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公開日:2026.01.27

なぜ“T”モデルはポルシェ通を唸らせるのか?──河村康彦の「ポルシェは凄い!」♯10

ポルシェ911T(901型/1970年)|Porsche 911T(Type 901/1970)

いつの時代もスポーツカーファンから一目置かれているブランドと言っていいポルシェ。ではポルシェのいったい何が凄いのか。ポルシェ愛好家のモータージャーナリスト河村康彦の連載コラム、10回目は“T”モデルをフィーチャー!

ポルシェ911T(901型/1970年)|Porsche 911T(Type 901/1970)

文=河村康彦

写真=ポルシェ

編集=細田 靖

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ドライバーに対してより純粋なスポーツカー体験を提供するモデル

初代モデルの誕生以来、60余年という時間を生き抜いてきたポルシェ911。そんなこのモデルのラインナップに現在用意されているカレラTグレードのルーツといえるのが、1968年にデビューした「911T」という存在だ。

911Tはドライバーに対してより純粋なスポーツカー体験を提供するとともに、当時のツーリングカークラス用レーシングマシンのベースとしての需要も考慮して、クロスレシオのMT(マニュアルトランスミッション)やメカニカルLSD(リミテッド・スリップ・デファレンシャル)などが与えられ、同時にパーツ材質の変更や内装の簡略化などによって軽量な廉価版としての意味合いも持たせた1台。“T”とはTouring(ツーリング)の頭文字に由来する。

ただし、そんなモデルをローンチした後のポルシェは“T”の記号を長きにわたって封印。それがカレラTという名称とともに解かれたのは911シリーズが水冷エンジンへとバトンタッチされて3世代目、いわゆるタイプ991(7代目)がマイナーチェンジを受けて後期型となった2017年のことだった。

ポルシェ911カレラT(991.2型/2017年)|Porsche 911 Carrera T(Type 991.2/2017)

ポルシェ911カレラT(991.2型/2017年)|Porsche 911 Carrera T(Type 991.2/2017)

名称も新たに蘇った“T”の記号が与えられたこのモデルは、「911ファミリーのなかにあって純粋主義を象徴する」という前出空冷時代の911Tが備えていた基本コンセプトを継承し、パワーユニットにはベーシックグレードであるカレラのそれをそのまま受け継ぎながら、可能な限り吸音材を減らし、リヤシートもオプション化。さらにリヤおよびリヤサイドのガラスもより軽量なアイテムにするなどした結果、同等装備を施したカレラより20kgのマイナスというレベルでダイエットに成功。

同時に、スポーツエキゾーストシステムやより大径で幅広のシューズ、ローダウン化を図ったサスペンションなどを標準で採用し、さらにはベースのカレラでは選択できないリヤアクスルステアリング(後輪操舵システム)をオプション設定とするなど、“走りの装備”の大幅な充実を図ったことも大きな特徴だった。

トランスミッションは7速MTと7速PDK(DCT)が設定されたものの、実は日本に導入されたのは後者のみで、駆動系ギヤ比の変更や、ブレーキを用いたベクタリング機構とメカニカルLSDを装備するなど、ダイナミックな走りを実現させる方策が抜かりなく盛り込まれていたのはMT仕様の方だっただけに、率直なところ大いに残念だったという覚えがある。

現行992.2型ではMTのみの設定でキャラクターをより明確に表現

ポルシェ911カレラT(992.2型/2024年)|現行の911カレラTは2024年10月に発表。394ps/450Nmを発揮する3.0リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンに6速MTを組み合わせ、0-100km/h加速を4.5秒(カブリオレは4.7秒)でこなす。最高速は295(カブリオレは293)km/h。

ポルシェ911カレラT(992.2型/2024年)|現行の911カレラTは2024年10月に発表。394ps/450Nmを発揮する3.0リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンに6速MTを組み合わせ、0-100km/h加速を4.5秒(カブリオレは4.7秒)でこなす。最高速は295(カブリオレは293)km/h。

けれども、後にタイプ992(8代目)へとモデルチェンジが行われると日本導入モデルにもMT仕様が設定され、これでようやく留飲が下がることにもなった。

よりローダウン化が図られた電子制御の可変減衰力ダンパーにLSDを備えたベクトリング機構を標準装備としたうえで、リヤアクスルステアリングもオプション設定とするなど“走り”の装備に拘り、さらにリヤシートや遮音材を削減し、軽量ガラスやバッテリーをリチウムイオンタイプに変更するなど、軽量化への取り組みは相変わらず。そして、このモデルが現在へと続く後期型にマイナーチェンジされると「より純粋なスポーツカー」という当初の911Tが標榜していたキャラクターはさらに強化されることになったのである。

このタイプ992後期型(992.2型)のカレラTで最大の見どころとなったのは、前期型には用意されていたPDK仕様が廃されてMT仕様のみの設定となり、そのMTもトップギヤにクルージングシーンでの燃費を稼ぐための高いレシオを割り当てた従来の7速から、より軽量化にも貢献する6速へと変更されたこと。

注目に値するのはそんなMTがかつてなく強くアピールされるようになったことで、シフトノブにウッド製のアイテム採用し、リヤサイドのウインドウにはシフトパターンが描かれたステッカーが貼られるなど、いわばMTをブランド化しようとしている姿勢が明白だ。

同時に、カレラTとしては初となるカブリオレボディが設定されたのも大きなニュース。ボディ補強が必要となり重量増は免れない一方で、オープンエアモータリングという新たなプレジャーを手に入れることが可能となるゆえに、これも“T”の記号を冠する911に相応しい1台と考えることができそうである。

こうして「ベースモデルのパワーユニットを活用しながら足まわりや軽量化に腐心することで、よりプリミティブなドライビングプレジャーを追い求める」という手法に則った“T”グレードは、911のみならず718ボクスター/ケイマンやマカンでも展開されることに。

それにしても、こうしてポルシェの持つ“引き出し”の多彩さと、それを活かした巧みなマーケティングの手腕を振り返ると、改めて舌を巻くばかりなのである。

動画=ポルシェ公式YouTubeチャンネルより

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