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公開日:2025.11.07

FRの軽自動車には夢が詰まってる!──ジャパンモビリティショー2025でクルマの未来を語る<前編>【吉田 匠と今尾直樹のクルマ放浪記】

モータージャーナリストの吉田 匠(左)と今尾直樹(右)が、ジャパンモビショー2025の見どころを解説します

クルマの未来に夢はあるか。ジャパンモビリティショー2025の見どころを、モータージャーナリストの吉田 匠と今尾直樹が語り合う。前編ではセンチュリー、ダイハツ、そしてレクサスのブースを巡ります。

モータージャーナリストの吉田 匠(左)と今尾直樹(右)が、ジャパンモビショー2025の見どころを解説します

語り=吉田 匠、今尾直樹、秋月新一郎

まとめ=今尾直樹

写真=塚原孝顕

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日本のセンチュリーは世界のロールスになれるか

センチュリー コンセプト|Century Concept

センチュリー コンセプト|Century Concept

──10月30日に東京ビッグサイトで始まったジャパンモビリティショー2025、略称モビショーを、自動車ジャーナリストの吉田 匠と今尾直樹、それにKURU KURA 編集部の秋月新一郎の3人で、クルマの未来に思いを馳せながら、ぶらぶら歩きまわった。まずはトヨタの最高級ブランドとして新たなスタートを切ったセンチュリーから。「ジャパン・プライド」を世界に発信するONE of ONE(唯一無二)の高級車、センチュリー初のクーペを仰ぎ見ながら、ふたりはこんな会話を交わした。

吉田 ロールス・ロイスのカリナンて、日本でいくらぐらいするんだっけ?

今尾 5000万〜6000万じゃないですか。ただ、カリナンのクーペはないですもんね、いまのところ。このクーペのかたちは、ロールスのBEVのスペクターか、そのちょっと前のレイスに似ていますね。

吉田 ロールスのクーペね。モンテカルロなんかでリッチが乗っているやつ。モナコのオテルド・パリの前なんかにいると、そういうのがバンバン来て、ちゃらっとしたおっさんとおねえさんが降りてくる。それでキーを係のひとに預けて遊びに行く。ああいうひとたちが買ってるんだな、と思う。そういう世界があるんだ。

編集部秋月(以下秋月) 大阪の万博の跡地にカジノができたら、モナコばりにこれが走るようになるかもしれないですね。

吉田 あれはモナコだからであって、大阪ではどうかな。いずれにせよ、このセンチュリーで僕の古典的な頭が理解できないのは、キャビンの小さいラグジュアリーなクーペなのに車高、つまり地上高がかなり高いところ。ロールスのレイスは乗ったことあって、あれは普通に床が低いからクーペらしいプロフィールなんだけど。センチュリーはフロアの高さがSUVを連想させるので、僕は最初にカリナンの名前を出したわけで、これはSUVのクーペなのでしょうか? そこがいまいち判らないところでした。なので、かてつのハイドロニューマティックのシトロエンみたいに車高調整式にして、乗り降りするときにはシューって車高が下がると最高だと思うんだけど、どうだろう?

スライド式ドアを採用するセンチュリー コンセプト

スライド式ドアを採用するセンチュリー コンセプト

センチュリー コンセプト|Century Concept

トヨタが新たなブランドとして立ち上げたセンチュリー。「日本から次の100年をつくる挑戦を」と豊田章男会長が宣言した

今尾 唯一無二だから、判りにくいのかも。グリルの鳳凰のマークはすごくいいと思います。

秋月 手塚プロダクションぽいです。

今尾 火の鳥だからね。叩かれても叩かれても炎のなかから復活してほしい。世界中で金持ちは増えているそうだから、成功するかも……。

FRのコペンはおいくらに?

ダイハツ・コペン コンセプト|Daihatsu K-OPEN Concept

ダイハツ・コペン コンセプト|Daihatsu K-OPEN Concept

──トヨタのブースはひとが多かったこともあってさらっと見ながら通過し、ダイハツ・ブースのK-OPEN(コペン)の前で吉田さんが足を止めた。ステージの上にシルバーグレーの、フロント・エンジン/後輪駆動、通称FRと思しきコンセプトカーが、手前に赤と黒の、2026年8月末の生産終了を公表している現行コペンの改造車が置いてある。現行コペンはフロントのボンネットが開けてあって、覗くと下のほうに小さなエンジンが見えた。ハイゼットの縦置きエンジンをフロントに搭載した、後輪駆動の走行実験車、ランニングプロトなのだった。

吉田 これで走っているんだね。ステージのスタイリッシュなほうは、現行の軽サイズだけど、あくまでデザイン・スタディで、中身は入ってないのかも。

今尾 これが今回のモビショーでいちばん夢が詰まっているんじゃないですか。現実性も含めて。

吉田 現実性というか、金銭的なことも含めた、購買者の夢の部分ね。

会場では「コペン ランニングプロト」も披露された。現行コペンにFRユニットを組み込み製作した先行スタディ車だ

会場では「コペン ランニングプロト」も披露された。現行コペンにFRユニットを組み込み製作した先行スタディ車だ

“FRコペン”のランニングプロトは、フロントミッドシップレイアウトを採用する

“FRコペン”のランニングプロトは、フロントミッドシップレイアウトを採用する

今尾 そうです。ぜひ実現して量産化してほしい。豊田章男会長も気に入っているみたいだから、可能性は高い。担当のひとはやる気十分。問題は側面衝突の要件、みたいなことを言っておられました。いずれにせよ、これが今回のモビショーのベストですね。

吉田 全部見ないで、言っちゃいますか?

今尾 これ以上のものがあるとは思えない。

吉田 いまのコペンて、おいくら?

今尾 200万円ぐらいじゃないですか。

吉田 いまのはエンジン横置きのFWDで、メカニズムを流用してるからその値段だけど、縦置きのFRにしたら、独自につくらないといけないから、多分かなり高くなる。

今尾 あんまり高いと、トヨタの86とかマツダ・ロードスターとの絡みが出てきます……。

ダイハツ・コペン コンセプト|Daihatsu K-OPEN Concept

ダイハツ・コペン コンセプトのインテリア

ダイハツ・コペン コンセプトのルーフは、従来通りハードトップになるのか、それともソフトトップなるのか。期待に胸が膨らむ

ダイハツ・コペン コンセプトのルーフは、従来通りハードトップになるのか、それともソフトトップになるのか。期待に胸が膨らむ

吉田 となると、ボディがオープンであることと、軽自動車であることの強みを発揮するしかないですね。

今尾 軽というのは魅力です。なんせ1万円ですからね、自動車税。

吉田 セヴン160Sで助かってますよ、わたしも。

ああでもなくこうでもなくとモビショーの会場を練り歩く、モータージャーナリストの吉田 匠(左)と今尾直樹(右)、そして編集部の秋月新一郎(中)の3人

ああでもなくこうでもなくとモビショーの会場を練り歩く、モータージャーナリストの吉田 匠(左)と今尾直樹(右)、そして編集部の秋月新一郎(中)の3人

誰の真似もしないレクサス

レクサス スポーツ コンセプト|Lexus Sport Concept

レクサス スポーツ コンセプト|Lexus Sport Concept

──レクサスでは「スポーツ・コンセプト」に足が止まった。今年8月、米国カリフォルニア州のモントレー・カー・ウィークで発表された、LFAの後継車となる……と噂されているグラントゥーリズモである。

今尾 これは出すんでしょ。ニュルブルクリンクでテストしてるみたいだし。モビショーの直前に公開された「トヨタイムズ」でエンジン音を聴かせてましたよ。トヨタ2000GTとレクサスLFAのあとで。レクサス最後の内燃機関のスポーツカーになる……のかもしれない。

吉田 LFAの再来ということであれば、初代LFAに積まれたV10の、ふぉおおおおんッという、あの音も再現してほしいね。LFAでなにがいちばん魅力的かというと、エンジンだったから。人工音ではなくて、本物のエンジンの快音が聴きたい。

今尾 年末に豊田会長がワールド・プレミアをやるらしい。

吉田 どういう音が出てくるか、期待しましょう。

レクサス LSコンセプト|Lexus LS Concept

レクサス LSコンセプト|Lexus LS Concept

レクサス LSコンセプト|Lexus LS Concept

LSコンセプトは、Luxury Sedanでも、Luxury SUVでもなく、Luxury Spaceとして「LS」を再定義した

今尾 6輪の「LSコンセプト」はどうですか。後輪を小径にすることで、広い居住空間が実現できた、というのがウリです。たぶんBEVでしょうけれど、本気で開発に取り組むらしい。「誰の真似もしない」という意気込みやよし、ですよね。

吉田 そのとおりですね。で、隣の観音開きの4ドアクーペはなんだろう? このボディサイドの大きなエアアウトレットはなんのためだろう?

レクサス LSクーペ コンセプト|Lexus LS Coupe Concept

レクサス LSクーペ コンセプト|Lexus LS Coupe Concept

レクサス LSクーペ コンセプト|Lexus LS Coupe Concept

観音開きを採用したレクサス LSクーペ コンセプト

レクサスの担当者 これはホイールハウス内の空気を抜くためのものです。サーキットとかも走ることを想定して、ブレーキの冷却のために。

吉田 これでEVみたいだけど、サーキット走行を想定しているんですか?

レクサスの担当者 そうです。今回LSのコンセプトカーを3タイプ提示しています。

──すなわち、6輪の3列高級ミニバンの「LSコンセプト」、こちらの4ドア観音開きのクロスオーバー「LSクーペ・コンセプト」、そしてパーソナル・モビリティの「LSマイクロ・コンセプト」の3タイプである。

レクサス LSマイクロ コンセプト|Lexus LS Micro Concept

レクサス LSマイクロ コンセプト|Lexus LS Micro Concept

吉田 じゃあセダンはなくなるの?

レクサスの担当者 今回のテーマではないということです。

吉田 このプロポーションだと、これ(LSクーペ・コンセプト)も電動車ですよね。

レクサスの担当者 お客様の期待するパワートレインを検討中である、と。もちろん、電動化の技術にも真剣に取り組んでおります。

吉田 エンジン車だとすると、ボンネットがそうとう短いから、コンパクトなエンジンをつくる必要がありますね。観音開きというところでは、1955年の初代クラウンへのオマージュかな、と思ったんだけど……、関係ないのかな。

レクサスの担当者 そうですね、ラグジュアリーな体験をしていただこうということで。

今尾 ロールス・ロイスが観音開きですからね。

吉田 なるほど。

レクサスの担当者 後席は乗り降りしやすいようにベンチシートになってます。ゆったりとした空間を体験していただこうと。

吉田 いずれにしても、うまくパワーユニットを詰めて走れるようにしてください。ところで、あのLFAはエンジンはなにを想定しているんですか?

レクサスの担当者 あれは……言えないです。

中央の女性がレクサスLSクーペのデザイン担当者

中央の女性がレクサスLSクーペのデザイン担当者

吉田 実は今回のレクサスのコンセプトカーの中で、デザイン的に僕が一番気に入ったのはこのLSクーペ・コンセプトなのですよ。まず全体のプロフィールがいいし、例のボディサイドのエア抜き穴を含んで、なんか雰囲気があるんだよなぁ。

──「レクサスの担当者」は、LSクーペ・コンセプトのエクステリアを担当した女性デザイナーなのだった。レクサスでは最後に「LSマイクロ・コンセプト」をチラッと見た。

今尾 なんかに似てますね。なんだろう。

吉田 浅草あたりの人力車を思い出すね。

ひとり乗り用のLSとして展示されたレクサス LSマイクロ コンセプト

ひとり乗り用のLSとして展示されたレクサス LSマイクロ コンセプト

縦に配置された“LEXUS”の文字が、日本ぽくもありサイバーな感じを演出している

縦に配置された“LEXUS”の文字が、日本ぽくもありサイバーな感じを演出している

今尾 完全自動運転のプライベートな移動空間だそうですから、コンセプトは同じかも……。

>>>>後編へつづく

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