タクシー料金が事前に決まるサービスで、国交省が新たな試み。
国土交通省は、2021年5月24日、タクシー料金が乗る前に確定する「事前確定運賃サービス」の新たな実証実験を開始した。今回の実証実験では、地域や時間による料金のばらつきを統一し、タクシーメーターも不要化。利用者の利便性の向上とともに、タクシー会社の負担軽減効果も検証する。
事前運賃確定で渋滞時などの運賃不安を解消
タクシー利用時の不安といえば、「渋滞や回り道で運賃が高くなるかもしれない」「到着するまでのメーターが気になる」などが挙げられる。これらは、目的地に着いた際に、実走距離で運賃が確定することが起因している。そこで、2017年、国土交通省主導で、「事前運賃確定サービス」の実証実験が実施された。
実証実験の結果をもとに、2019年には、タクシーの配車アプリを活用した「事前運賃確定サービス」が27地域(札幌、東京、横浜、長野、名古屋、大阪、京都、神戸等)で本格導入された。これは、配車アプリからタクシーを依頼した時点で運賃がアプリ画面上に表示され、その時点で配車依頼を確定すれば、事前確定運賃が適用されるというものだ。ちなみに、電話での手配や流しのタクシーを見つけて乗車した場合には適用できない。
一方、渋滞のような交通状況は場所や時間で大きく変化するので、事前運賃を距離だけで一定に決めてしまうと、こんどはタクシー会社が不利を被る場合もでてくる。そこで、事前運賃確定サービスでは、初乗り運賃と距離に対する加算運賃の合計額に、営業区ごとの交通情報を考慮して定められた「統一係数」を掛け合わせて運賃が算出される。この統一係数が複雑で、以下の表のように、時間帯と曜日によって実に細かく設定されている。たとえば、いつもと同じコースでも運賃が異なってくるわけだ。
メーターを使わずカーナビの地図上で計測
今回(5月24日~6月30日)、東京都特別区・武蔵野市、三鷹市で行われる実証実験では、上記の図で説明したような「事前確定運賃用ソフトメーター」が採用され、統一係数を区域や時間などで区別せず、全国で「1.21」へ統一とする試みが導入される。具体的には、株式会社Mobility Technologiesが提供する配車アプリ「GO」を利用し、距離はカーナビの地図上で計測。その上で、前述した統一係数で運賃が確定される。
また、今回の実証実験の目的には、利用者の利便性向上のほかに、タクシーメーターを不要としてタクシー会社の負担を軽減するという面もある。というのも、現行のタクシーメーターは、法律上計測器に該当し、定期的な検定が必要など、負担が小さくなかった。
これまでの事前運賃確定サービスでも、タクシーメーターを使う必要はなくなっていたのだが、原則としてタクシーメーターにはカバーを掛けた上で稼働させておく必要があった。今回の実証実験では、タクシーメーターの稼働自体が不要になる。
国土交通省自動車局旅客課によると、事前運賃確定サービスについて「様々なサービスを用意し、利用者の選択肢を増やしていくことで、さらなる利便性の向上につなげたい」という。事前運賃確定用ソフトメーターの今後の改良などについても、今回の実証実験の結果を踏まえて行っていくという。
【「事前確定運賃用ソフトメーター」の実証実験概要】
期間:2021年5月24日(月)~6月30日(水)
場所:東京都特別区・武蔵野市、三鷹市
参加事業者:日本交通グループ(約5000両)、荏原交通グループ(約300両)、小田急交通株式会社(約170両)、平和交通羽田株式会社(約80両)
利用方法:配車アプリ「GO」から配車手配(株式会社Mobility Technologies提供)