北海道に札幌-石狩間を結ぶロープウエーの構想が浮上。手稲・麻生・栄町のどこにつながる?
北海道の札幌市と石狩市を結ぶ新交通の構想はロープウエー案に落ち着きそうだ。実現すれば全長12~15kmの国内では類を見ない長距離ロープウエーとなる。いったい札幌のどこから石狩のどこまで、どんなロープウエーができあがる?
北の都のベッドタウンなのに……公共交通の脆弱な石狩市
北海道札幌市。北の都といわれる、北海道の政治・経済の中心部だ。市内の公共交通は、地下鉄(南北線・東西線・東豊線の3路線)の他、居住エリアによっては、JRや市電を利用できる他、市内の全域で運行しているバスという選択肢もある。
一方、札幌の北部に隣接する石狩市は、札幌のベッドタウンという側面を持ちながらも、長年、交通の便に課題を抱えていた。通勤・通学など、札幌-石狩間を移動する両市民の移動は、鉄道網を持たないがゆえに、バス、または自家用車に依存せざるを得ない。
石狩から札幌駅、地下鉄南北線麻生駅、東豊線栄町駅、JR手稲駅に向かう、全26系統のバス路線網でさえ、本数も少なく、冬は雪で頻繁に遅延するため、利便性は高くない。加えて、石狩市に限ったことではないが、運転手の不足のため、バスの便数の削減や路線の廃止なども相次いでいる。
例えば、中央バスの石狩庁舎前→札幌ターミナルの本数は、ピーク時は1時間に2~3本、それ以外は1時間に1本、石狩庁舎前→麻生駅の本数は、ピーク時は1時間に2本、それ以外は1時間に1本である。自家用車で移動するにも、札幌-石狩間の主な経路である新川通は交通量が多く頻繁に渋滞しており「ちょっと進んだと思ったら、すぐ信号につかまる」といった具合だ。
石狩市民にとって、札幌-石狩間の鉄道網は悲願である。昭和30年頃には「札幌臨港鉄道」を設立して事業許可まで取り付けたものの用地買収の段階で頓挫。昭和60年頃にはモノレール構想が持ち上がるも、莫大な建設費を前にこれもまた立ち消えている。
特に、近年、石狩市の新港エリアや緑苑台エリアは、目覚ましい発展を遂げている。新港エリアでは、「コストコホールセール石狩倉庫店」の出店、低温物流センターとプロセスセンターを併設する「イオン北海道石狩PC」の稼働などがあげられる。明らかに市の発展に対して公共交通の整備が追い付いていない。
ここで、石狩市は、持続可能であることを前提に、安定して利用できる軌道系交通を「官民連携手法」によって導入可能性調査をすることにすることにした。
モノレールではなくまさかのロープウエー!?
先導的な官民連携事業を実施しようとする地方公共団体等に対し、業務に要する調査委託費を助成する「官民連携手法」に選ばれた、石狩市の新たな軌道系交通を導入可能性調査をするこの事業。石狩市は、BRT(バス高速輸送システム)など、様々な交通モードを検討したうえで、建設コストを最小限に抑えられるロープウエーを選択する可能性が高いとしている。
規模はまったく違ってくるが、都市型ロープウエーという意味では、YOKOHAMA AIR CABINに近いかもしれない。
しかし、石狩市民は「日本海側の石狩は風が強いからロープウエーだと相当揺れるのでは?」と思うはずだ。石狩は洋上風力発電も盛んな「風の町」でもある。実際、YOKOHAMA AIR CABINも、強風時には運休している。この点に関しては、石狩市も認めており、現在、強い風の中でも安定して走行できるロープウエーを開発しているとのこと。通常は1本のロープをもう1本増やして2本にするという。
ロープウエーとは予想し得なかったかもしれないが、強風でも大雪でも運行できる公共交通となれば、石狩市民にとってとても魅力的なものではないだろうか。
候補は手稲・麻生・栄町の3ルート
石狩市はロープウエー構想の経路として、石狩市から手稲・麻生・栄町に至る、以下の3ルートを検討している。
①『手稲ルート』 新港地区~花川地区~JR手稲駅
②『麻生ルート』 新港地区~花川地区~地下鉄南北線麻生駅
③『栄町ルート』 新港地区~花川地区~緑苑台地区~地下鉄東豊線栄町駅~丘珠空港
いずれも距離は12~15kmほど。途中、1~2km 程度おきに駅を設けることを想定している。ロープウエーの最高速度は時速20~30kmであるが、実際にこの速度で運行することになるかは不明だという。仮にだが、13.5kmの距離を時速25kmで走行したら、所要時間は30分ほどになる。途中、6つの駅を設けるとして、そこでの乗り降りを加味すると、早くて40~45分ほどといったところか。1時間あれば、ロープウエーで札幌-石狩間を移動できることになる。
北海道では大雪でJRの運休となりやすい。安定して札幌-石狩間の交通を確保するのであれば、地下鉄と接続する『麻生ルート』か『栄町ルート』だろうか。この点に関して、石狩市は、まだ案の段階であるうえ、候補の3ルートは、既存のバス路線と共存できるよう選択するとしている。
待望の札幌-石狩間の交通網として長距離ロープウエーの実現なるか。道内だけでなく道外もその行方に注目する。
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