レシピ09:「ペーパーなスキーヤー」の作り方
大型車ありきの発想。選んだのはスキーの情景!
いつも乗用車を主役にすることが多いのですが、なぜか大型のバスをメインにしたくなりました。数あるバスが走る情景の中で、僕の中でピンと思いついたのが、今回の情景。実は僕、若い頃に山岳スキー部に入っていて、たびたび山に行っていました。僕は当時、鹿児島に住んでいたんですが、宮崎にはスキー場があって、そこによく赴いていたんです。
「JAF Mate」の読者は、マイカーをお持ちでしょうから、バスツアーに参加することは少ないのでしょうが、若い頃は、バスに揺られてスキーに行った人も多いはず。この作品を見て、またスキーに行きたくなってもらえたらうれしいですね。
スキー場に見立てたのは、台所で活躍するキッチンペーパー。
それを3本積み重ねて、急斜面のゲレンデに。
その奥には同じく、キッチンぺーパーの樹氷が林立。
雪化粧した山の麓に到着したバスから降りてきたスキー客たちは、
初心者なのか、急斜面を見て恐れおののく……。
実は以前、別の作品ではトイレットペーパーでスキー場を表現したことがあります。それをキッチンペーパーに変えた理由は、トイレットペーパーではできない「新ワザ」を思いついたから。その秘密は3ページ目で紹介しましょう。
「ペーパーなスキーヤー」を表現した材料
トレーン「1/80 フェイスフルバス No.03 富士急行」1,944円(税込み)
バスのモデルはたくさんありますが、適当に使うとリアリティを損ないます。そこで、実際にスキーツアーで利用されているバスを調べ、見つけたのがこのモデル。ボディカラーがホワイトなのも◎。真っ白な情景の中に溶け込んで、変に目立つことがないのもいいですね。たまたまなんですけれど(笑)。
キッチンペーパー
ゲレンデ、雪山などの表現に使ったのが、台所やダイニングで活躍する日用品のキッチンペーパー。表面の凹凸が、スキーヤーの滑走によって削れたコブのようにも見えるでしょ? ということは、作品のゲレンデはかなりのコブ斜面! 初心者が滑るのは、かなり厳しそうですね(笑)。
スキーヤーとスノーボーダーの人形
スキーヤーを模した人形は、おなじみのドイツ、プライザー社のモデル。スノーボーダーとして使っている人形は、ダボついたウエアだったりして、芸が細かいですね。この作品では再塗装は試みず、製品の状態のままで使用。あらかじめ色とりどりのウエアに塗装してあるので、そのままでも十分映えるからです。
いよいよ制作!
(1)キッチンペーパーで雪原も表現
空を表現する水色のバック紙の上に、キッチンペーパーを敷きました。ゲレンデだけでなく、バスが停車している平地も同じ素材で再現すると一体感が増すからです。ちなみに、キッチンペーパーは二重にしています。1枚だけだと、バック紙の水色が透けてしまうのです。細かいところまでこだわりましょう。
(2)トイレットペーパーではできない「新ワザ」
以前、ゲレンデの表現にトイレットペーパーを使用しました。その時は情景模型の樹木を使ったのですが、今回はキッチンペーパーだけで雪景色を成立させようと試みました。トイレットペーパーよりも固く、厚みもあるキッチンペーパーは耐久性がある。ねじっても千切れることもなく、さらに真っ直ぐに立つのです。根元をクリップで挟んで自立させれば樹氷の完成です!
(3)真上に照明を当てて「ピーカン」の天候に!
スキーに来たなら、誰もがピーカンな天気を望んでいる。作品でも、スキーヤーの人形たちを喜ばせようと、照明でピーカンにしてあげることに。照明を真上から当てると、影を最小限に押さえられるのです。逆に斜めから当てると影が濃く出ます。照明ひとつで天候や時間帯を表現できるんですよ。
ミニチュア写真家:田中達也(たなか たつや)
1981年、熊本県生まれ。広告関連のアートディレクションに携わりながらInstagramにアップしていたミニチュア作品が大人気に! 「ミニチュア写真家」へと転身する。2017年に話題を呼んだNHK連続テレビ小説『ひよっこ』のタイトルバックのミニチュアも手がけた。2018年「MINIATURE LIFE展 田中達也 見立ての世界」が国内外各地で開催予定。
写真集『MINIATURE LIFE』『MINIATURE LIFE2』(水曜社)を上梓。
彼の作品は、http://miniature-calendar.comをチェック!
企画構成・文/寺田剛治