なぜポルシェの“GTS”モデルは美味しいのか?——河村康彦の「ポルシェは凄い!」#11
いつの時代もスポーツカーファンから一目置かれているブランドと言っていいポルシェ。ではポルシェのいったい何が凄いのか。ポルシェ愛好家のモータージャーナリスト河村康彦の連載コラム、11回目は“GTS”モデルをフィーチャー!
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現在ポルシェ車すべてのラインナップに設定されている“グラン・ツーリスモ・スポーツ”
911に718(ボクスター/ケイマン)、パナメーラにタイカン、そしてカイエンにマカンと、現在ラインナップされるすべてのポルシェ車に設定されているグレードのひとつが「GTS」。車名やグレード名に関して過去の遺産に基づく数多くの“引き出し”を用意するのがポルシェというメーカーだが、このブランドの長いヒストリーを遡って行くと半ば予想したとおりに“グラン・ツーリスモ・スポーツ”を表すというモータースポーツの世界へと繋がるGTSという記号の出典を見出すことができる。
時は空冷の水平対向8気筒エンジンを搭載したマシンで、悲願だったF1初優勝を成し遂げた1962年の翌年。すなわち、1963年に当時のGT2カテゴリーに合致するレーシングモデルとして発表された2リッターの水平対向4気筒エンジンをミッドシップ搭載した、新開発の超軽量レーシングマシンに与えられた名称が「904カレラGTS」だった。
その後、長い年月を経て1981年の「924カレラGTS」、1992年の「928 GTS」と市販モデルに対しても使われるようになったGTSの記号は、冒頭紹介のように現在では2ドアモデルに限らず、このブランドが手掛けるすべてのモデルへと拡大採用されることになっている。
こうして、今へと続くポルシェGTSシリーズの端緒となった前出の904カレラGTSが特徴的だったのは、全高はわずかに1m余りに過ぎず、ボディもFRP(繊維強化プラスチック)製といったスペックから純粋なコンペティション用と思われたこのモデルが、実はサーキットまで公道上を自走して行くことも可能という実用性も備えていたということ。
高性能な「S」をさらに上回る性能の持ち主ながら実用性は少しも損なわないキャラクター
ポルシェ718ボクスターGTS 4.0|現行982型のGTSは自然吸気式の4.0リッター水平対向6気筒エンジンを搭載して、2020年に発表。最高出力は400ps、最大トルクは6速MTで420Nm、7速PDKで430Nmを発揮する。0-100km/h加速は4.5秒(MT)、4.0秒(PDK)、最高速は293km/h(MT)、288km/h(PDK)だ。
現在のポルシェ各モデルのバリエーションにはベースグレードの上に「S」の記号が与えられる高性能バージョンが設定されているが、「GTS」はそれをさらに上回る性能の持ち主ながら実用性は少しも損なわないというキャラクターを備える点に、904カレラGTSから受け継ぐ前出のフィロソフィーが連綿と息づいていると言っても良さそうだ。
走りに関わる装備群やエンジン出力の点で、Sグレードのそれをさらに上回るスペックが与えられるのはいずれのモデルのGTSグレードも同様であるものの、その例のなかにあって、特に目立つのはSグレードとは全く異なる心臓を搭載している911と718という2ドア系。
718ボクスター/ケイマンのSグレードに搭載されるのはターボ化された2.5リッターの水平対向4気筒ユニットだが、GTSグレードが搭載するのは992型の911に搭載されているユニットから「ターボチャージャーを外して排気量を4リッターにアップした」と概要を紹介できる水平対向6気筒エンジン。
実は両者はシリンダーブロックやクランクケースといった主要骨格に加え、生産設備までが共通という“モジュラーエンジン”。そうした資産を巧みに活かしながらSグレードとの間に大きく異なる独自性を演出したという点では、これまで様々なモデルで多くのGTSグレードが輩出されてきたなかにあっても特に注目に値する1台と言っても良さそうなモデルなのだ。
ポルシェ911カレラGTS(992.2型)|Porsche 911 Carrera GTS (Type 992.2)
けれども、新たにそんな718シリーズのGTSすらを凌ぐ注目株となったのが、992後期型(992.2型)となった911シリーズに設定されたばかりの最新911カレラGTSに搭載されるパワーユニット。
なんと言っても注目に値するのは、エンジン本体が専用の設計であることに加え、ポルシェの水平対向ユニットとしては初めて電動化されたアイテムであるということ。具体的にはSグレード用3リッターユニットのボアとストローク双方を延長することで排気量を3.6リッターまで拡大。さらにコンプレッサーとタービン間に小型のモーターを挟み込んだ“電動ターボ”を備え、さらに8速PDKの後端にもモーターを内蔵するハイブリッドシステムを採用することで、あらゆる走行シーンでの性能向上を図っているのだ。
ポルシェが「T-ハイブリッド」と名付けたこの新機軸こそが、まさに最新911カレラGTSのハイライト。これを皮切りに、これまで各モデルで“Sの上位グレード”としてのみ受け取られがちだったGTSシリーズ全体の立ち位置が、ますますその独自性を強めていくことになるのかも知れない。
動画=ポルシェ公式YouTubeチャンネルより




