2021年02月13日 21:30 掲載

次世代技術 全固体電池の容量倍増と高出力化に成功。ポイントは電極のリチウムの数と清浄な「界面」

全固体電池(全固体リチウムイオン電池)の共同研究を進める東京工業大学、東北大学、産業技術総合研究所、日本工業大学の4者は1月26日、その開発目標のひとつである電池容量の倍増と高出力化に成功したことを共同で発表した。

神林 良輔

東京工業大学、東北大学、産業技術総合研究所、日本工業大学が共同開発した全固体電池における界面形成過程と充放電動作の概略図。

今回開発された全固体LIBにおける界面形成過程と充放電動作の概略図。

 リチウムイオン電池(LIB)はそれまでのバッテリーと比べてエネルギー密度が高く、同じサイズでより大きな電池容量を実現。それにより、スマートフォンやノートPC、タブレット、デジタルカメラ、携帯音楽プレイヤーなど、さまざまなモバイル機器の稼働時間増え、人々のライフスタイルを大きく変革させた。

 もちろん、EVでも採用されている。しかし、現状のLIBは電解質が液体であるため、さらなる高エネルギー密度化や高速充電性に限界があり、安全性の面でもネックとなっている。一方、研究開発が進められている、電解液の代わりに固体電解質を用いる全固体電池(全固体LIB)なら、そうした現状の限界を超えられることから、国内外で研究開発が急ピッチで進められているのである。

固体電解質に求められる高性能化

 全固体LIBにすることで、従来のLIBのような破裂、発火といった危険性は少なくなる。また、大容量化や高出力化、充電時間の短縮といった性能面でも有利といわれる。ただし、EVに使える大容量の全固体LIBは、まだ実用化に至っていない。

 これらの開発目標を達成する手段として、固体電解質に加え、新しい電極材料の研究も活発化している。広く利用されている4V程度の発生電圧を有する電極材料に加え、より高い5V程度の電圧を発生する電極材料を用いた高出力型全固体電池に注目が集まっている。

ポイントは電極のリチウムの数と清浄な界面

 そうした中、今回、東京工業大 物質理工学院 応用化学系の一杉太郎教授、東北大の河底秀幸助教、産業技術総合研究所の白澤徹郎主任研究員、日本工業大の白木將教授らの共同研究チームは、電極と電解質が接する界面において不純物が含まれないよう制御することで、大きな成果を出した。従来の電極を使用した全固体LIBと比較して、電池容量を倍増させることに成功したのである(画像1b)。

 従来の電極も今回の電極も、リチウム、ニッケル、マンガン、酸素からなる化合物なのは同じだが、今回のものはリチウムの数が2倍となっている点がポイントだ(それが電池容量の倍増につながっている)。また、今回の全固体LIBは4.7Vと2.8Vで動作。そして50回の充放電を行っても安定して動作したという(画像1a)。

 そしてさらに、電極と電解質の間の界面に不純物を含まないようにして作られたことから「界面抵抗」が小さく、高出力化も実現した。実験で電極と電解質の間の界面に不純物を混入させてみたところ、充放電動作がまったく行われないことが判明(画像1c)。不純物を含まない界面の実現が、全固体LIBの高容量化・高出力化に極めて重要であることが明らかとなったのである。

今回開発された全固体LIBの充放電測定の結果。

画像1。今回開発された全固体LIBの充放電測定の結果。(a)清浄な界面を有する場合のサイクリックボルタンメトリー(電池電圧を変化させ、発生電流を測定する手法)。(b)同じく清浄な界面を有する場合の電池容量。50回目まで安定した充放電動作が確認された。(c)界面に不純物が存在する場合のサイクリックボルタンメトリー。充放電動作はまったく確認されない結果となった。

 共同研究チームは、「今回の成果により、低界面抵抗や高速充放電、高出力化、電池容量の倍増が実現し、全固体LIBの応用範囲の拡大につながる」とコメント。実用化を目指す上で、今回の成果は大きな一歩となるとしている。

 また今回の研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業、日本学術振興会科研費に加え、トヨタも支援を行った。トヨタが全固体電池の開発に力を注いでいることは知られているが、それが見て取れる研究成果でもあった。

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