日本が保有する最古の消防”馬車”を発見!
5年に一度開催される「東京国際消防防災展」が6月中旬に開催された。今回は会場に展示されていた、日本が保有する最古の「消防蒸気ポンプ」を紹介。消防車の歴史語りに欠かせない、蒸気ポンプとはどのようなものなのだろうか?
消防の機械化に貢献した蒸気機関
東京消防庁によると、1914年に行われた大正博覧会に出品された欧州産の2台のガソリンエンジン搭載車が、日本で初めて使用された消防ポンプ”自動車”だそうだ。一台はイギリスのMerryweather(メリーウェザー)製で横浜市が購入、もう一台はドイツのベンツ製で、こちらは名古屋市が購入している。エンジンを搭載したことで、既存の消防ポンプ車(自動車ではない)と比べてはるかに移動・放水・積載能力が向上、それ以降、消防ポンプ自動車は消防活動の主戦力として活躍している。
では、それまでの自動車ではない消防ポンプ車とはどのようなものだったのかと言うと、薪と石炭を燃やした圧力で放水する蒸気機関を馬に引かせて移動する「蒸気ポンプ」や、「水管馬車」と呼ばれる消防ホースを積んだ馬車がその役割を担っていたそうだ。
今回、東京ビッグサイトで開催された東京国際消防防災展では、日本が保有する中で最古となる「馬引き蒸気ポンプ」が展示されていたので、さっそく見てみよう。
かつて戦争に巻き込まれた馬引き蒸気ポンプ
今回展示されていた蒸気ポンプは、イギリスのメリーウェザー社が1860年に艤装し、1941~1942年のエクアドル・ペルー戦争時にペルーで使用されたものだ。その後、日本にはペルー義勇消防協会との消防友好親善にもとづき、1993年に日本消防協会に寄贈されたという。戦火をくぐり抜けた蒸気ポンプの煙突部には、いくつもの弾痕を確認することができる。
世界初の蒸気ポンプは1829年にイギリスで誕生したそうだが、1860年に製造されたこの蒸気ポンプもかなり貴重な存在と言えるだろう。ちなみに日本では1870年に東京府消防局が初めてイギリスから蒸気ポンプを輸入、1899年には市原ポンプ製作所によって国産第一号となる蒸気ポンプが誕生している。
世界初の蒸気ポンプ「ノービリティ(名門)号」は10馬力で毎分900~1200Lの水を約30mの高さまで放水できたことから、同じイギリス製のこの展示品も同等以上の性能を誇っていたのではないだろうか。大きさは全長3.4m、全幅1.6m、高さ2.1mで、御者はルーフのように見える赤い板の上に座り、馬を操る。出動の際には2頭以上の馬で蒸気ポンプを引いていたようだ。
蒸気ポンプが放水する姿については近年でも岩手県一関市の「水かけ祭り」などで見ることができる。薪や石炭を燃やし、汽笛を鳴らしながら蒸気を巻き上げる様子は、SL好きでなくても胸が躍るに違いない。
画像ギャラリーページにも各部の構造や装飾の写真を用意したので、何がどう機能するのかと想像を膨らませながら眺めてみてほしい。
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