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ライフスタイル最終更新日:2023.07.05 公開日:2022.08.20

【フリフリ人生相談】第390話「美容疲れ? ケアやメイクがしんどい」

登場人物たちは、いいかげんな人間ばかり。そんな彼らに、仕事のこと人生のこと、愛のこと恋のこと、あれこれ相談を続けてきた「フリフリ人生相談」もいよいよシーズン5。 人生の達人じゃない彼らの答えを聞いていると、こちらがどこか達人になった気がするから、あら不思議。きっと人生の悩みごとって、そういうものかもしれません。馬鹿馬鹿しい意見を聞いていると、未来がちょっぴり明るく思えてくる。そんな気持ちで、さて、今回のお悩みは? 「美容疲れ? ケアやメイクがしんどくなった」 そんな問題に答えるのは、リッチ&ビューティの由佳理です!

松尾伸彌(ストーリーテラー)

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美しさには、お金がかかる?

【フリフリ人生相談】第390話

画=Ayano

「フリフリ人生相談」シーズン5。ひとりずつ相談相手をめぐっています。5人めの登場は、由佳理です。

山田一郎と離婚して髙橋純一と結婚! なんて大騒動のときには、彼女はまだ20代。若々しくてまぶしいくらいだったのですが、いまや娘も小学生、それなりの落ち着きも出てきました。

っていうより、なんだかやたら磨かれてる感じで、埼玉の青年実業家と呼ばれる髙橋純一と結婚してよかったね、って思っているのは私だけではないはずです。

きょうも丸の内にある高級ホテルのラウンジでティータイム。エステだかヘアメイクだかの帰りだそうです。まったくもって、いいご身分ってやつですね。

「花子ちゃんは元気なの?」と、思わず娘のことを聞いてしまう私です。娘のことを持ち出さないと、あらぬ方向に話がいってしまいそうで困る、なぁんて思っているのは私だけではない……かな?

「元気ですよ。最近はドッジボールばっかり」
「ドッジボール?」
「そうなんですよ。学校で部活みたいなのがあって、よく地区大会っていうか、試合もあるんです。月に1回くらい、いろんなところ……市民体育館とかで試合があって、応援に行かされてます」
「ふーん」
いやまったく、ふーんとしか言えないですよね。ドッジボール……、小学校のときにやった記憶がありますが、いまでも、そういうの、やってるんですね。

「ところで……フリフリ人生相談なんだけど、シーズン5になって、ひとりずつ聞いてまわってるんだよ」
「みたいですね」
「でね、由佳理ちゃんには、こんな質問がきたんだ。名指しだよ。かわいくてお金持ちの、由佳理さんへの相談です……」

「え、なに、それ」
「由佳理ちゃんのファンかもしれない」
「そんなわけないでしょ。かわいくてお金持ちって……いやな感じ」と、頬をふくらませる由佳理ですが、そこは見ないふりをして、相談の続きです。

「私は34歳です。コスメの新商品をはじめ、エステなどにも行って、それなりに気をつかっています。ネットで情報を検索したり……。でも、このところ、ちょっと疲れている自分を感じます。美容疲れ、ですかね。これって、なんなのでしょうか。きれいでいたいという気持ちがバテそうで、気が滅入ります。なにかいいアドバイスをください」

由佳理は、スマホを持つ私の手もとをじっと見つめて、それから私の顔をまっすぐに見て、少しだけ首をかしげました。

「美容疲れ……」と、ひとこと言って、また首をかしげます。

キリがないので、疲れる。ハマりすぎないことも大切。

「由佳理ちゃんの場合は……」と、言葉に迷いながら質問しようとするのですが、ほとんどなにも浮かびません。コスメとか美容とか、私には興味ない、というか、よくわからない世界なのです。

「きょうもあれでしょ、エステに行った帰りなんでしょ。いろいろと、そういうのをやってるわけだよね」
「…………」
「そういう体験をもとに話してもらってもいいんだけど」
「っていうか……」
ようやく、という感じで由佳理が話しだしたので、あわてて黙る私です。

「そういう気持ちは、わりとみんなあるんじゃないですかね。テレビでも雑誌でも、ネットでも、いっぱい情報があるし、どこのブランドからこういうのが出た、とか、今年の美白はこういうところがすごい、とか、追いかけはじめると、ほんと、わけがわからなくちゃっいますよ。いいと思って高級品を買うと、もったいなくて使えない、とか」
「へえ、きみでもそんなこと気にするの?」
「しますよ。キリがないんですよ、ほんとに。だから、手頃なものを買ってジャブジャブ使うほうがいい、なんてこともネットに書いてあったり……」
「ふーん」
「だから、疲れちゃうっていうのは、ほんとにわかります」
「ふーん」って言うしかない私。

「だから、疲れちゃってるなら、いったん休憩するっていうのも、大切じゃないかな」

そう言ったあとで、由佳理はティーカップを両手で持って、なにやら考えながらくちもとに運びます。ほんとに優雅に年齢を重ねている感じです。大宮に帰るのも、たぶん、迎えのクルマがくるはずで……結局のところ、お金があればなんでも好きにできて、美しさを保てるんだろうなぁ、と、身も蓋もないことを考えてしまいます。

「ドッジボール仲間のママさんで、いつもノーメイクで、髪もぜんぜんケアしてませんって感じの人、いるんですよ」
「…………」
「洋服も、ほんとに、ふつうの……」
「いるよね、そういうのに気をつかわない人」
「でも、いい感じなんです。自然体で」
「ナチュラルビューティっやつ?」
「ああいうのは、ちょっと憧れますね。私なんか、ぜんぜんダメだなぁって……」
「いやいや、それは、まったく方向が違うっていうか」
苦笑する私に、由佳理は微笑みながら言いました。

「それで、私、その人をマネて、メイクとかやめてみようと思ったことがあるんですよ」
「そうなの?」

そもそも、目的はなんだろう?

銀座でエステやってブランドものの洋服を着こなすのも、ノーメイクで自然体でオーガニックの服も、いいです、どっちでも。由佳理を眺めながら勝手な想像をしつつ、こういう人ならなにをやっても似合うんだろうなと思って、そこで思考は止まっちゃうわけです。

「娘も遊びたい盛りだったし、外で走りまわったりするのに、メイクとか気にしないのは悪くないんです」
「…………」
「でも、やっぱり、日焼けとかするじゃないですか、そうすると、素肌をきれいに保つのは大変だって身に染みたりするんです」
「…………」
「ノーメイクでいるっていうのも、実は大変なんですよ。よっぽど覚悟とかないと……。なので、今回のお悩みの人にアドバイスするなら、一度、ばっさりとやめてみればいいんですよ。あれこれ買ったり使ったりしてるうちに、わけがわからなくなるってこともあるから、いったんやめちゃう。お肌と、それから、心を休めるのがいいと思うんです」
「ノーメイクでいろってこと?」
「そう。覚悟を決めて。ノーメイクでいるのは、ほんとに勇気がいるし、もちろん、ラクチンなところもあるんです。そのうち、結局のところ、お化粧がどうのっていうより、実は笑顔って大切だなって思えたりするんですよ。ドッジボールのママさんも、スッピンですてきっていうことは、すごく性格がすてきなんですよね、きっとね。それと……やっぱり……」

なにかを思いついたような由佳理の表情を眺めながら、私は言葉を誘うように、ゆるく問いかけます。

「とにかく、いったん、原点に立ち返るってことかなぁ」

由佳理は、おだやかに笑いました。
「そうですね。あと、やっぱり、大切なのは……」
と、言葉を切って、私の視線をやわらかく受け止めます。
「誰のために、きれいになりたいか、っていうのも……大切じゃないですか」
「誰のため?」
「そう、旦那さんのため、とか……」

ふいにMr.オクレの顔が浮かびます。そう、由佳理の夫である高橋純一は、お笑いタレントにそっくりなのです。

「旦那のためねぇ……」
私は思わずため息のように言ってました。
「あとは、いまでも私のこと、きれいだ、かわいい、って、ずっと言ってるくれる人、とか」
そうやって、いたずらっぽく私を見つめる由佳理なのですが、その相手を想像して、私は、ただ絶句するしかないわけです。

由佳理の元夫は、山田一郎。
いまでも仲よく食事に行くようです。
そして、いまの夫は髙橋純一。

誰のために美しくなるか、それも大切、と、由佳理は言い……。

Mr.オクレと山田一郎を思い浮かべ、私は、とたんに居心地が悪くなって、ぼんやりとカフェテラスの天井を見あげて、すごいシャンデリアだなぁ、と、いまさらのようにつぶやくしかないのでした。


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