寒冷地仕様車って普通車と何が異なるの?
「寒冷地仕様車」という自動車をご存じだろうか。文字通り、降雪地など寒さが厳しい場所に合わせた装備を搭載している車両のことだ。普通仕様車のオプションにあたるこの寒冷地仕様車には、どのような特徴があるのか紹介していこう。
寒さや積雪からクルマを守る寒冷地仕様車
北海道や東北などの極寒地域では、冬の気候からクルマを守るためには特別な装備が必要だ。その特別な装備一式を備えるのが、寒冷地仕様車である。本州では普通仕様車が一般に販売されているが、寒さの厳しい北海道では寒冷地仕様が標準として販売されていることもあるという。具体的には、どのような装備の違いがあるのだろうか。メーカによって違いはあるものの、寒冷地仕様の特徴的な装備を、早速、見てみよう。
バッテリーの容量が異なる
まず、寒冷地仕様車は、寒い地域での使用が前提なので、車内を素早く暖めることが必要となる。暖房の強化はその中でも重要な点といえよう。
また、極寒の状況下であっても十分な電力の供給を可能とするために、バッテリーやオルタネーターの容量が大きい点が特徴だ。バッテリーは化学反応を起こすことで電気の充電や供給を行う。しかし、気温が低くなってバッテリー液の温度が下がると、この化学反応が鈍くなってしまう。その結果、電力供給が十分に行えなくなり、バッテリーが上がってしまう原因となる。そこで、寒冷地仕様車では、性能が落ちてもエンジンがかかるように容量を大きなものにしているという。オルタネーターも同様に十分に発電できるよう、バッテリーの容量増加にあわせた大きさで装備されることが一般的だ。
結露を防ぐためのヒーターが装備される
暖房については、エンジンの排熱を利用するメイン暖房のほかに、より速やかに車内が暖まる工夫として、リアヒーター、シートヒーターなどが追加される場合がある。さらに、車内を温める目的だけではなく、凍結防止のためにミラーヒーターやワイパーデアイサーが装備されることもある。ミラーヒーターは、その通りサイドミラーに装備されるヒーターで、ミラーの裏側に設置される熱線によって、ミラーの結露やくもりを防止するものだ。また、ワイパーデアイサーも同様に凍結防止の装備だが、こちらはフロントウインドウに熱線が設置されており、ワイパーの結露を防ぐことができる。これらの装備は、視界の悪い雪道での運転には欠かせないものだ。
冷却水の濃度が高められている
そして暖房機能において重要なのは、熱源となるエンジンである。エンジンがオーバーヒートしないように一定温度に保つための冷却水は、別名、クーラント液やラジエーター液とも呼ばれており、エチレングリコールを主成分とした特殊な液体である。普通仕様車の場合、冷却水の濃度は20~30%で、マイナス10度ほどまでに対応しており、それ以上に冷えると凍ってしまう。一方、寒冷地仕様車の場合は、この冷却水の濃度が50%まで高められており、マイナス35度程度まで耐えられるよう調整されているという。これにより、冷却水の凍結によるオーバーヒートを避けることができるのだ。
ワイパーが強化されている
そして、積雪時に重要となるのがワイパーである。凍結防止機能が付いていても、重い雪をかき分けるためには十分な強度が必要だ。そのため、寒冷地仕様車においては、ワイパーも強化されていることが多い。具体的には、ワイパーの支柱が太くなっていたり、モーターの強化、凍結でフロントガラスに張り付かないための熱線装備などがある。また、降雪地に撒布される融雪剤の塩化ナトリウムによる錆から守るため、車体により機能の高い防錆加工を施している場合もあるという。
このように寒冷地仕様車は、寒冷地に特化した装備を備える分、普通車よりも価格が高くなるのが一般的だ。ただ、寒冷地での利用が多いユーザーであれば、安全面を含めてメリットは大きいので積極的に検討したいものである。なお、寒冷地仕様車の具体的な内容はメーカーにより異なり、ここまでに説明した内容がすべて装備されているわけではない。購入時等には注意して検討しよう。