外環・千葉区間のヒミツ! 新たに導入された技術にマニアックに迫る!!
トンネル(地下)の入口に用意された新技術の赤色警告灯付き照明。赤く点滅して、ドライバーに非常事態であることを伝えるシステムだ。非常事態時に誤ってトンネル内に進入してしまわないよう、この赤色警告灯付き照明を初め、ドライバーに対する安全対策は三重の仕組みになっている。撮影したのは、市川南IC近辺のトンネル入口。画面奥が埼玉方面。
2018年6月2日(土)、計画からほぼ50年という歳月を費やして、遂に開通した東京外かく環状道路・千葉区間(三郷南IC~高谷JCT)。その概要についてはこちら、千葉区間の景観については前編と後編で紹介した。そこに導入された数々の新技術を追ってみる。
トンネル入口は赤色警告灯付き照明など三重の防災対応
トンネル内で火災などが確認された場合、ドライバーが気づかずにトンネル内に入ってしまうことを防ぐため、三重の仕組みで非常事態を警告する仕組みが導入された。
最も手前には、「D型」といわれるトンネル情報掲示板が設置され、「火災進入禁止」「火災とまれ」などの表示が出される。そしてその先には、「TN内表示灯(2色灯)」。これは信号機と同じで、普段は青の表示灯が点いているが、非常事態になると赤が点く。
そして最後が、各トンネルの入口部分に設置された赤色警告灯付き照明だ。画像のように点灯した瞬間はトンネル内がとても赤くなる。
赤色警告灯がちょうど点灯した瞬間のトンネル内。とても赤くなるため、誰でも非常事態であることには気がつくはず。
赤色警告灯付き照明が点滅する様子。
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地下で万が一の火災に遭っても安心!
トンネル・掘割構造部の避難設備
トンネル区間や、半地下式で日光が差し込む掘割(ほりわり)構造部区間で火災などに巻き込まれた際は、避難階段を用いて地上に脱出できるようになっている。避難階段につながる非常口は、掘割構造部区間でおおよそ1km間隔、トンネル区間ではおおよそ400m間隔で用意されている。
非常口。画像は、京葉JCTのランプ部分のものだが、そのほかの部分の非常口も外見的な大差はあまりない。
避難階段。
地上出口。開通前のプレス向け現場公開で撮影したため、まだ完成していない部分も見られた。
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京葉JCTの防災設備は特別な仕組みに!
京葉JCTのランプ部分には独立した避難路が!
京葉道路と連絡する京葉JCTの地下ランプ部分は、京葉道路をアンダーパスでくぐるために完全なトンネル区間となっている。掘割構造部のように煙が外に逃げていく作りになっていないため、道路部と並行する形で、独立させた避難通路が用意されている。非常時は、煙を避けるためにも防火扉を通ってまずはこの避難通路に逃げ込み、そこを通って地上への出口を目指すようになっているのだ。
京葉JCTランプ部の避難通路。道路部分とは分厚いコンクリートの壁で隔てられている。この避難通路に逃げ込むための防火扉の非常口は、60m間隔で設置されている。また道路側よりも避難通路側の方が気圧が高められており、道路側からの煙が侵入しないようになっている。
非常電話。京葉JCT近辺だけでなく、掘割構造部全体で約200m間隔で各所に設置されており、受話器を取ると道路管制センターにつながる仕組みだ。
消防用ホースの接続口。非常階段の地上出口の近辺にポンプ車がホースを接続する箇所があり、そこにつなぐことで、トンネル区間や掘割部区間において消防隊が放水を行えるようになる。要は、地上から水を送り込む仕組みになっている。また消火器は掘割構造部区間では約50m間隔で、500m以上のトンネル区間には、約50m間隔で消火栓が設置されている。
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暗くて視認性が低い地下でもさまざまな工夫で見やすく!
視認性向上の工夫その1:プロビーム照明
従来の照明の多くは「対称照明」といわれ、壁面や天井にまっすぐ取り付けられていることから、クルマがその前や下を通過するときに最も強く照らされることになる。そのため、ドライバーから見ると前のクルマの背面が明暗を繰り返してしまい、視認性が低下してしまう。
それに対して千葉区間で採用された「プロビーム照明」は、進行方向側に向けて斜めにセットされている「非対称照明」。ドライバーから見て前を走るクルマはあまり明暗を繰り返さないため、視認性が向上するというわけだ。
プロビーム照明は、NEXCO東日本では2012年に上信越道の日暮山(にっくれやま)トンネルで施行導入されたのが最初で、まだまだ設置箇所は少ない。首都高のC2中央環状線の山手トンネルなどでも導入されている。
プロビーム照明。斜めに傾けてセットされているのがわかるだろうか? LEDが使用されている。
視認性向上の工夫その2:新外照標識システム
掘割区間やトンネル区間などの暗所では標識の視認性が悪化する。このような場合、従来は内側から発光する内照標識が使われていたが、問題点がいくつかあった。最大の問題点は、メンテナンスに時間がかかってしまうため、車線規制が必要になるという点だ。
そこで、標識表面に光を拡散する高輝度プリズム型反射シートを貼り付け、そして路肩壁面に設置した照明から斜めに照らして、明るく見せる新式の「外照標識システム」が採用された。全方位に広く反射することから、反射角の位置だけでなく、どの角度から見ても明るく見えるようになっている。
これによりライトのメンテナンスは車線規制を伴わずに行えるようになった。天井から重量物を吊り下げる必要がなくなった点もメリットだ。
京葉JCTの行き先標識を異なる角度から撮影してみた。上は外照標識を照らしているライトと同方向(光源の入射角側)に近く、下は反対方向(光源の反射角側)で撮影したもの。完全に反射角の位置に立った写真の方が明るいが、それ以外の角度から見た場合でも、明るさが極端に低下することはなかった。
路肩に設置された照明群。照明が故障しても路肩で作業できるため、車線規制を行う必要がないという。
また標識板は交換・修繕作業に通行止めにしなくても済むようにも配慮され、「分割式標識板」が採用された。画像の標識板も東関東道と湾岸線の間で分割されており、1車線ずつの規制で交換作業を行える。
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渋滞抑制のシステムと謎の「H」に迫る!
渋滞の発生を抑制する「ペースメーカーライト」
地下の掘割構造部から橋梁部へと向かう出口付近は勾配が強いため、速度が落ちて渋滞が発生しやすくなる。いわゆる、「サグ」と呼ばれる区間だ。外回りの市川南IC付近は上り勾配3%、内回りの松戸IC付近の上り勾配が4%あり、そこでこの2つの区間には速度低下の抑制と速度回復支援を目的とした「ペースメーカーライト」が設置された。
ライトが両側に多数設置されており、一定のリズムで順々に青い光源が点滅を繰り返していくことで、時速80kmもしくは時速40kmに相当する速度で進行方向に進んでいくように見える。このライトから遅れていくようなら、その速度に達していないことがドライバーは認知できるというわけだ。
ペースメーカーライトは、外回りと内回り両方の掘割部からの出口にかけての、勾配3%以上の急勾配区間に設置されている。また非常時は赤色警告灯付き照明と連動して赤色に点灯する。
ペースメーカーライト作動の様子。最初は時速40kmのタイミングでの点滅。後半は時速80kmでのタイミングだ。
天井にいくつもある「H」は地下を掘り進んだ苦労の証
ところで、京葉JCT近辺の天井には、いくつもの「H」の刻印が見て取れる。これは、片側3車線の自動車専用道路である京葉道路の地下をシールドマシンで掘り進む際、事前に鉄骨のH鋼をジャングルジムのように縦と横に組んで地盤を支えていた跡だ。
トンネルを掘り終えてコンクリートが固まった後、外環をクルマが通行するのに邪魔な部分がカットされた。そして、天井部分のコンクリートに埋まった部分は撤去されず、そのまま残され、このように切断面が見えているのである。工事中に地盤が崩落しないようにがんばっていたのが、このH鋼たちなのだ。
この「H」の刻印は、地上を京葉道路が通過する部分の地盤を支えたH鋼のがんばった証。撮影した画像から概算してみたところ、外回りだけでも100ぐらいはありそうだった。