クラシックなドイツ車が、いま面白い。「軽井沢モーターギャザリング2025」リポート
9月初旬の軽井沢に集まったのは、時代を超えて愛されてきた世界の名車たち。「軽井沢モーターギャザリング2025 Autumn」のメイン企画として行われた「コンクール・オブ・エレガンス@軽井沢2025秋」の模様を、審査員として立ち会った筆者の視点からリポートする。
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目次
新型EVからクラシックカーまで! 軽井沢からクルマの魅力を発信
去る9月、JR軽井沢駅前に広がる巨大ショッピングモール「軽井沢プリンスショッピングプラザ(PSP)ガーデンモール 芝生のひろば」を舞台として、大規模な自動車イベント「軽井沢モーターギャザリング2025 Autumn」が開催された。
このイベントは、2022年10月に初めて開催され、以後は毎年春と秋に開催。国内外のメーカーやインポーターによる、新型車両の展示および試乗会なども行われている。
今回は、ジャガー・ランドローバーから「ディフェンダー」と「レンジローバー」の2台が出展されたほか、BMWのSUVモデルが2台。そして話題のコンパクトBEV「インスター」をはじめとするヒョンデの最新モデルも4台が勢ぞろい。また「MAGARIGAWA CLUB」として出展したコーンズ・モーターズは「ポルシェ911リマインド by シンガー DLS」を展示し、会場に詰めかけたファンを驚かせていた。
ジャガー・ランドローバー・ジャパンは、軽井沢でも大人気のディフェンダーとレンジローバーを展示
コーンズ・モーターズが展示したシンガー911DLSは、会場のポルシェファンを騒然とさせていた
国内を代表するクラシックカー専門店たちが展示した素晴らしいクルマたち
往年の名車のボディパーツを流用した「カーベキュー」は、ライフスタイルコーナーでデモ展示
人気の純喫茶「ツタヤ」は、ミニ・クーパーにトレーラーを引いて出店
さらに、国内を代表するクラシックカー/コレクターズカーのスペシャルショップ4店舗の素晴らしい商品車両たちや、関東・甲信越一円の自動車愛好家たちが持ち込んだクラシック/ヤングタイマーたちも展示。そのラインナップも国産車や輸入車問わず、あるいは年代もバラエティ豊かで、いわゆる「クラシックカー・ショー」としても十二分に見ごたえのある内容となっていた。
加えてこの会場では、アウトドアやペットライフ、ゴルフなど、軽井沢×モビリティという条件を生かしたライフスタイル提案する催しも併催。これまで回を重ねるごとに自動車ファンのみならず、軽井沢を訪れる家族連れなど多くの来場者で賑わっているというが、まだまだ成長過程にあるイベントということで毎回のように新機軸が盛り込まれ、それがまた新たなファンを喚起している。
テーマは「2000年までに生産されたドイツ車」
今年は、まず初日の土曜日に現代のスーパーカーをオーナー方々のご協力のもと初めて展示。2日目の日曜午後には「BHオークション」社とのコラボ企画として、「トヨタ・ミニエース」や「日産スカイラインGT-R(R32)」、あるいはオートモビリア(自動車周辺グッズ)などを競り合う、本格的なオークションも行われた。
そして同じく日曜日には「コンクール・オブ・エレガンス@軽井沢 2025秋(Concours of Elegance@2025 AUTUMN)」と銘打ったコンクール・デレガンスが、昨年の第1回に引き続いて開催された。
軽井沢モーターギャザリング2025のメイン企画となった「コンクール・オブ・エレガンス@軽井沢 2025秋」。昨年の「英国車」をテーマに行われた第1回に続き、一昨年のプレ開催まで合わせれば第3回となる今回は「2000年までに生産されたドイツ車」がテーマとされた。
自動車愛好家の間で「コンクール・デレガンス」と呼ばれるイベントにおいて、主役となるのはエントリー車両とオーナーたち。しかし、その次に重要な存在とされるのが「ジュリー(Jury)」と呼ばれる審査員である。
BHオークションから出品されたミニ・クーパーとトヨタ・ミニエース。ミニエースは113万円で落札された
BHオークションの競売人が、会場の顧客に入札を促す
今回は、テレビ東京系の老舗人気番組「開運なんでも鑑定団」で自動車担当の鑑定士にして、日本におけるモータージャーナリズムの重鎮としてもおなじみの中村孝仁さんをはじめ、カーライフエッセイストとして、女性目線からクルマの魅力を多角的に伝えている吉田由美さん。そしてクルマのみならず、ファッションやスポーツなどライフスタイルの分野でも第一人者として活躍する九島辰也さんなど、クラシックカーにも造詣の深いモータージャーナリスト3名がジュリー陣に名を連ねた。
加えて、軽井沢プリンスショッピングプラザ総支配人の清水務さん、軽井沢モーターギャザリングの実質的オーガナイザーである「MOTOTECA」の星野雅弘さんが参画。その末席に、長らくクラシックカー畑に身を置いてきた不肖筆者が、持ち回りの審査委員長として加わることになった。
日本のドイツ車愛好家の感度と熟度の高さを再認識
そして迎えた9月7日(日)のコンクール当日、当日朝に会場を訪れた筆者は、いきなりエントリー車両のレベルの高さに瞠目させられた。「質実剛健」あるいは「機能最優先」というイメージが強く、コンクール・デレガンスに出品されるようなクルマに求められる趣味性という点ではいささか不利かと思われがちなドイツ車ながら、実際に集まったエントリー車両のデザインや遊び心のレベルは非常に高く、実に見応えのあるものだったのだ。
1970〜80年代に一世を風靡したBMWおよびBMWアルピナ、ドイツ車の集まりでは定番の空冷ポルシェに、クラシック/ヤングタイマー双方で風格を示すメルセデス・ベンツと、ドイツ車の定番ともいえるモデルながら、その多くが希少かつオリジナル性も高く、しかも良好なコンディションに保たれている。
しかし、それだけ魅力のあるエントリー車両に対して、この日に授与できる賞典の数が決して多くはなかったことから、ジュリー陣は会場に揃った直後から悩ましい問題に直面することになる。
コンクールにエントリーした珠玉のメルセデス・ベンツたち
この日は、午前中から来場者のオンライン人気投票がスタートするかたわら、われわれジュリー陣も三々五々会場を散策し、それぞれのエントリー車両のオーナーさんたちから、愛車に関する情報や思い入れを伺うことができたのだが、そのインタビューにてエントラントと愛車との間に紡がれた心温まるストーリーをお聞きして、入賞車選びはさらに難しい課題に……。
それでも6人のジュリー陣総出で頭を悩ませつつ、第1位に「BMW3.0CSi」、審査員特別賞に「ポルシェ928S」および「BMWアルピナB7ターボ」、主催者特別賞に「BMW M1」、そしてPSP特別賞に「VWタイプ2ウェストファリア・キャンパー」をなんとか選び出したのだが、この選に漏れてしまった参加車両の中にも素晴らしいクルマがたくさんあったことを、改めて記しておきたい。
第2回コンクール・オブ・エレガンスの栄えある第1位に輝いたBMW 3.0 CSi。気超レアな正規ディーラーものである
審査員特別賞に選ばれたポルシェ928Sは、現オーナーが新車として購入して以来40年をともにした愛車
審査員特別賞に選出されたのち、観衆に見送られつつ会場をあとにするBMW アルピナ B7ターボ
PSP特別賞に選出されたVWタイプ2キャンパーは、後方にも同じウェストファリア製トレーラーを引いて参加
一般投票で「ピープルズチョイス」に選ばれたポルシェ964ターボは、現オーナーとともに37万kmを走破した相棒とのこと
さらに進化する「軽井沢モーターギャザリング」
素晴らしい個体ながら、惜しくもコンクール入賞はならなかったBMW 2002 ターボ
コンクールの終了後、夕日を浴びながら退場してゆくメルセデス・ベンツ 300TDT
ところでコンクール・デレガンスといえば、アメリカの「ペブルビーチ」やイタリアの「ヴィラ・デステ」、あるいは2007年に星野さんや筆者も主催者側として参画した伝説的イベント「東京コンクール・デレガンス」においても、クルマのデザインやオリジナル性、希少性、コンディションなどを厳密に審査することを旨としている。
でも「コンクール・オブ・エレガンス@軽井沢」は1950-60年代に欧米で行われていたようなローカルで気楽、でも軽井沢らしさも加味した、カジュアルでファッション志向の高いコンクールを目指そうとしてきた。
ところがこと今回については、まずエントリー車両そのもののレベルが予想外に高く、さらにそれぞれのオーナーさんとの間に紡がれてきた“物語”も濃厚。図らずも、厳密な意味におけるコンクール・デレガンスの本質を体現した結果となったのは、とても興味深いことであった。
なお「軽井沢モーターギャザリング」および「コンクール・オブ・エレガンス@軽井沢」自体は、来年以降も継続を期しているとの由。ただし次回以降、筆者がジュリーのメンバーに選ばれるかどうかは不確定ながら、既存のコンクール・デレガンスとはちょっと異なる選定基準をこれから構築してゆくことになるかと思われるので、今後とも応援していきたいところである。
軽井沢モーターギャザリング一般参加の部で展示されたクルマをご紹介。まずはシトロエン 2CV AZAMから。
トヨタ・コロナSL
プジョー 405 MI16
ロータス M100 エラン




