【運転疲れのストレッチ】「肩」がラクになる理学療法士のオガトレ①
記事提供元/カエライフ
クルマで遠くに出かけるのは楽しいですが、長距離の運転はココロもカラダも緊張ぎみ。気づくとあちこちが凝りかたまってしまうこと、ありませんか?
そこで、YouTubeのストレッチ動画「オガトレ」チャンネルが大人気の尾形 竜之介さんに、運転で疲れが出やすい「肩」「腰」「首」の3つの部位ごとに、疲れを解消するストレッチを全3回にわたって教えていただきます。尾形さんは理学療法士の資格をもっていて、信頼度も抜群です!
教えてもらうのは私、キャンプが大好きなママライター内舘 綾子。ペーパードライバー歴が長く、たまに運転するとカラダが緊張しっぱなしなので期待大です!
今回は「肩」の疲れを解消するため、次の3つをご紹介していきます。
- 「運転席で座ったままできる」ストレッチ
- 「クルマから出てすぐできる」ストレッチ
- 「仕上げ」にやっておきたいエクササイズ
では、尾形さん、よろしくお願いいたします!
ストレッチ系YouTube「オガトレ」尾形 竜之介さん
理学療法士として病院勤務やトレーナー活動をしながら、2019年にストレッチ系YouTube「オガトレ」チャンネルを開設し、2020年に独立。チャンネル登録者数51万人(2020年7月現在)。ストレッチ動画200本以上を配信するYouTuber。「カラダのかたい人を0(ゼロ)にする」がモットー。会員制サロン「オガトレ塾」開設。近著『オガトレの 超・超・超かたい体が柔らかくなる30秒ストレッチ』(ダイヤモンド社)。Twitterでは「#オガトレ部 #オガトレ」で投稿するフォロワーとの交流も。
Twitter @ogaryu___
【しくみ解説】「肩」の運転疲れは「背中」と「胸」をストレッチする
いきなりですが問題です! 運転中に肩が疲れやすくなる、もっとも大きな原因は、次の3つのうちのどれだと思いますか?
- ハンドルを持つ手に力が入っている
- 肩が緊張している
- 姿勢が悪い
答えは…3.の「姿勢が悪い」です。とくに「猫背(巻き肩とも)」の状態が肩こりの大きな原因になっています。
運転中は前方に注意を払うため、自然と頭が大きく前に出がち。すると背中が丸くなり、肩も前に出てしまうので「猫背」の姿勢になりやすいんです。ちなみにこれは「スマホ首」ともいわれるストレートネックの人にも当てはまります。
そして尾形さんによると、「肩こり」の原因となっている「猫背」解消には、「背中」と「胸」の部位をストレッチするのがおすすめなんだとか! 「猫背」の姿勢を続けていると「背中」の筋肉がかたくなり、肩のまわりにある肩甲骨(けんこうこつ)の動きが悪くなり、「背中」の反対側にある「胸」の筋肉も萎縮してかたくなってしまうからです。
◆オガトレ流ポイント
肩が疲れや痛みを感じるなら、肩をマッサージすれば、すぐに気持ちよさを感じられます。でもそれって実は一時的なものなんです。また翌日、翌々日になれば、すぐにまた同じ疲れや痛みを感じるようになってしまいます。
僕は理学療法士なので、一時的な「対処療法」ではなく、根本的な疲れや痛みの原因を知って予防する「原因(予防)療法」が大切だと思っています。できれば毎日、正しいストレッチで筋肉を伸ばしていけば、疲れや痛みを最小限に抑えることができますよ。
確かに「肩が疲れていたら、肩をストレッチすればいい」と思い込んでいたので、意外なアドバイスです!
また、ストレッチをするときは大きな筋肉から伸ばしていくと効率がいいので、「背中」→「胸」の順番でストレッチをするといいそうです。
【基本】オガトレ流ストレッチで守りたいこと
では、ストレッチを教えてもらうまえに、オガトレ流ストレッチを効果的に行うための「基本」を押さえておきましょう!
◆オガトレ流ストレッチの基本
- じっくり30秒をキープ
筋肉は10秒で伸びはじめ、30秒かけるとしっかり伸びきります。30秒以上のストレッチは筋肉痛になる人もいるので、30秒以内を目安に行いましょう。 - リラックス&深呼吸
息を止めてストレッチをすると筋肉が伸びきりません。リラックスして、ゆっくり深呼吸しながらストレッチをすることで、筋肉がゆるみやすくなります。とくに息を吐くときに筋肉がゆるみます。 - 伸ばしている筋肉をイメージする
ストレッチをしながら、どこの筋肉が伸びているかをイメージすることで、さらに伸ばすことができます。各ストレッチでは、伸ばす筋肉の場所も紹介するのでチェックしてみてください。 - 伸ばす強さは「痛気持ちいい」がベスト
かたまった筋肉を伸ばすときの強さは、痛くない状態を「レベル0」、痛い状態を「レベル10」とすると、「レベル6」あたりの「痛気持ちいい」くらいの強さがベストです。
※妊娠初期、低血圧、腎臓・心臓などに持病をお持ちの方、現在通院している方などがストレッチやセルフマッサージを行う場合はかかりつけ医に相談のうえ、行ってください。
【実践1】運転席に座ったままできる「背中」のストレッチ
1つ目に紹介するのは、運転席に座ったままでできる「背中」のストレッチです。ストレッチは、必ず安全な場所に停車した状態で行いましょう!
背中の「菱形筋」という筋肉が伸びればOK!
このストレッチでは、背中の肩甲骨(けんこうこつ)の内側にある「菱形筋(りょうけいきん)」という筋肉をストレッチすることで、体幹を安定させて姿勢を改善していきます。さらに背中のいちばん表層にある「僧帽筋(そうぼうきん)」という大きな筋肉にもアプローチします。
では、「肩」の疲れを解消するオガトレ流のストレッチをご紹介していきます。運転席のハンドルを活用して、効率的に筋肉を伸ばしていきますよ!
①ひじを軽く曲げ、ハンドルを握る
両手はハンドルの上のあたりを握ります。ひじが伸びきって軽く曲げられないようであれば、運転席のシートを少し前へ出しましょう。足はだらんとリラックスした状態でOK。
②胸を後ろにグーッと引いて背中を丸め、30秒キープ
わきの下に握りこぶしが1つ入るくらい開けます。ひじは軽く曲げたまま、腕で卵のような楕円形を作るようにイメージしながら(下写真)、胸を後ろにグーッと引いて30秒キープします。
ひじが正しく曲がっていて卵のような楕円形になっていればOK!
こちらは腕をピンとのばしている悪い例。
◆オガトレ流ポイント
上写真のように、腕のひじがまっすぐになっていると、ストレッチしたい背中の筋肉が伸びきらず、効果が半減してしまうので注意して! 背中を丸めながら後ろに引っぱるときに、おへそのあたりをのぞき込むようにするとうまくいきますよ。
私、ライター内舘も実際にストレッチをやってみました。ひじを曲げるかまっすぐに伸ばすかで、ストレッチできる筋肉が変わってくるなんて驚きです!
最初は「運転席は狭くてストレッチしづらいのでは…?」と思っていましたが、ハンドルを活用することで、効率的に筋肉を伸ばすことができました。
また、背中を丸めるのが意外と難しかったのですが、尾形さんのアドバイス通り、目線をおへそのあたりをのぞき込むようにすることで、ギューッと背中の筋肉が伸びていき「痛気持ちよさ」を実感!
【実践2】クルマから出てすぐできる「胸」のストレッチ
2つ目は、クルマから降りて、クルマのドアや車体を活用して行う「胸」のストレッチです。
胸の「大胸筋」という筋肉が伸びればOK!
このストレッチでは「胸」の大きな筋肉である「大胸筋(だいきょうきん)」を伸ばしていきます。さらに腕の力こぶの部分「上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)」も伸ばしていきます。
①手を胸のあたりに添え、腕を伸ばしてドアに手を置く
足は肩幅に開きます。反対側の手は胸のあたりに添えます。手を置く場所は腕が肩の高さより少し上になるようにします。クルマのドアが開けられない状況ならば、車体に手をかけてもいいでしょう。
◆オガトレ流ポイント
ちょっとしたことですが胸に手を添えることで、今回ストレッチしたい「大胸筋(だいきょうきん)」を的確に伸ばすことができます。
②ゆっくりと上半身を前に倒し、30秒キープ
上半身を「痛気持ちいい」と感じる角度まで倒したら、30秒キープします。
上写真の場合、左の「大胸筋(だいきょうきん)」と「上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)」の筋肉が伸びていればOKです! これを左右30秒ずつ行います。
ちなみに、どのくらいの角度まで倒しているか、横から見てみると…
尾形さんのカラダのやわらかさには驚愕!
さらに、カラダがかたいことで自信がある(!?)カエライフ編集の男性スタッフと比べてみると…
このように、カラダがかたい人は上半身をあまり前に倒せず、尾形さんと同じようにいかないこともありますが、人それぞれでOK! 無理はしないで、自分で「痛気持ちいい」と感じる角度で行いましょう。
◆オガトレ流ポイント
腕のひじを曲げずにしっかりと「肩を入れ込む」こと。手をかけるドアの位置が高いほど、負荷がさらにかかります。手を置く場所が肩より低いところしかない場合、ひざを曲げて行うとうまく伸ばせます。
私、ライター内舘もやってみましたが、「肩を入れ込む」というのがイマイチわからない…。尾形さんにアドバイスを求めると、
上写真のように、両足を大きく開いてひざに手を当て、肩を前に出すように内側にひねったときの感覚だそうです。なるほど、なんとなくわかった気がします!
改めてストレッチをしてみると、「猫背」で縮こまっていた胸の筋肉(大胸筋)が、しっかりと伸びて「効いてる〜!」と実感。左右30秒行うだけで、肩のまわりがスッキリしました!
【実践3】ストレッチの仕上げ「肩」のエクササイズ
3つ目の最後に紹介するのは、ストレッチではなく簡単な「肩」まわりのエクササイズです。
実はストレッチでほぐした筋肉は、仕上げにしっかり動かしてあげることが大切! なぜなら筋肉はストレッチしただけだと、またすぐ元に戻ってしまいますが、筋肉をストレッチをしたあとに動かすことで、元の悪い姿勢に戻りにくくなるんです。
背中の「僧帽筋」「菱形筋」という筋肉が動けばOK!
ここで紹介するエクササイズは「両腕の上げ下げ」です。上げたときは「僧帽筋(そうぼうきん)」、下げたときは「菱形筋(りょうけいきん)」に力が入ります。しっかりと筋肉が動かせているか、意識して行いましょう。
①両腕をまっすぐ上に伸ばす
足を肩幅に開き、ゆっくりと息を細く吸いながら両手を上げてバンザイをします。座ったまま行ってもOKです。
②手の平を外側に向け、胸を張ってゆっくりひじを下げる。10回繰り返す
手の平を外側に向けて、ふぅ〜と細く息を吐きながら、ゆっくりとひじを下げて「W」の形になるところで止めます。このとき、胸は大きく開くように張って、ひじはできるだけ後ろに引きましょう。両手が耳のうしろを通るようにイメージするといいでしょう。これを10回繰り返します。
手の平の向きと胸の張りの具合をわかりやすくするため、もう少し斜めから見るとこんな感じ。
◆オガトレ流ポイント
ちょっとしたことですが、腕を下ろしていくときは手の平の向きをできるだけ外側に向けるように意識しましょう。背中の筋肉をしっかりと動かすことができます。
確かに、手の平の向きを外側にして、胸を前に張り出しながら腕を下げていくと、背中の筋肉がググーッと閉まる感じが、格段にアップします!
ストレッチをした仕上げに、伸ばした筋肉を意識して動かすと「カラダのやわらかさが維持できる」というのは初耳…。やるほどに心地よく、新たな発見でした。
【まとめ】オガトレ流のストレッチを習慣づけよう!
いかがでしたか? オガトレ流の運転疲れがラクになるストレッチ。今回は「肩」の部位について教えていただきました。
尾形さんのストレッチは、誰でも簡単にトライできるのがポイント! さらに理学療法士ならではの解説をふまえて実践することで、よりカラダのしくみを理解でき、効果を感じやすいと思いました。
ストレッチはマッサージのように一瞬の気持ちよさとは違って、続けて行うことで痛みを最小限におさえて予防することができます。疲れを少しでも感じている人は、クルマを運転する前後のルーティーンとして、取り入れてみてはいかがでしょうか。
次回は、運転で疲れた「腰」がラクになるストレッチをご紹介します。どうぞお楽しみに!
ライター 内舘 綾子
東京都生まれ。Instagramをきっかけにキャンプメディアのライターを始める。キャンプ好きの父親の影響で子どものころからキャンプに親しむ。1歳と5歳の2児の母となった現在も、週末は家族でキャンプへ行くママキャンパー。Instagram @___a.y.a.k0uchi__
取材・文/内舘 綾子
撮影/矢野 宗利
イラスト/あかね大佐(オガトレ)
※この記事は、カエライフに2020年7月16日に掲載されたものです。