目の保養、英国クラシックカーの祭典で、今年輝いたクルマたち
9月1~3日にかけてイギリスのハンプトン宮殿で開催されたクラシックカーの祭典「コンクール・オブ・エレガンス」。今年で第12回目となるイベントには、1万5000人の来場者が集まり、ル・マン100周年も同時に祝われた。会場を彩った稀少なクラシックカーを紹介する。
今年のハンプトン宮殿にはル・マン歴代優勝モデルも集まった!
高級機械式時計ブランドとして知られるドイツのA. Lange & Söhne(A.ランゲ&ゾーネ)が主催し、クルマの優雅さを競うクラシックカーイベント「Concours of Elegance(コンクール・オブ・エレガンス)2023」がロンドン郊外にあるハンプトン・コート宮殿で9月1~3日まで開催された。今回のイベントでは、ル・マン24時間レースの100周年祝賀会も同時に開催され、歴代の優勝モデルを含めた24台が集まった。
今回は「ベスト・イン・ショー」に輝いた車両をはじめ、さまざまな部門で受賞した車両を紹介する。
優雅なクラシックカーを一挙に紹介!
■マセラティ:A6GCS/53フルア・スパイダー(1955年)
このコンクールで最も栄誉ある「ベスト・イン・ショー」に選ばれたのが、マセラティの「A6GCS/53フルア・スパイダー」だ。
フルア・スパイダーは、1950年代のクルマの中で最も美しく、魅力的なクルマとされている。稀少性も高く、完成した車両はわずか3台しか存在しない。もともと1953年の世界スポーツカー選手権用に開発され、126.8kW直列6気筒の力強いエンジンを搭載、軽量のシャシーを備え、車体重量はわずか740kg。繊細なスタイリングとレースカーのパフォーマンスがブレンドされた、真の芸術作品と称賛される一台だ。
■イスパノ・スイザ: 14/45HP アルフォンソXIII(1913年)
ベスト・イン・ショー以外にも様々な年代ごとに7つの部門が設けられており、このアルフォンソXIIIは”1920年以前部門”で最も多くの票を獲得した。イスパノ・スイザは“スペインとスイスの”という意味を持つスペインの高級車ブランド。14/45HPは高性能で軽快な操縦性から史上初のスポーツカーとされており、スペイン王妃がアルフォンソ13世に贈り、愛用されたことからアルフォンソXIIIと呼ばれるようになった。このモデルは市販化されており、第一次世界大戦が始まる前に500台のみ製造されている。
■ベントレー:スピードシックス「オールド・ナンバー・ワン」(1929年)
“1920年代部門”では、ル・マンで2度優勝したベントレーのスピードシックスがトップに輝いた。1929年と1930年にル・マン24時間レースで連続優勝した初のクルマとして「オールド・ナンバー・ワン」の名が刻まれている。スピードシックスをベースにしているこのマシンの出力は141kWで、最高速度は時速185kmに達する。
■ブガッティ:タイプ59(1934年)
“1930年代部門”では、ブガッティのタイプ59が受賞。このマシンはスーパーチャージャー付き直列8気筒を備え、現在でも工業芸術の傑作であると考えられている。ブガッティの最後のGPマシンであるタイプ59の製造数は、わずか6台のみで、今回出場したこの車両はモナコGPで3位となり、ベルギーでは総合優勝を果たしている。
■ジャガー:XKSS(1956年)
“1950年代部門”では、ジャガーのXKSSが優勝した。ジャガーがモータースポーツから突然撤退した際、ジャガー創業者のウィリアム・ライオンズ氏は数台の競技用車(Dタイプ)の公道走行用を少量生産し、これをXKSSと呼んだ。250馬力の3.4L直列6気筒エンジンを含め、車両は当時の工場で改造されたままの大変稀少な一台。
■フェラーリ:250 GT SWB カリフォルニア・スパイダー(1961年)
激戦となった“1960年代部門”を制した1961年製の250GTカリフォルニア・スパイダーは、フランスを代表する俳優の 1 人、アラン・ドロンがかつて所有してモデルということで有名。近年、ポール・ラッセル・アンド・カンパニーによって完全な修復が施され、コンクールに出場したこの車体の状態も素晴らしかったという。
ランボルギーニ:ミウラ P400 SV(1971年 )
“1970年代部門”では、スーパーカーを象徴するようなクルマで、ゴールドペイントが輝くランボルギーニ ミウラP400SVが投票者の心を掴んだ。ミウラの究極バージョンであるSVは1971年に登場、出力を287kWに、トルクを400Nmに押し上げている。このマシンのドライバーであるデンビアモントは、助手席に妻と愛犬をP400SVに乗せてよくヨーロッパを横断しているそうだ。
■アストンマーティン:ヴァルキリー(2023年)
“フューチャークラシック部門”では、今年登場したばかりの超高性能マシン、ヴァルキリーがトップに輝いた。ヴァルキリーは、6.5Lのアストンマーティン・コスワースV12と、電気モーターを組み合わせることで1139馬力の凶暴なロードマシンとなっている。このマシンはわずか150台生産されたヴァルキリーのうちの1台で、ビスポークサービス「Q」でオーダーメイドされた特注仕様。
■受賞者リスト
【ベスト・イン・ショー】 マセラティ:A6GCS/53 フルア・スパイダー(1955年)
【1920年以前部門】イスパノ・スイザ: 14/45HP アルフォンソXIII(1913年)
【1920年代部門】ベントレー:スピードシックス「オールド・ナンバー・ワン」(1929年)
【1930年代部門】ブガッティ:タイプ59(1934年)
【1950年代部門】ジャガー:XKSS(1956年)
【1960年代部門】フェラーリ:250 GT SWB カリフォルニア・スパイダー(1961年)
【1970年代部門】ランボルギーニ:ミウラ P400 SV(1971年 )
【フューチャークラシック部門】 アストンマーティン:ヴァルキリー(2023年)
【ル・マン賞 1920年代~1930年代】ベントレー:スピードシックス「オールド・ナンバー・ワン」(1929年)
【ル・マン賞 1950年代~1960年代】フェラーリ:250 LM(1964年)
【ル・マン賞 1970年代以降】フェラーリ:365 GTB/4 デイトナ グループ4コンペティション(1972年)
コンクール・オブ・エレガンスの開催期間中、他の場所では女性の自動車愛好家やコレクターを称える「レビット コンクール」や、若いクルマ愛好家を称える「30アンダー30」賞に、グッディング・アンド・カンパニーの「ロンドンオークション」も大きな関心を集めた。すべてではないが、ル・マン部門や下記コンクール受賞車などの写真もギャラリーページに掲載しているので、稀少なその姿をぜひ確認してもらいたい。
【クラブトロフィー】アストンマーティン:DBS(1968年)
【クラシックカー&スポーツカートロフィー】アストンマーティン :DB6 ヴォランテ(1967年)
【クラシック&スポーツカー トロフィー】マーコス:マンティス M70(1972年)
【ジュニアコンクール】ブガッティ タイプ 13 ブレシア
【レビット・コンクール】フレイザー・ナッシュ・ル・マン・クーペ(1955年)
【30アンダー】ポルシェ:924(1981年)
【プリンス・マイケル・オブ・ケント賞】AC シェルビー コブラ「CSX 2001」(1962年)
【会長賞】プジョー:302 DS Darl’Mat(1937年)