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最終更新日:2018.11.16 公開日:2018.11.16

無電柱化の日に、無電柱化を考える

11月10日は無電柱化の日。東京お台場で、無電柱化のイベントが開催された。知らないことばかりで、とても衝撃的であった。その様子をレポートしよう。

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「ムデンチュウカ」という言葉を聞いたことはあるだろうか? PCで変換してみたら、務田中華となった。務田は、JR四国の予土線にある駅名だそうだ。務田の中華屋さん。それでいいのか?

 そうでは決してない。実は、ムデンチュウカとは法律にも記載されている、我々の国民生活に直結する重要用語であったのだ。その法律は平成28年に制定された。第一条を引用しよう。


(目的)
第一条 この法律は、災害の防止、安全かつ円滑な交通の確保、良好な景観の形成等を図るため、ムデンチュウカ(中略)の推進に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにし、並びにムデンチュウカの推進に関する計画の策定その他の必要な事項を定めることにより、ムデンチュウカの推進に関する施策を総合的、計画的かつ迅速に推進し、もって公共の福祉の確保並びに国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。


 ・・・長い。第一条は、1文である。「。」がない。なので、引用ではなく、第一条の全文を紹介したこととなった。ただし、(中略)の部分には答えが書いてあるので、略させていただいた。

 さて、文中の「ムデンチュウカ」はどのように変換すべきか。中華料理とかイタリアンとか、そういう話はしていなかったのである。無電柱化、である。

 そして、同じ法律の第十条を、ぜひともご紹介したい。


(無電柱化の日)
第十条 国民の間に広く無電柱化の重要性についての理解と関心を深めるようにするため、無電柱化の日を設ける。
2 無電柱化の日は、十一月十日とする。
3 国及び地方公共団体は、無電柱化の日には、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとする。


 何と画期的な第十条であろうか。興味深い事実がたくさん記載されている。まず、法によって、無電柱化の日が定められていることだ。別記事「11月11日は記念日が多い日!? 」によると、「記念日とは一般社団法人・日本記念日協会のWebサイトの「記念日登録申請書」に必要事項を書いて申込み審査が通れば記念日として認定される。」とあるが、無電柱化の日は、一般社団法人が決めたのではない。法によって定められている、まさに超法規的措置ではない、立法的措置によって定められている。これは、将来的には、祝日法によって、国民の休日になることを見据えているのではないか。敬老の日や勤労感謝の日と同様に、無電柱化の日として、その実現を祈り、休む。それを示唆しているように思えてくる。

 次に興味深いのは、無電柱化の日とは、11月10日であることだ。先ほどの記事 にもあるとおり、記念日は10月10日か、11月11日に集中しているという。確かにそうだ。数字の並びの良さから、何かしらの記念日としたくなる。ところが、法律は11月10日を無電柱化の日とした。なぜなのか。

 そして最後の第3項。無電柱化の日には、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めているという。本当か。調べてみたら本当だった。なんとお台場で、無電柱化展をやっているという。これは行くしかない。すべての謎が、ここで解明されるだろう。

 「みんなで考えよう なるほど納得! 無電柱化inお台場」(以下、無電柱化展)がアクアシティお台場というなんとなくおしゃれなところで開催されていた。さあ、ここからがこの記事の本番である。

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無電柱化はエキサイティングだった

日本に電柱は何本ありますか?

 アクアシティお台場は、ゆりかもめで行くのが便利だ。お台場海浜公園で降りると、デックスは近いけど、アクアシティは少し歩く。お台場慣れしている人なら、一つ先の台場駅で降りる。この日はとても天気で、ペデストリアンデッキからはレインボーブリッジやお台場の海やら、自由の女神像が見えた。若い男女や若くない男女や、家族連れとかがいて、とても楽しそうである。今日が無電柱化の日であることを、知っているのだろうか。

 さて、無電柱化展の会場である。まずは無電柱化クイズラリー。全4問だったか5問だったか、クイズに答えていくとガラポンが一回できる。出題パネルの裏には、ヒントパネル(というか答えパネル)があり、それを見れば誰でも答えが書ける。ガラポンコーナーの人も答え合わせなどしない。無電柱化のことを考えてくれる時間を過ごしてくれればいいのさ、ということなのである。

 ただし、そのクイズ、なかなか興味深い。たとえば。

日本に立っている電柱の本数は、桜の木の本数と同じ。

 これは知らなかった。朝礼のネタに使えそうである。4月初旬、日本から桜が一本もなくなっても、電柱の下に集えば壮大な宴会ができるということでもある。

第2問。無電柱化の日はいつでしょう?

 その解説パネルを見て、はっと目をみはった。

3本の電柱をゼロにする。だから無電柱化の日なのか!

 これはまるで思いつかなかった。これが法律になっているということは、官僚や国会議員は、本気でこのことを真剣に考えていたということである。国会で闊達な議論がなされたということである。日本のエリートのユーモアも捨てたものではない、と思った。

 それ以外のクイズは忘れてしまったが、ガラポンでは見事に外れ。参加賞のうまい棒をもらった。

無電柱化のうまい棒である。

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まさに劇的!before/afterのパネル展示

before/afterで考える無電柱化の意義

 続いてのコーナーは、無電柱化before/afterのパネル展示である。無電柱化前はこうですよ、無電柱化後はこうなりましたよ、というパネルの展示。これが面白かった。何点か紹介しよう。

埼玉県 所沢市 市道ハナミズキ通り

 地域住民様には怒られてしまいそうだが、所沢市って何となくごちゃごちゃしているなぁというイメージが私にはある。それだけに、この写真のスッキリ感は素晴らしい。無電柱化する際に、電線を地下に埋設するものだから、埋めるときについでに歩道はきれいになり、自転車レーンは整備され、安全安心な街中になった。

鳥取県 鳥取市 市道智頭街道

 智頭と言えば、智頭宿で有名だし、智頭街道にはすごい美人のヘルパーさんがいるとJAF Mate誌で紹介されたこともあった(2014年5月号9ページ)。 afterは開けていて、走っていても気持ちよさそうである。街路樹も一緒に埋設してしまったのだろうか。

北海道 小平町 国道232号道の駅おびら鰊番屋前

 北海道小平町。確かに電柱がないほうがすっきりしているが、もともと広大な大地と伸びやかな青空のため、まあどっちでもいっか、と思ってしまった。

静岡県 富士市 市道本市場大淵線

 無電柱化によって景観が改善する、というのはこういうことですよ、というお手本のような写真である。afterの富士は本当に美しい。冠雪の具合といい、青空に対する映え方といい、実に素晴らしい写真である。対して、左の写真は、少しかすんでいて、夏山なので冠雪もなく、寂しい富士である。

 という、そもそもの写真のクオリティに差がありすぎるが、afterの写真に電線があったら台無しである、ということも容易に想像できよう。 と、こんな風に、無電柱化のbefore/afterを見せてくれると、とても分かりやすい。

 さらに、無電柱化のメリットとして、こんなパネルが掲げられていた。

 まさにこの3つを改善するために、無電柱化を推進する必要がある、というのだ。納得である。

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無電柱化は僕たちの問題だ

無電柱化はいいことかもしれない

 我々は交通安全を推進する立場から、2番目の「安心して歩けない」はよく分かる。今朝も、こんな風景に出くわした。

 左の歩道のように見えるのは、歩道ではなくマンションの敷地である。なので、道路の白線は車道外側線ではなく路側帯。一般道における路側帯は歩道と同じなので、ここを歩く歩行者は保護されねばならない。しかし電柱がその道を遮る。まして、この電柱は、電柱自身が渡らんとするばかりに、横断歩道の真ん中にでんと構えている。これ、無電柱化してくれたらなぁ、と思うのである。

 これも、今朝歩きながら撮った。ぶれててごめんなさい。でも、ぶれたおかげで、ナンバープレートを修正しなくてよくなった。そして、この電柱があるおかげで、この車のオーナー様は、とても慎重に車庫入れをせねばなるまい。

 そして、国土交通省のウェブサイトで、すごい写真を見つけた。

(国土交通省東京国道事務所ウェブサイトの写真を一部加工)

 つい先日の、台風21号による電柱倒壊の写真である。大阪府泉南市だ。台風によって、なぎ倒された電柱。これによって救援物資も救助車両も被災地の核心に向かえなかい、ということもあっただろう。衝撃的な写真である。無電柱化を推進することは国民の福祉に資する。法に謳われている通りであることがよく分かるだろう。

 ただし、その費用をだれが負担するのか。法の付則によると、国・市町村・関係事業者の適切な役割分担に応じた負担を、ということが書いてある。それが、電気代やネットインフラ費用に跳ね返ることもあるだろう。でも、その負担からも目をそらさず、無電柱化の是非を考えることはよいことである。

 くしくも、国の思惑通り、無電柱化について思慮を深められた一日だった。

 と会場を後にしようとしたとき、家族連れの会話が聞こえてきた。 「○Xちゃん、電柱が無くなったらどんなことがあるかなぁ?」

 冒頭のクイズラリーの解答用紙の最後に、そんなフリーワード欄が確かにあった。

「犬がおしっこできない!」と即答した男の子。大丈夫だよ。きっと無電柱化したあとも、犬はきっと、したいところでおしっこをするさ。

2018年11月16日(JAFメディアワークスITメディア部・濱崎 暢)

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