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最終更新日:2024.11.18 公開日:2024.07.10

クルマが好きでたまらない! ヤングタイマーと都市で暮らす「YOKOHAMA Car Session」の若者たち──シトロエンBX、ホンダS2000、いすゞピアッツァが登場。

若者のクルマ離れはもう終わったのかもしれない。そう思わせる自動車イベントが、先日、横浜赤レンガ倉庫で開催された。集まった105台はすべて35歳以下のドライバーたちの愛車である。都市部に住みながら“クルマのある生活”を満喫する。令和時代の新しいカーライフとは。イベントの仕掛け人「YOKOHAMA Car Session(横浜カーセッション)」の3人に話を聞いた。

文=サトータケシ

写真=内藤敬仁

「YOKOHAMA Car Session」を主催した3人と、それぞれの愛車

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最初の愛車は18歳に買ったシトロエンBX

2024年3月20日、神奈川県の横浜赤レンガ倉庫にて、「YOKOHAMA Car Session」という興味深いイベントが開催された。35歳以下の若者が趣味として楽しむ愛車を展示するという非営利の催しで、なんと105台ものクルマが集まったという。巷では「若者のクルマ離れ」が進んでいるとされているけれど、実はクルマを愛してやまない青年はしっかりと存在しているのだ。同イベントを主催した20代の3人に、都市部でクルマを持つことについて話を聞いた。

──まずは自己紹介からお願いします。

本田 本田浩隆、29歳です。テクニカルライターといいまして、クルマの整備マニュアルや配線図を書く仕事をしています。いまの愛車は1993年型のシトロエンBX19TZiです。

甲野 甲野大輔、28歳です。不動産の会社で都市開発などをやっています。いわゆる総合デベロッパーですね。いま乗っているのは2006年型のホンダS2000です。

後藤 後藤和樹、27歳です。展示会などのブースのデザイン設計に関わる仕事をしていて、1983年型のいすゞ・ピアッツァXE に乗っています。

──みなさんがクルマを好きになったきっかけを教えてください。

後藤 僕の両親はあまりクルマに興味がないタイプでした。ただ母方の叔父がクルマ好きだったんですね。叔父とクルマの話をしたのがきっかけだったかな、と思います。

甲野 僕も家族にクルマ好きがいない突然変異型で(笑)、両親によると小さい頃にいくつかのおもちゃを与えたらトミカだけに興味を示して、握ったら離さなかったそうです。物心がついたときには、もうクルマ好きでした。

本田 うちは父がクルマ好きで、僕が物心つく前から小学4年生くらいまで、シトロエンBXのワゴンボディのブレークというやつに乗っていました。それでいろいろなイベントに連れて行ってもらうのが楽しくて、フレンチブルーミーティングには1996年から毎年行っています。

本田浩隆さん。愛車はシトロエン「BX19TZi」

甲野大輔さん。愛車はホンダ「S2000」

後藤和樹さん。愛車はいすゞ「ピアッツァXE」

──みなさんの最初の愛車を教えてください。

本田 18歳のときに、ボビンメーターのシトロエンBXの初期型を買いました。それに7年くらい乗って、2020年の春に手放して、いまのBXになっています。

甲野 僕は17歳のときに、アルファ・ロメオ・スパイダーの最終型、シリーズ4を買いました。ランチア・デルタと迷ったんですが、免許取り立てだし、維持費のことも考えてアルファを選んだんです。当時、17歳でまだ免許がなかったので、僕は助手席に座って本田に試乗してもらいました。そうしたら、オープンカーがすごく気持ちよかったので、その場で“コレください”みたいな感じでした。

僕は本田の1学年下で、お互いかなり近所に住んでいます。共通の友人の紹介で知り合い、クルマの話をするようになったんですが、中学時代からなのでかなり長い付き合いです。

──甲野さんは17歳でアルファ・ロメオを購入したということですが、購入資金はどうなさったんですか?

甲野 5歳のときから貯金をしていまして、誕生祝いや入学祝いは極力現金でもらうようにして、その8割をクルマ購入のための定期預金に預けていました。だからアルファも現金一括払いでした。

後藤 僕はふたりよりかなり出遅れていまして、学生時代はクルマを持っていませんでした。学生時代は自動車デザイナーになりたいと思っていて、ジョルジェット・ジウジアーロというデザイナーのクルマを探しました。初代パンダ、初代ゴルフなどいろいろあるのですが、最終的にはいすゞのジェミニとピアッツァで悩んで、いまのピアッツァになりました。その初めに買った一台に、今も乗り続けています。

お金はかかる。それでもクルマは楽しい!

──みなさん横浜のご出身だとうかがっていて、後藤さんは現在、都内にお住まいとのことですが、クルマを所有、維持するにあたって苦労なさっているのはどんな点でしょう?

本田 私は実家暮らしで、実家のマンションの駐車場に置いているので特に苦労はしていません。強いて言えば、いまのクルマに比べればうるさいし、排ガスも匂いがあるので、周囲の理解を得ることでしょうか。20分も30分も暖機運転はしないとか、深夜や早朝は静かにするとか。

──シトロエンBXはメインテナンスに手がかかるというイメージですが、そのあたりはいかがでしょう?

本田 懇意にしているショップの敷地をお借りして、できるだけ自分でメンテをしています。パーツを友人と一緒に輸入して輸送費を削ったり、そうした工夫はありますが、どちらかというと苦労というより楽しんで維持していると思います。

甲野 僕も実家だし、ホンダS2000はまったくトラブルがないので、維持に苦労することはありませんね。ただ、最近もう1台、車高が低くて幅が広いクルマを買うことが決まって、そのための屋根付き駐車場を探していると、意外と空きがありません。やはり地方に比べると、駐車場を探すのは大変かもしれませんね。最近は盗難の心配もありますし。

後藤 僕は実家暮らしのぬるいふたりと違って(笑)、ひとり暮らしをしているので、都内に屋根付きのガレージがあるマンションを探すのに苦労しました。食費とかもあるのでお金はまぁまぁかかりますが、やっていけないほどのことはないし、クルマの楽しさを思えば問題ありません。

シトロエン BX19TZi(1993年型)

ホンダ S2000(2006年型)

いすゞ ピアッツァXE(1983年型)

「若者のクルマ離れ」にさようなら

──若い人がクルマを所有したり維持するにあたっては、みなさんのような仲間、コミュニティがあるとハードルが下がると思います。本田さんと甲野さんの出会いはうかがいましたが、そこに後藤さんがジョインしたのにはどんなきっかけがあったのでしょう。

後藤 2020年だったと思うんですが、夜、走りに行こうと思って首都高の大黒パーキングエリアに向かいました。そこに本田の緑のBXが停まっていて、格好いいなと思ったら、クラシックカー好きが集まる三浦半島の「Revival CAFÉ(リバイバルカフェ)」のステッカーが貼ってあったんです。僕もよく行くんですよ、というところから話が始まりました。

本田 なにに乗っているんですか? と聞いたらピアッツァですと言われて、おおっ! さっきパーキングに入ってきた白いやつか、となってからは話が早かったです(笑)。

──大黒に集まるクルマ好きの知り合いというのは、何人ぐらいいるのでしょうか。

甲野 顔見知りとか、知り合いのレベルだったら、50人とか100人ぐらいになると思います。本当に仲良くコミュニケーションをとっているのが20〜30人くらいかな。別に何曜日の何時に集まるとかは決まっていなくて、暑くもなく、寒くもなく、雨が降っていない日にふらりと行くと、だれかがいる感じです。

リバイバルカフェでのイベントの様子。写真=Yokohama Car Session

リバイバルカフェは神奈川県三浦市にある築100年の蔵カフェ。クルマ好き、バイク好き、カフェ好きが集まる人気スポットだ。

──「YOKOHAMA Car Session」の言い出しっぺはどなたですか?

後藤 僕です。横浜生まれのクルマ好きとして、赤レンガ倉庫にクルマを並べるイベントをやりたいという夢があったんですね。港北のIKEAに遊びに行ったときに、帰りに駐車場で甲野にイベントやりたいんだよね、とぼそっと伝えたんです。それがスタートで、本田も巻き込んで、あとはさまざまな先輩方に協力していただきながら、徐々に実現に近づけました。

──若い人にクルマを楽しんでもらいたい、というような目的があったのでしょうか。

後藤 そうした大義名分は後づけで、根底にあるのは自分たちがやっていて楽しいからだと思うんです。でも、「若者のクルマ離れ」という言葉がひとり歩きしている感はあって、別にそうじゃないんだけどな、という思いはありました。

本田 クルマ好きの数は減っているかもしれないけれど、濃度が上がっているような気がするんです。もしかすると僕らのひとつ上の世代がクルマ離れをしていて、経済的にリーマンショックの影響を受けていない僕らの世代からは、またクルマが好きになっているのかもしれない。

甲野 僕らもあと数年で30歳ですから、できればこういう楽しさだったりイベントだったりを10代、20代の人に受け継ぎたいという思いはあります。

後藤 赤レンガ倉庫でやったことには意味があって、あそこだと普通のクルマのイベントと違って、通りがかりの人がふらっと寄れる。高校生が電車で来ることもできる。若い人から、このクルマに乗りたいんだけどどうですか、と聞かれるのはすごくうれしいし、逆に年配の方から、これに乗っていたんだよねと話しかけられたりして、すごく盛り上がりました。

本田 これからもいくつかイベントのアイデアがあるので、いまクルマに乗っていなくても、興味のある人はホームページをチェックしてほしいです。クルマを維持している仲間ができると、いろいろノウハウも聞けるし、そんなに敷居が高いことではないと思えるはずです。

後藤 イベントなどで僕らを見かけたら、気軽に声をかけてください!

INFORMATION
YOKOHAMA Car Session 公式サイト

https://yokohamacarsession.wixsite.com/yokohama-car-sessi-1

横浜赤レンガ倉庫で開催された、YOKOHAMA Car Sessionの集合写真。写真=小塚大樹

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