もし運転中に動物と衝突してしまったら? 「ロードキル」の対処法を解説
運転中に野生動物と衝突する事故が後を絶たない。路上における野生動物の死亡=ロードキルの大きな原因となっている。ドライバーにとっても、自身や同乗者の身の危険につながりかねない動物との事故について、対処法を紹介する。
ロードキルとは?
道路上で起きる野生動物の死亡事故を「ロードキル」という。道路に野生動物が進入することで発生するものだ。その死因は、車両にひかれて死亡する「轢死」、側溝で溺れて死亡する「溺死」、アスファルト上で乾燥して死亡する「乾固死」など多岐にわたるが、車両にぶつかる、はねられる、ひかれるなど交通事故の割合は高い。
通行中の車両と大型の野生動物が衝突すれば、車両が損傷するだけでなく、ドライバーと同乗者も無傷ではすまないことがある。万が一に備えて、ロードキルが発生したときの対処法を知っておこう。
クマも飛び出してくる⁉ 野生動物と衝突する危険性
道路を通行する車両と野生動物との衝突事故は、北海道から沖縄まで日本全国で起きている。大型の野生動物であれば、エゾシカ、ホンシュウジカ、クマなど。小型~中型の野生動物であれば、タヌキ、イノシシ、ネコなどが多い。様々な野生動物が右も左も確認せずピョン!と飛び出してくるので、ドライバーにとっては避けるのも難しい。
特に近年は、野生動物の生息域に道路を整備したことで、車両と野生動物の衝突事故が増えている。北海道で増え続けるエゾシカとの衝突事故の危険性については、別記事でも詳しく解説している。
「エゾシカとの衝突事故、修理費は平均58万円超え! 発生状況と対策を解説」
野生動物と衝突した車両は、廃車にしなければならないほど大きく損傷することもある。当然、ドライバーと同乗者の命も脅かされる。いつ野生動物が飛び出してきても対応できるよう、警戒標識に注意し、山間部はスピードを出し過ぎず、周囲に目を配るようにしたい。また、夜間や早朝は、ハイビーム(上向きライト)にすると、野生動物の目がきらりと光るので発見しやすくなる。
野生動物が飛び出してきたら…突っ込め⁉
では、もし運転中に野生動物が飛び出してきたら、どう対応すればよいのか。ドライバーの心理として、回避するために急ブレーキや急ハンドルを切りたくなるかもしれないが、基本的にはNGだ。なぜなら、クルマが横転したり、対向車と衝突したり、後続車に追突されたりする危険性が高まるからだ。特に一般道よりも速度が高い高速道路などでは重大事故につながりかねない。安全に避けられる確信があるとき以外は、急ハンドルを切らず、そのまま直進するのがよい。
小動物が飛び出してきた!
小動物が飛び出してきたとき、ブレーキをかけても衝突を回避できないときは、まっすぐにぶつかるしかない。小動物との衝突では車両の損傷はあったとしても、ドライバーや乗用車が重傷を負うようなことはない。
大型動物が飛び出してきた!
大型の野生動物が飛び出してきたときも、衝突や接触を回避できない状況であれば、やはりぶつかるしかない。しかし、大型動物とぶつかったときの衝撃は大きいため、衝突の瞬間には全身に力を入れて、しっかりと身構えよう。また、同乗者がいる場合には、衝突が避けられないことを大声で知らせておくといい。
野生動物と衝突したら警察に通報!
道路上で野生動物と衝突したときは、安全な場所に車両を停車して必ず警察に連絡しよう。「後続車両の通行の妨げにもなっていないし、衝突した車両も大きく損傷していないし、大丈夫か……」と立ち去るドライバーも少なくないが、警察に報告をしなかった場合は、道路交通法72条に反した「報告義務違反」となることを覚えておいてほしい。
警察に通報したあとは「道路緊急ダイヤル(#9910)」にも電話しよう。道路緊急ダイヤルは、道路の異常を発見したときに通報する専用ダイヤル(24時間無料)だ。道路緊急ダイヤルの通報を受けると、道路管理者がすぐに現場に駆け付け、早急に道路の復旧にあたる。
なお、野生動物と衝突・接触事故だけでなく、道路上で死亡している野生動物を見つけたときも、通行車両の安全確保のため#9910に電話してほしい。
もし野生動物が生きている場合、交通事故を起こしたドライバーは動物病院や保護施設に連絡して、できる限りの救護に努めなければならない。その際、感染症の危険があるため、決して素手で触らないよう気を付けること。また、急に暴れ出したり、近くで様子を見ていた親や子が襲ってくることもあるので無理は禁物だ。そのうえで、できるならタオルや段ボールで保護をしてほしい。同時に、覚えておいてもらいたいのは、基本的にはドライバーが治療費を負担しなければならないということだ。
野生動物との衝突は自賠責保険の対象にはならない
動物と衝突事故を起こした場合は、自損事故として判断される。自損事故は自賠責保険の対象外となるため、任意保険からの補償となる。適用される保険は、損傷を受けた対象によって異なり、車両を修理しなければならないときは「車両保険」が、ドライバーや同乗者が負傷した場合は「人身傷害」や「搭乗者障害」が適用となる。
ただしエコノミープランなど保険のプランによって適用されない場合もあるので注意が必要だ。あらかじめ自身の保険の補償内容を確認しておくとよいだろう。