交通事故を起こしてしまったら、どう対応すべき? やってはいけないNG行動とは。
警察庁の交通事故統計によると、年間約30万件も発生している交通事故。どれだけ気をつけていても、思いがけずに加害者にも被害者にもなる可能性があります。そんなときにパニックにならず、冷静に対応できるよう、交通事故時にやるべきこと、やってはいけないこと紹介します。
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交通事故には、物損事故と人身事故がある

交通事故は主に「物損事故」と「人身事故」に分類されます。
交通事故は主に「物損事故」と「人身事故」に分類されます。物損事故は、物的損害のみが発生した交通事故のことで、たとえば車の破損やガードレールへの衝突などがあります。人身事故は、人に対する傷害や死亡が発生した交通事故のことです。
また、事故の主体によっても分類が可能です。
主体別の区別としては、まず二つ以上のクルマが関与する事故は「車両相互の事故」と呼ばれ、正面衝突、追突、側面衝突、出会い頭の衝突などが含まれます。
対して、運転者が自らの操作ミスや判断ミスにより、他の車両と接触せずに起こす事故は「車両単独の事故」あるいは「自損事故」と呼ばれます。これに含まれるのは、ガードレールや電柱への衝突、道路からの逸脱、転倒などがあげられます。
また、他にもクルマではない主体との「人対車両の事故」「自転車対車両の事故」があります。
この記事では、車両相互の事故に焦点をあてて、加害者・被害者がどのような対応をとるべきかを見ていきましょう。
交通事故時にとるべき行動は?

交通事故に遭っても、慌てず落ち着いて行動しよう。
交通事故を起こした場合、とるべき対応は道路交通法第72条および第117条で定められています。具体的には「運転停止」「負傷者救護」「警察報告」が法で義務づけられており、いずれを怠っても道交法違反となり、罰則が科されることになります。
まず交通事故にかかわった車両などの運転者や同乗者は、ただちに運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止するなど必要な措置を講じなければならないとされています。さらに、交通事故が発生したことを警察官に報告することも義務付けられています。
【交通事故時に行うべき対応】
1.運転の停止と被害確認
ただちに運転を停止し、人や物の被害状況を確認します。
2.負傷者の救護(119番で通報)
・負傷者を救護し、必要があれば救急車を手配、病院への搬送も行います。
・救護を怠ると「ひき逃げ(救護義務違反)」として刑事責任を問われます。
3.道路上の危険除去
・二次被害を防ぐため、事故車両を安全な位置へ移動。
・発炎筒や三角表示板などで後続車に事故を知らせます。
4.警察への報告(110番で通報)
警察官が現場にいなければ、最寄りの警察署に以下を報告します。
・事故発生の日時、場所
・死傷者の数と負傷の程度
・損壊した物とその程度
・車両の積載物
・事故後にとった措置
5.証拠の収集と保険会社への通知
・衝突地点、スリップ痕、破損箇所などを写真で記録。
・事故から60日以内に、保険会社に通知しなければ、保険金が支払われない可能性があります。
このような対応をすると同時に、交通事故の相手方とは、氏名・住所・連絡先・自賠責保険や任意保険会社とその証券番号・車両ナンバーなどの情報を交換しておくことが大切です。
さらに、事故現場の状況を詳細に記録することも必要です。車両の損傷箇所や現場の見取り図、ドライブレコーダーの映像などを保存し、可能であれば目撃者の連絡先も確保しておくと、後の示談交渉や法的手続きで有利に働きます。
交通事故の直後は動揺しがちですが、落ち着いてこれらの手順を踏むことで、適切な対応が可能となり、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
過失割合とは?

通常、交通事故の当事者双方が契約している保険会社の担当者が協議して、過失割合を決定します。
交通事故における過失割合は、発生した交通事故に対する責任(不注意、過失)の割合のことです。通常、各当事者が契約している保険会社の担当者が協議し、過去の類似した裁判例を基準に、実際の交通事故の状況に応じて過失割合を決定します。
例えば、交差点での直進車同士の交通事故や、右折車と直進車の交通事故など、パターンごとに基本的な過失割合が設定されています。しかし、実際には個々の状況を確認し、過失割合を協議して決定するため、基本過失割合と異なる結果となることもあります。一般的な流れは下記の通りです。
【過失割合が決定するまでの流れ】
① 事故の損害額が確定し、相手方保険会社から過失割合を含めた示談案が提示される。
<事故の損害額が確定する主なタイミング>
・物損事故の場合:車の修理費などが確定した後
・人身事故の場合:怪我の完治後、または後遺障害等級認定後
② 当事者間で事故状況をすり合わせる
・実況見分調書などの警察資料
・当事者が撮影した現場写真
・ドライブレコーダーの映像
・当事者双方の証言
上記のような証拠をもとに、事故状況のすり合わせが行われます。
③ 過去の判例をもとに、基本過失割合を確認する
別冊判例タイムズや民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)などを参照し、過去の判例をもとにして基本過失割合を決定します。
④ 基本過失割合から修正を行う
下記のような実際の状況を加味して、基本過失割合から修正を行います。
・事故現場の状況(夜間、視認不良など)
・事故状況(速度違反、徐行無しなど)
・被害者の個別事情(児童、高齢者など)
⑤ 話し合いの結果、当事者双方が合意できれば過失割合を認定
話し合いがまとまらない場合は、裁判などで過失割合を決めることになります。
交通事故後にやってはいけないこと

当事者同士で、その場で示談交渉をすると、トラブルに発展する可能性がある。
交通事故にあった時、以下の行動はトラブルを招く恐れがあるため避けましょう。
【交通事故時にやってはいけない対応】
・事故現場から立ち去る、逃げる
・その場での示談交渉(感情的になりやすく不利になりがち)
・責任の押し付け合い
・被害の過小評価(後から症状が出るケースも)
交通事故の大小にかかわらず、第三者である警察と保険会社を通じて冷静に対応することが、トラブル回避のカギです。
交通事故直後は誰しも動揺してしまうものですが、直後の対応が未来を大きく左右します。被害者は自分の身を守る行動を、加害者は法令に則った責任ある行動をとることが重要です。もし直後の対応が不適切だった場合、実際は被害者だったとしても正当な主張ができず、示談で不利になってしまうこともあります。警察への報告や証拠の記録、保険会社への通知といった「やるべきこと」をきちんと押さえ、後の示談や訴訟でのトラブルを避けられるように注意して対応しましょう。
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