラミンゴ。クリップとしての機能もきちんと果たしながらも、ブロックとして使えるのも楽しい。
色と大きさが異なる24個入りクリップのパッケージが4バリエーションそろっている。
台湾のステーショナリーが今注目!
国内外の文具メーカーの発掘をする福岡の文具代理店moments companyによれば、最近ステーショナリーのデザインで注目されているのは台湾だという。卓越したデザイン文具が目白押しの台湾から3メーカーの製品を紹介したい。
パッケージから製品までレトロセンスに貫かれた美しい文具
「TOOLS to LIVEBY(ツールズ トゥ リブバイ)」は、台湾でステーショナリーショップを営むデザイナーのマルコとカレンが、文具好きが高じてオリジナルの製品を作るようになったという。「古いものにも新しさを見出し、現代の感性でリプロダクト化する」がコンセプトの文具たちは、台湾はもとより世界中に多くのファンを持つ。
どことなく懐かしい配色、フォント、パッケージの作品たち。左はペーパークリップで、6種類の珍しいかたちのクリップがそろっている。中央上は、プラスチック製のレターオープナー。尖った部分を守るデザインとなっている。右のハサミはステンレスでできたハサミ。デザインだけでなく裁断力も優れている。
オリジナルのノートも独自のフォントを使っていて味わい深い。
コンクリート製の文具!?
「22 Design Studio」も、特殊なセメント素材の筆記具を開発している台湾のブランドだ。
コンクリートの質感を活かした幾何学的なデザインは、大胆かつユニークな美しさだ。つるりとした手に馴染むコンクリート、意外性のある素材を文具に置き換えた重厚な製品だ。
地層のような意外性のあるデザインのボールペン、スケッチペンシル、シャープペン。グリップは滑らず、持ちやすい。
幾何学的なペンホルダーとテープディスペンサー。無駄な装飾をいっさいそぎ落としたバウハウスのような機能美だ。
オブジェのように美しいハサミ
「HMM(HUMAN MECHANIC METHOD)」は、機能性とデザインにこだわり、厳選された素材と熟練した職人技によって丁寧に仕上げられた文具を生み出すメーカー。
立つハサミは、先端が平面になっていてマグネットによりハサミを立てかけることで、ハサミ自体が木のようなオブジェとなり机上を美しく飾る。定規と一体化したペン「RULE ONE」は2015年Red Dot Design Awardを受賞した。
2017年7月13日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)