マンガ家・赤塚不二夫
“シェー!”ポーズの赤塚不二夫。若い頃はとってもハンサム!
『天才バカボン』『もーれつア太郎』『おそ松くん』『ひみつのアッコちゃん』など、たくさんのヒット作を世に送り、昭和から平成にかけてのマンガ界をリードした”ギャグマンガの王様”、赤塚不二夫。バカボンやアッコちゃんなどの主人公はもちろん、ウナギイヌ、ニャロメ、イヤミ、チビ太、バカボンのパパ、ケムンパスなど、今も多くの人に愛され続ける名キャラクターも、たくさん生み出しました。 昭和39(1964)年には、イヤミの”シェー!”が大流行。日本中の子供が記念撮影でこのポーズをし、浩宮さまや、来日したジョン・レノン、ゴジラまで、”シェー!”姿を披露したのです。
生誕80周年にあたる昨年は、東大での「バカ田大学」をはじめとするイベントや、テレビアニメ『おそ松さん』人気で大いに盛り上がりましたが、常時、氏の人生と作品に触れることができるのが「青梅赤塚不二夫会館」です。
赤塚は旧満州の生まれ。日本に引き揚げてからは、奈良や新潟での生活を経て、マンガ家を目指して上京しましたが、住んでいたのは都内中心部。郊外の青梅とは縁もゆかりもありません。なぜ青梅に赤塚不二夫会館? 横川秀利館長が、その疑問に答えてくれました。
「年々さびしくなる商店街を活性化しようと考えたのが、懐かしい映画の看板を掲げた『昭和の町』。空き家になっていた元病院の建物を使って、昭和の元気の象徴である赤塚さんの世界を紹介できないか、とお願いしたのがきっかけです」
応対してくれた、今は亡き眞知子夫人が、「赤塚のマンガが商店街の役に立つのなら」と二つ返事で快諾してくれ、平成15(2003)年秋にオープンすることになったのだそうです。
入口は、バカボンのパパの口!
おフランス帰りのイヤミの「イヤミなレッスン」。おかしい!
バカボンのパパが描かれた入口を入ると、赤塚不二夫自身やイヤミが”シェー!”姿でお出迎え。”シェー!”にまつわる年表もあり、当時を知る人なら懐かしさでいっぱいに。 その後も、次々に人気キャラクターが登場し、2階には、トキワ荘時代の部屋をイメージしたコーナーや、たくさんの原稿や作品、テレビ映像、プライベート写真などを展示。つらさやさびしさも経験した少年時代、貧しいながらも夢を抱いて努力を重ねた修業時代、売れっ子になった全盛期、テレビやマスコミでも華々しく活躍した時代など、赤塚の人生の変遷も知ることができます。
奥にあるのは、赤塚の愛猫・菊千代が祀られた「バカ田神社」。
トキワ荘での修業時代をイメージした部屋。
ヒット作の原稿も多数見ることができる。美しい!
著名人といっしょに写ったプライベート写真もたくさん。
出版されたマンガ本をはじめ、関連グッズなどを集めたコーナー。
晩年は特にハチャメチャな印象の赤塚ですが、原稿を見ると、線や色の美しさ、キャラクターのかわいさに魅了されます。子供の頃に親しんだ赤塚マンガを、もう一度大人の目で読み返してみたくなりました。
「闘病中で一度も来館していただくことはできませんでしたが、弱い商店街を救ってくれた。絵を見ても、実は真面目で温かく、やさしい方だったのではないかと思います」(横川館長)
お金がないので、病院の建物をほぼそのまま生かし、みんなで手作りしたという館内の雰囲気も、どこか温かくて、赤塚の世界にぴったりマッチ。
1階にあるおみやげ売り場も充実。オリジナルグッズも。
すぐ近くには、昭和の時代に消費された、菓子・飲料・雑貨・文具・くすりなどの包装物資料を一堂に展示する「昭和レトロ商品博物館」と、墨絵作家・有田ひろみ氏とぬいぐるみ作家・有田ちゃぼ氏のユニット「Q工房」による猫の世界が広がる「昭和幻燈館」もあります。
昭和レトロ商品博物館(上)と、昭和幻燈館。どちらも趣ある建物。
昭和を感じさせる青梅の町並み。看板にも赤塚キャラクターが。
「都心から車で1時間ほどの青梅は、何もないけどホッとできる町。”東京の薬局”のような存在になれたらいいと思います」という横川館長の言葉どおり、元気をもらえる場所でした。
青梅赤塚不二夫会館
東京都青梅市住江町66 TEL:0428・20・0355 【開】10:00~17:00 【休】月曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始 【料】大人450円、小人250円 3館共通券(青梅赤塚不二夫会館、昭和レトロ商品博物館、昭和幻燈館)大人800円、小人450円
☆JAF会員証提示で、共通券50円引(5名まで)
撮影=村上宗一郎
©赤塚不二夫