まだ6割の人が知らない? 「2024年問題」が私たちに与える影響とは
2024年4月1日からトラックドライバーの年間時間外労働時間が規制される「物流の2024年問題」。労働時間が短くなるため、輸送能力が不足することが懸念されているが、この問題をどれだけの人が認知しているだろうか。また、私たちの生活にも影響が及ぶのだろうか。目前に迫った物流問題を紹介する。
目次
物流の2024年問題は、まだまだ認知されていない?
運送会社のIBトータルサービスは、トラックドライバーの年間時間外労働時間が960時間に制限されることによって生じるさまざまな問題、いわゆる「物流の2024年問題」に関する意識調査を、20代~60代の男女314名に対して実施した。
この調査結果によると、回答した一般消費者のうち、6割の人が2024年問題を認識していないと回答。さらに、2024年問題によりトラックドライバーの数が不足すると認識している人のうち、私たち一般消費者へ影響があると考える人は約86%であることが分かった。
そもそも、2024年問題ってなに?
厚生労働省は、働き方改革の一環として労働基準法を改正し、2019年4月から時間外労働の上限を規定した。その際、工作物建設業や自動車運送事業などの一部の事業者は、特例で猶予期間が設けられていた。しかし、この猶予期間が間もなく期限を迎えることになり、2024年4月からはこれらの事業者にも時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用されることになる。
これにより、自動車運送事業ではトラックドライバーの労働時間削減や割増賃金率の引き上げなどのメリットがある反面、労働時間が短くなることで、ドライバーの賃金減少による離職者の増加や、運送会社の利益減少などが予想されている。その結果、物流業界全体の輸送能力が低下し、モノが運べなくなる事態になるのではないかと懸念されている。これがおよそ7か月後にまで迫っている「物流の2024年問題」だ。
配送料の値上げも待ったなし!? 私たちの生活への影響は?
2024年問題で私たち一般消費者にはどのような影響があるのだろうか?
- 宅配における配送料の値上げや再配達不可・追加料金の発生など
- 当日・翌日の荷受けができなくなるなど、サービスの低下
- 日用品や生鮮食品の価格が高騰
物流業界全体の輸送能力の低下と、物流コストの値上げが起こるのであれば、このような影響は現実的なシナリオとして充分考えられる。
2024年問題を目前に、すでにAmazonのPrime会員サービスでも会員費の値上げが8月24日に実施されている。Amazonでは値上げの理由はサービスを長期的に継続させるための総合的な判断としているが、昨今の運送コストの高騰と無関係ではなさそうだ。
2024年問題に対して消費者ができることは?
政府と協力して2024年問題の対策を進めている「全日本トラック協会(JTA)」では、荷主(荷物を送りだす人や、物流会社に物流業務を頼む依頼主)、トラック事業者、消費者に対して次のような協力が必要だと発信している。
1.荷主とトラック事業者との連携
出荷・受入れ体制の見直しや、パレットを活用した手荷役作業の削減、情報の共有化とDXによる業務効率化に、長距離輸送は中1日空けて荷物を満載するなどの効率的な輸送を目指す。
2.トラック事業者から荷主にお願いすること
ドライバーの労働環境改善のために適正な運賃設定に加え、運送以外に発生する料金(燃料や附帯作業、高速料金など)の配慮。
3.トラック事業者から消費者にお願いすること
再配達を減らす努力として日時・場所指定、宅配ボックスや置き配設定の実施と、配送回数を減らすためにまとめ買いを意識すること。
他にも政府は対策の一環として、高速道路での最高速度が時速80kmに規制されている車両総重量8t以上のトラックについて、時速100kmまで引き上げる方向で検討中。また、2022年10月から軽乗用車の事業用ナンバーを解禁し、家庭用の軽乗用車でも配送を可能にして配達員不足の解消につなげたりと、様々な対策を進めている。
物流の2024年問題はさまざまな要素が複雑に絡み合っているため、ひとつの対策で万事解決とはいかず、一人でも多くの人に協力してもらう必要がある。そのためにはまず、このような問題が迫っているということを周知することと、これまでの物流サービスがとても便利なものだった、ということへの感謝の気持ちを持つことが大切なのではないだろうか。
■アンケート調査概要
調査方法:インターネット調査
調査機関:調査委託先・ジャストシステム(fastask)
調査期間:2023年7月10日~7月17日
調査エリア:全国
調査対象:20代~60代の男女
調査人数:314名