2021年02月12日 12:40 掲載

クルマ F1テクノロジー満載! メルセデスAMG創業50周年ハイパーカー
「プロジェクトワン」の最新プロトタイプ動画が公開!

F1などのモータースポーツ車や高性能車を手がけるメルセデスAMGが、現在開発中のハイパーカー「メルセデスAMGプロジェクトワン」の最新プロトタイプの動画を2021年2月に公開した。F1譲りの1.6リットルV型6気筒ターボエンジン+4モーターを搭載する公道走行可能なハイパーカーの詳細をモータースポーツライターの大串信が紹介する。

文・大串信(モータースポーツライター)

メルセデスAMG創業50周年のハイパーカー「プロジェクトワン」

Mercedes AMG Project ONE

メルセデスAMGプロジェクトワンのテールランプ 写真:メルセデス・ベンツ

【動画】Mercedes-AMG Project ONE | After Work with Lewis Hamilton

F1チャンピオン、ハミルトンがドライブするまでのプロローグ動画

【動画】Mercedes-AMG Project ONE | Formula 1 Power

最新プロトタイプの走行動画。開始4秒のところに注目

レース専用ではないメルセデスAMGの「ハイパーカー」

 メルセデスAMGが、"プロジェクトワン"とF1ドライバー、ルイス・ハミルトンの走行動画を公開した。プロジェクトワンは、メルセデスAMGが開発中のハイパーカーで、トヨタが今年のル・マン24時間レースに「ハイパーカー」を投入すると発表したこともあって、にわかにハイパーカーが注目を浴びることとなっている。

 トヨタが開発したハイパーカーは、今年の世界耐久選手権で導入されたル・マン・ハイパーカー(LMH)車両規則に準じたものである。だが、モータースポーツの世界ではこれとは別にル・マン・デイトナ ・ハイブリッド(LMDh)車両規則もあり、同じアルファベットで略しているから、すでに混乱を招いている。そのうえ、実は「ハイパーカー」という名称は、ル・マンを闘うレーシングカーのカテゴリーを示す名称ではなく、いわゆる「スーパーカー」を超える存在全般を指すから、その定義は非常に曖昧でややこしい。

 メルセデスAMGの「ハイパーカー」となると、この車両をもってル・マン24時間レースをはじめとするWECなどの耐久レースに登場して、すでにハイパーカーレースに参戦を表明しているトヨタやポルシェと闘うつもりなのかと勘違いされるかもしれない。だがプロジェクトワンは、ダイムラーのレース・スポーツ系ブランドであるメルセデスAMGの創業50周年を記念して開発されたスペシャルスポーツカーなのだ。残念ながらLMHともLMDhとも無関係で、少なくとも現時点ではレースに参加する予定はない。

F1譲りのターボエンジン+4モーターで時速350kmオーバー

Mercedes AMG Project ONE

プロジェクトワンのリアビュー 写真:メルセデス・ベンツ

 プロジェクトワンは、メルセデスがF1グランプリで用いた技術をそのまま盛り込んだ公道走行可能な「ハイパーカー」であり、将来的には275台が生産され市販される予定だ。価格は約3億円で、生産予定の275台はすでに予約完売の状態だという。

 スポーツプロトタイプカー同様、カーボンコンポジット構造のモノコックにミッドシップレイアウトで搭載されたのはF1譲りの排気量1600cc直噴90V6気筒ターボ過給エンジン。単体で11000rpmまで回り約680PSを発揮する。このエンジンには、ブレーキで生じる熱エネルギーを回収してモーターを駆動する「MGU-K」と、ターボのコンプレッサーと同軸で発電機を回して電力を回収するMGU-Hが装備される。MGU-Hはさらに、ターボをモーターで回し過給することによってターボラグを打ち消す作用もあり、それはF1グランプリカーと同じだ。

 ただしF1の場合は回収した電力で後輪2輪を駆動するのに対し、プロジェクトワンは前輪2輪にもモーターを備えた4輪駆動となっており、この点ではF1テクノロジーを超えたメカニズムとなっている。パワーユニット全体の出力は1000hp以上で、最高速度は時速350km以上、時速0-200kmへの加速は6秒以下で走行可能だ。フロントのモーター2個(合計326hp)によるEV走行も25kmにわたって可能になっている。

 サスペンションにも特徴があり、プッシュロッドのベルクランクを左右に渡した1本のスプリングダンパーユニットでつなぎ、さらにリンクを介してもう1本のスプリングダンパーユニットをつないで、車体にロールをさせながら上下動いわゆるヒーブあるいはピッチを規制する構造になっている。ロールあるいはピッチを規制すれば走行中の姿勢変化が最小限となり、車体下面と路面の間を流れる空気を利用して生み出すダウンフォース量の変動を抑制することができる。F1グランプリカーは様々な工夫でヒーブあるいはピッチの規制をしているが、プロジェクトワンはまさに最新F1レベルのサスペンションを備えていることになる。

F1グランプリカーにない装備もある!

Mercedes AMG Project ONE

左はリアウイングを展開した状態のプロジェクトワンの後ろ姿 写真:メルセデス・ベンツ

 プロジェクトワンは、F1グランプリカーにはない機能も搭載されている。制御の詳細は不明だが、コックピット内でスイッチを入れると通常はボディと一体化している2段式リアウイングがせり上がるとともに左右フロントフェンダー上にフラップが立つ形でアウトレットダクトが開き、ボディ形状が変化するのだ。これらはサーキットでのタイムトライアルなどの際、空気抵抗が増えても前後ダウンフォースを稼ぐための仕組みであり、プロシェクトワンがサーキット走行を強く意識したクルマであることを物語っている。F1グランプリではDRS以外は走行中に作動する空力付加物が原則として禁止されているので、プロジェクトワンにはある意味F1を超えるテクノロジーが搭載されていると言える。

 プロジェクトワンの試作車は2018年に走行テストが開始され、以降は熟成作業が進められてきた。当初は2020年に予定されていた量産車のデリバリーは遅れ、2021年から納車が始まると言われている。実際、今回ハミルトンが登場した映像が公開されたところを見ると、いよいよその時期が到来したようだ。前述したように、現時点でレースに参加する予定はないとはいえ、F1テクノロジーをそのまま積み込んだ超高性能スポーツカーとして、プロジェクトワンが公道を走り始める日が待ち遠しい。

Merceds AMG Project ONE

メルセデスAMGF1マシンと並べられたハイパーカー「プロジェクトワン」 写真メルセデス・ベンツ

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