2022年05月11日 10:10 掲載

クルマ 「乗るスーパーカー」と「見るスーパーカー」。清水草一が選ぶキング・オブ・スーパーカー!

歴代最高のスーパーカーとは何か? フェラーリからランボルギーニまで、これまで十数台のスーパーカーを乗り継ぐだけでなく、古今東西の最新モデルを試乗してきたモータージャーナリストの清水草一が、生涯におけるベスト3を発表する。

文=清水草一

見ているだけでシアワセ

 私にとってスーパーカーは2種類ある。「乗るスーパーカー」と「見るスーパーカー」だ。

 「乗る」とは、「手に入れる」、あるいは「手に入れたいと願う」という意味で、「見る」は文字通り見るだけ。見るだけで満足できるし、むしろ見るだけのほうがいい、という意味も含む。

 多くの人にとってスーパーカーは、見るだけのものだろう。が、私は初めてフェラーリを運転させてもらった時から、「手に入れたい」と激しく願った。その後実際に手に入れ(バブル崩壊のおかげです)、多くのスーパーカーを乗り継ぎ、さまざまなスーパーカーに試乗させていただくうちに、「これは見るだけのほうがいいな」と感じるものが現れた。あまりにもスーパーすぎて、さすがに手が出ないし出したくもない、でも見ていると最高にシアワセ、というスーパーカーたちである。そのベスト3を発表させていだきます。

第3位
ランボルギーニ・カウンタック LP400

Lamborghini Countach LP40|ランボルギーニ・カウンタック LP400

Lamborghini Countach LP40|ランボルギーニ・カウンタック LP400

 カウンタックは2度購入したが、どちらも最終モデルのアニバーサリー。カウンタックは古ければ古いほどピュアであり、お値段も高くなっている。元祖たるLP400がその究極だ。

 LP400には、2回試乗させてもらったことがある。基本的にカウンタックはカウンタックなのだが、LP400はアニバーサリーに比べるとボディが断然軽く、デザインはシンプル&ピュアで本当に美しい。素肌美人とラオウくらいの差がある。

 私は自分のアニバーサリーから、並走するLP400を眺め、あまりの美しさに呆然とした。カウンタックと言えばスーパーカーの帝王で、「オラオラ中のオラオラ」というイメージだが、LP400には、オラオラ感はほとんどない。ただただ自動車デザインの金字塔であり、見ているだけでシアワセだ。

 現在の価格は1億円前後と言われる。怖くて乗れたもんじゃない。

第2位
フェラーリ 288GTO

Ferrari 288GTO|フェラーリ 288GTO

Ferrari 288GTO|フェラーリ 288GTO

 フェラーリ史上、美と威圧感のバランスが最高ではないだろうか。きわめつけの美少女ながら、エアロパーツやオーバーフェンダーで美しく武装しており、それが最高にキマッっている。究極の美少女戦士である。

 が、運転するのは大変だ。まずクラッチがウルトラ重く、ミートは繊細で難しい。ミッションも非常に硬く繊細だ。ステアリングはとてもとても重い(すべて個体差アリ)。スーパーカーに慣れている人間でも、最高クラスの手強さだ。

 エンジンは2.8リッターV8ツインターボ。ブーストがかかればドーンと加速するが、やっぱりフェラーリエンジンは自然吸気のほうが、甲高いフェラーリサウンドが楽しめて断然気持ちいい。つまり、288GTOを運転しても、つらいことが多い割に快楽は少ない気がする。

 結論として、「288GTOは見ているのが最高」ということになる。美少女戦士は、乗るより見るだけがいい。走る姿は「美の疾走」そのものだ。陶然。

 現在の相場は、よくわからないが数億円らしい。私は最後に「2億円くらい」と言われる段階で試乗させていただいた。ゆっくり流すだけで喉が渇いた。

第1位
フェラーリ F40

Ferrari F40|フェラーリ F40

Ferrari F40|フェラーリ F40

 288GTOとどちらが上かで少し悩んだが、こちらを1位にさせていただきました。

 カウンタックがスーパーカーの帝王なら、F40はフェラーリの皇帝だ。アレキサンダー大王である。大王はあまりにも偉大。しかも狂っているので、常人には乗りこなせない。

 運転(動かすだけでも)の大変さは、288GTOと同レベル。クラッチは激重く、ギアもハンドルも非常に手強い。しかも視界が悪い。リヤウィンドウがガラスではなく軽量な樹脂製なので、歪んでいて真後ろのクルマがヘニャッと見えて車種がわからない。つまり、パトカーかどうかがわからないのが怖い。

 加えて操縦性が、「赤い狂獣」と言われるほど獰猛だ。雨の日にはF1ドライバーでもスピンする。私はF40でツクバサーキットを走行中、最終コーナー立ち上がりでスピンの気配を感じ、息が止まった。ステアリングの手応えがふっと軽くなり、「今アクセルを1ミリ踏んでも1ミリ戻してもスピンして木っ端微塵になる!」と確信した。あの時ほど冷や汗をかいたことはない。多くのオーナーが、この操縦性の餌食となっている。

 デザインは、疾走するアレキサンダー大王である。つまりカリスマ性のカタマリで、すさまじい迫力だ。F40が走っていると、あまりの迫力に笑うしかない。そして、大谷翔平君の特大ホームランを見た時のように、目頭が熱くなる。

 F40の試乗終了後、オーナーさんにこうお願いしたことがある。「私のクルマを全開でも抜いてくれませんか」と。オーナーさんはリクエスト通り、何度も何度も私のクルマを全開で抜いてくれた。マフラーからはオレンジ色の炎が吹き出ていた。

 火を吹きながら全開加速するF40。私はあれほど美しいものを見たことがない。F40は自分で乗るより、見ているほうが何万倍も気持ちいい。それは神に額ずく瞬間だ。

 アレキサンダー大王様のお値段は、現在1億5千万円くらいと言われている。つまり3台とも、高すぎて買えるわけがない。走っている姿を見る機会も奇跡レベルだが......。

 乗るなら、私がいま乗っている328GTS(購入価格1180万円)のほうが、断然コスパが高いのではないだろうか(個人の感想です)。

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