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公開日:2026.04.03

なぜポルシェのエントリーグレードは侮れないのか?——河村康彦の「ポルシェは凄い!」♯12

ポルシェ911カレラ カブリオレ(992.2型)|Porsche 911 Carrera Cabriolet(type 992.2)

いつの時代もスポーツカーファンから一目置かれているブランドと言っていいポルシェ。ではポルシェのいったい何が凄いのか。ポルシェ愛好家のモータージャーナリスト河村康彦の連載コラム、12回目はエントリーグレードにフォーカス!

ポルシェ911カレラ カブリオレ(992.2型)|Porsche 911 Carrera Cabriolet(type 992.2)

文=河村康彦

写真=ポルシェ

編集=細田 靖

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「車名のみでグレード名称が付かない」がベースモデルという扱い

718ボクスター/ケイマンに911カレラ、マカンにカイエン、パナメーラにタイカン——モデルチェンジの端境期であったり、新規の発注がストップされ在庫のみの販売となっているモデルもありはするが、これほどに豊富な車種をカタログに並べるのが昨今のポルシェというブランド。

そのうえで、さらに各車のグレード別モデルまでを数えてみると、もはや少量生産メーカーとは言えないほどに多彩なラインナップを揃えるのが現在の姿である。そうしたなかにあって、「車名のみでグレード名称が付かないもの」がそれぞれのベースモデル(エントリーグレード)という扱いになっているのはご承知のとおりだ。

かつてはまず、そうしたモデルがローンチされた後に、さらなるハイパフォーマンスバージョンや派生ボディが加えられていくというプロセスを辿っていたのがこのブランドのやり方であった。しかし最近では、マーケティング上でのより強いインパクトを狙ってか、ハイパフォーマンスバージョンの方が先にデビューを果たす場合もあったりするなど、プロモーション活動のやり方にも変化が見られるようになっている。

かくして、こうした様々なバリエーションが存在するなかで1台だけにスポットライトを当てようとなった場合、どうしてもハイパフォーマンスバージョンや見た目に派手な派生モデルの方に目を向けたくなってしまうのが世の常というもの。

さらに、走行性能に関連するアイテムを筆頭に、様々な快適装備や安全装備、はたまた見た目に関係するアイテムまでもをオプションとして豊富に用意する(インテリアステッチのカラーまで選べたりも!)このブランドの作品の場合には、選択したモデルにこうしたアイテムを一切上乗せせずに注文する例は現実にはほぼあり得ないということを思うと、例え各車のベースモデルでも完全なる“素のモデル”というのはほぼ存在しないと言った方が現実に即しているのかも知れない。

例え“素の状態”であっても走りの質感に一切の妥協点は存在しない

ポルシェ718ケイマン(982型)|Porsche 718 Cayman(type 982)

ポルシェ718ケイマン(982型)|Porsche 718 Cayman(type 982)

実際、これまで国内外でテストドライブを行った数々のモデルたちを例に取っても、オプションアイテムがひとつも装備されていないモデルには、実は一度も乗った記憶がない。余談ながら、そうした状況ゆえ予算の都合から装着オプションを最低限に抑えながら自身が購入したモデルでは、いざ納車された後になって「あれ? このステアリングホイールは何か妙にショボいけれど、今まで試乗車に付いていたアイテムはどれもオプションだったのね……」と、ようやく気が付くといった出来事もあったりしたものだ。

なかでも、特にインテリアの仕上がりや装備に関しては「ライバルに見劣りする」と指摘されることの多かったポルシェ車の場合には、我々が借り出すプレスカーと呼ばれるメディア向けのテスト車では、特にそうした見た目に関わるオプションがてんこ盛りという事例は少なくなかった。一方で、走りの性能に関わる部分のオプションはほぼ装着されていなかったり、せいぜいシューズがインチアップされている程度といった、ほぼ“素”の状態と呼べるエントリーグレードのモデルには、特に911やボクスター/ケイマンを中心に、台数は多くなかったものの何度か触れた経験がある。

そうした“貴重”なテスト車に触れた経験を踏まえて語るならば、「シューズがやや小さいために見た目の迫力が今ひとつ」であったり、「PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント:電子制御式可変減衰力ダンパー)」をオプション装着したモデルよりも低速域での乗り味がややかたい」といった相違点こそ存在しても、「基本的な乗り味は全く変わるところがない」というのが例外のない事柄であった。

すなわち、ポルシェ車は例え“素の状態”であってもその走りの質感に一切の妥協点は存在しないと言い切れるというのが、これまでの経験から断言できる真実。足し算を重ねていってようやく名声を勝ち取るわけではなく、「これ以上引けるものはない」というベーシックな状態であったとしても、独自のテイストと美点は決して失われないのがこのブランドの作品の実力なのだ。

気が付けば自身のファーストカーとして付き合い始めてから早30年余りとなった今だからこそ、そんなことを自信を持って語る気になれるのである。

動画=ポルシェ公式YouTubeチャンネルより

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