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公開日:2026.02.27

フォルクスワーゲン・ゴルフGTIはホットハッチを定義づけた歴史的傑作!──80年代ホットハッチの名車たち【世界の名車・珍車図鑑】Vol.25

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI(初代)|The first Golf GTI from 1976

歴史に名を残した名車・珍車を紹介するコーナー。今回はホットハッチを定義づけた歴史的傑作、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIが登場!

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI(初代)|The first Golf GTI from 1976

文=武田公実

写真=フォスクスワーゲン

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コンパクトな実用ハッチバック車をベースとする高性能モデルが、ストリート用のスポーティカー、およびモータースポーツ用ベース車両の新たなジャンルとして認知され始めた1980年代。この時期には本家たるヨーロッパのほか、日本からも人気の「ホットハッチ」、あるいは「ボーイズレーサー」とも称された魅力的なモデルたちが数多く登場した。

そんなクルマたちをご紹介するのが、「80年代ホットハッチの名車たち」。

今回は、ちょうど半世紀前となる1975年にデビューし、現代に至るすべてのホットハッチの開祖となった名作中の名作、フォルクスワーゲンの初代「ゴルフGTI」をご紹介させていただくことにしよう。

8人の“サムライ”の課外ワークから誕生したマスターピース

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI(初代)|The first Golf GTI from 1976

フロントグリルに誇らしげに輝く「GTI」のバッジ

アメリカの宇宙科学黎明期を描いた名作「ライトスタッフ(1983年公開:米映画)」でも取り上げられた「ロッキード・マーティン先進開発計画」の愛称から知られるようになった「スカンクワークス」なる言葉。

大企業の内部にあって先見の明を有する若き精鋭たちが、主にウィークデイの終業後や休日に有志で集結して押し進め、のちの技術革新に大きく貢献することになるような自主プロジェクトを指して、そう言うそうだ。

自動車界においても、たとえば「ランボルギーニ・ミウラ」や「ジャガーXJ220」あるいは「ダッヂ(クライスラー)ヴァイパー」など、特にスーパーカーの分野ではスカンクワークス的な逸話を持つモデルが少なからず存在するが、実はホットハッチの世界的開祖たるVWゴルフGTIもまた、フォルクスワーゲン社内から湧出したスカンクワークスの賜物なのだ。

創業以来のフォルクスワーゲンの歴代経営陣は、あたかも社是のごとく高性能車に冷淡なスタンスを取り続けており、それは1974年に発売された歴史的傑作、初代ゴルフについても当初は方針を変えることはなかった。

しかし、アウトバーン網が目覚ましい勢いで発展していた西ドイツ(当時)では、高速走行を可能とするモデルの需要が急速に高まっていたのに対して、最上級版でも1.5L/70psに過ぎない初代ゴルフでは、新たな要望には応えられないと危惧する向きもあったという。

そこで、当時VW社広報部長の座にあったアントン・コンラートとエンジニアのアルフォンス・レーヴェンベルクは、会社公式の企画ではなく非公認の「スカンクワークス」プロジェクトとして、アウトバーンにてポルシェ911やメルセデスSクラスと同等の走りを見せられるとともに、当時から人気が高まっていたラリー競技用車両のベースとなるような高性能版「スポーツゴルフ」の開発に着手するのだ。

この2人に加えて広報部所属のギュンター・キュール、サスペンションの専門家ヘルベルト・シュスター、試作パーツを通常テストに密かに持ち込んだヘルマン・ハブリッツェル、シャーシ解析により追加補強を提案したユルゲン・アドラー、「GTI」の略称を考案したことで知られるマーケティング部のホルスト=ディーター・シュヴィットリンスキー、そしてチームが搭載を見込んでいた「アウディ80」用エンジンの開発者、フランツ・ハウクが参加することになった。

5000台が売れれば目標達成のはずが、予想外の大ヒット!

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI(初代)|The first Golf GTI from 1976

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI(初代)|The first Golf GTI from 1976

メーカー非公認の自主企画としてスタートしたゴルフGTIプロジェクトは、1975年初頭にフォルクスワーゲンの経営陣に提示。1975年5月28日には、当時のFIA「グループ1ツーリングカー」カテゴリーの最小生産台数である5000台以上を売りさばくことを条件として突きつけられつつも、GTIプロジェクトは役員会の正式承認に至った。

ついにVW本社の正式プロジェクトとなったGTI開発チームだが、当初はその心臓部をツインキャブレター仕様とすると想定していた。

ところが、ゴルフではなく初代シロッコをベースに製作されたミュール(試作車)でテスト走行した当時のVW研究開発部門責任者、エルンスト・フィアラは、ハードすぎるサスペンションと吸気システムからの過剰な騒音について指摘。このミュールを「一般ユーザーには運転不能」とさえ断じていたという。

そこでハウク技師らは、当時アウディ80GTE向けとして開発されていた「EA827」直列4気筒SOHCエンジンの燃料噴射仕様を採用することを決定。このエンジンに組み合わされるボッシュ製「Kジェトロニック」燃料噴射システムは吸気音を低減するとともに、出力およびドライバビリティ、あるいは燃費の向上まで実現することになる。

初期型GTIに搭載されたエンジンのボア×ストロークは79.5mm×80mmで、排気量は1588 cc。圧縮比は9.5:1に引き上げられていた。これにより110ps/6100rpmの最高出力と、140Nm/5000rpmの最大トルクを発生する高性能エンジンが実現。クロスレシオの4速マニュアルトランスミッションと組み合わされた。

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI(初代)|The first Golf GTI from 1976

初代ゴルフ GTIに搭載されたエンジンは1.6リッターのNA直列4気筒。110ps/6100rpmの最高出力と、140Nm/5000rpmの最大トルクを発生した

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI(初代)|The first Golf GTI from 1976

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI(初代)|The first Golf GTI from 1976

一方サスペンションは、前述のシロッコ改造ミュールよりは常識的な仕立てとされながらも、それでも標準型ゴルフ1よりは硬く、車高もフロント10mm/リア20mmのローダウン。前後にスタビライザーを追加して、ロールを抑制する。さらに175/70HR13サイズのラジアルタイヤが純正指定されたが、この「HR」表記はゴルフGTIが確実に180km/hを超えるスピードを得たことの宣言にも等しいもの。このワイドなタイヤを収めるべく、マットブラック仕立てのフェンダーアーチに加えて、同色の大型フロントエアダムスカートも装着された。

そしてVW本社の正式プロジェクトに昇格した時点で、当初8名で構成されていたGTIチームに9人目のメンバーが加わる。VWのスタイリング部門に属する女性デザイナー、グンヒルド・リリエクヴィストは、GTIの内外装を標準版のゴルフと差別化する一連のコスメチューンを担当。

彼女は、ラジエーターグリルなどに設けられた鮮紅色の差し色やタータンチェック柄のシート生地、ゴルフボールを模した有名なシフトノブなど、現在の「ゴルフ8.5」GTIにも採用されているディテールアップを図った。

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI(初代)|The first Golf GTI from 1976

ゴルフGTIといえば、このタータンチェック柄のシート生地。写真は初代ゴルフGTI

かくしてゴルフGTIは1975年9月、フランクフルトで開催された「IAA」にてワールドプレミア。ショー来場者は「マーズ・レッド」のボディに収められた110psのパワーに歓喜したものの、この期に及んでもVW首脳陣のみならず、開発チームさえも5000台以上の販売には自信が持てなかったようで、生産化の正式な報道発表は1976年春の終わりまで行われず、ようやくショールームでのセールスが解禁されたのは、同年9月のことであった。

ところが、ショーカーと同じマーズ・レッドに加えて、「ダイヤモンドシルバー・メタリック」との2色で展開されたGTIは、リリース当初から驚異的な売れ行きを記録。1976年から1983年のゴルフ1生産終了までに、実に約46万2000台ものGTIがニーダーザクセン州ヴォルフスブルクの生産工場からラインオフされることになる。

さらには、FIAグループ1およびグループ2にホモロゲートされ、国際的なモータースポーツの舞台でも数々の成功を収めたVWゴルフGTIの大成功は、その後1980年代を迎えると、ヨーロッパのみならず日本でも追随するライバルが続出。ホットハッチ、あるいは「GTI」が世界共通のカテゴリーとして認知されることになったのである。

フォルクスワーゲン ゴルフ GTIエディション50とゴルフI GTI|Volkswagen Golf GTI EDITION 50 and Golf I GTI

ゴルフGTIの50周年を祝う記念モデルとして最新の8.5世代のGTIをベースに登場した「エディション50」と初代ゴルフ GTI(奥)

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