クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Cars

最終更新日:2025.03.11 公開日:2025.03.11

なぜジムニーは買えないのか? その理由は転売ヤーのせいだった? 【国沢光宏がクルマ業界にモノ申す!】第1回

スズキが2月3日に発表した5ドア版ジムニーこと、新型「ジムニー ノマド」が大人気だ。月間販売目標1200台に対して、なんと約5万台の注文が入ったという。なぜこんなにもジムニーは売れるのか? 自動車評論家の国沢光宏氏が、ジムニー人気の理由とその舞台裏について語る。

文=国沢光宏

この記事をシェア

ジムニーノマドはジムニー シエラよりもホイールベースが340mm長くなり、その分全長も伸びて3890mmとなった。しかし間伸びした印象は受けない。

記事の画像ギャラリーを見る

ジムニーの納期は1年以上!

現行ジムニーは7年前の2018年に発表されて以後、ずっと長い納車待ちが続いている。一方「登録されただけの中古車」(新古車という表現は禁止されている)が、新車の30~50万円高で店頭に並んでいる状況も続く。すぐ欲しいなら、お金さえ出せばすぐ乗れるのだった。いわゆる「転売ヤー」と呼ばれる業者の美味しい収益源になってます。これについては後述したい。

なぜ転売ヤーの収益源になるほど人気なのか? これはもう簡単。「デザイン良いため」である。ジムニーは長い歴史を持つ。初代のデビューが1970年で55年前。現行モデルで4世代目になる。過去3世代モデルもそれなりに人気だったものの、転売ヤーの収益源になるような長い納期になる人気モデルは無かった。ディーラーに行けばカタログ表記の価格ですぐ買えました。

第4世代のジムニー XC。画像=スズキ

先代ジムニーと現行ジムニーを比べても、ハードの差はほとんど無い。フレーム構造の丈夫なボディに660ccの3気筒ターボエンジンを搭載。副変速機付きのパートタイム4WDというスペック。現行ジムニーと先代ジムニーの違いは、デザインということになる。現行ジムニー、世界的な人気車になっているメルセデスのゲレンデワーゲンによ~く似ており、軽自動車らしからぬ存在感を持つ。

その割には価格も最上級グレードの『XC』(AT)で200万2000円と高くない。この価格帯で買えるクルマとしては最も高い趣味性を持っていると思う。考えて頂きたい。クルマというのは「車格」というヒエラルキー(ピラミッドのような階層)を持つ。200万円くらいのクルマだと、誰にでも解る下層の大衆車という位置づけ。個性や存在感が薄く、埋もれてしまう。

ジムニーはこのヒエラルキーに属さない。唯一無二の存在だからだ。実際、極悪路の走破性能は、1000万円以上する本格的なクロスカントリー車を凌ぐほど。ジムニーしか走破できないような状況などいくらでもある。標準車から少し車高を上げることで、ほぼ無敵の存在になるから凄い。最近の豪雪にだって強い。つまり200万円で世界一の性能が買えてしまうのだった。

第3世代のジムニー XC

この点については先代も同じだったのだけれど、やはりデザイン的な魅力が薄かった。写真を見ていただければ納得できると思う。従来型はどちらかというと「ホビー」という雰囲気。現行型を見ると、格式や威厳(笑)まで感じてしまう。加えてスズキはジムニーの納期が1年以上という人気車になっても生産ラインを増やさなかった。6年以上にわたり、長納期のまんま。

需要と供給のバランスが完全に崩れてしまっているため、中古車の相場は高めで安定している。5年落ちの2020年登録車だと180万円くらいというイメージ。当然ながら手放す時の相場だって高い。2020年に200万円で新車を購入。5年乗って買い取り業者に売れば160万円にはなる。1年で10万円しか価値が下がらない。これまたジムニーの魅力になっている。

中抜きされているのを承知で買えるか?

ジムニー ノマドではボディカラー「シズリングレッドメタリック」が新設定された。こちらはルーフに別色「ブルーイッシュブラック」を使用したツートンタイプ。

そんな状況の中、インドで生産&販売されていた5ドアモデルを『ノマド』という名前で発表したところ、あっという間にオーダーを中止しなければならなくなるほどの受注を集めた。ノマドの月間販売目標1200台に対し5万台の受注ということなので、3年半分である。慌てたスズキはインド工場の生産量を増やして対応すると言っているけれど、それでも長い納期だ。

ちなみに5万台の注文のうち、転売ヤーがどのくらいいるのかスズキも把握していないようだ。中古車業界では半分以上だとも言われている。スズキには2万店くらいの業販店(地方に多いスズキ以外のメーカーも扱っているディーラー)がある。顧客に販売すれば通常価格ながら、転売ヤーに売れば利益の上乗せが可能。実際、現行ジムニーの場合、発売直後から中古車店に並んでいた。

おそらくノマドも納車が始まると同時に中古車屋さんの店頭に30~50万円高で並ぶと思う。早く乗りたい人は、中抜きされているのを承知で買うことになる。ユーザーからすれば高い金額を払うことになり、スズキにしても利益幅が大きくならない。いろんな意味でメーカーもユーザーも不幸なこと。対策は一つしかない。生産量を増やすこと。スズキどうする?

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(3月31日まで)
応募はこちら!(3月31日まで)