ブランケットクッション:純正オプションをしのぶ会③
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…時代によってクルマの流行も移り変わってきましたが、クルマのオプション(付属品)にも時代を映すものがありました。すでに販売終了となったクルマのオプション(ここでは純正アクセサリー)について、当時のカタログ写真とともにオプション本人の声として紹介する連載企画。
題して、クルマの純正オプションをしのぶ会。今回は、ブランケットクッションです。
当時を知る人は、クルマとの懐かしい思い出に浸る気持ちで、当時を知らない人は、往年の人気番組を見るような気持ちで、それぞれお楽しみください!
記事提供元/カエライフ
ブランケットクッション(Hマーク付き):
今回ご紹介にあずかれるとのことで、誠にどうもありがとうございます。あら、私たちのことご存じないですか? そうですよね、もう販売終了してからしばらく経ちますし…。
私、長女のブランケットクッション(Hマーク付き)でございます。その名のとおり、広げればブランケットとして、畳めばクッションとして使えるアクセサリーでございます。私たちは四姉妹でございまして、なかでも私は長女ですので、当然のことながら一番最初に誕生したわけでございます。
生まれた当初のことをお伝えするのは年齢が分かってしまうようで恥ずかしいのですけれど、その当時のカタログ写真が下記でございますわ。
1987年のことでございました。上のカタログは「Today」というポップな若者向けのクルマのものでございます。ただTodayだけでなく、「レジェンド」といった高級車から、「CR-X」といったスポーツ寄りの車種まで、実に幅広いラインアップのカタログに載せていただいておりました。
下の写真は1987年の「ビガー」のカタログでございます。
車内インテリアの一部としてデビューしたころのよい思い出でございます。
私たちは車種によって形状をかえる必要がございません。たとえばフロアマットさんはどの車種にもございますが、それぞれの車種におうじて形状が異なりますわね。私たちにはそういったことがございませんので、基本的には全車種対応でございます。それでもここまで幅広いカタログに同一商品として掲載されているのは、珍しいことだと聞いております。
下の写真は、商用車「アクティ」のカタログで紹介されたときのものでございます。懐かしいですわね。
ブランケットクッション(ベロアカバータイプ):
お姉さまばっかりお話してずるいですわ、もぅ。私もちょっとお話させていただきますわね。
どうもはじめまして。カタログによっては「ベロアカバータイプ」なんて言われますけれども、私がブランケットクッションの次女ですわ。
お姉さまはいろいろな車種に載せてもらっていますけど、私はその生まれが高級車の「レジェンド」でしたから、ちょっと上の層と申しますか、おほほ、どんな車種にでも見境もなくというわけにはいきませんでしたわ。それでも「アコード」や「オデッセイ」、「インスパイア」など多くの車種で掲載いただいた記録があります。クッション表面に入った柄も、縁取りの感じもずっとお上品でありますでしょ?
こうして並べてみると歴然ですわね、お姉さまは「Accessories that say “It’s my Honda!”」なんて書いてありますが、私は「Honda Authorized Blanket Cushion」ですわよ。日本語に訳さなくたって、その差は歴然ですわねぇ?
お姉さまは年齢のことを気になさるから紹介しませんでしたけど、そもそも私たち四姉妹は下の図のような感じですわ。生まれた年、販売終了した年、そしてすべてではないですが掲載されていた主な車種をまとめたものです。
長く愛されたという意味では、次女の私が一番ですのよ。車種によっては掲載されたりされなかったりした歴史もありましたけど、合計で約17年も載せていただいておりました。Hマーク付きのお姉さまも約15年とわりと長めですわね。三女・四女(下記で紹介)は私たちと比べればちょっと短めでしたわ。
ちなみに生まれた年や販売終了した年の厳密さは、車種によってもずれがありますのでご容赦くださいませね。かといって鯖を読んではいませんわよ、おほほ。
ブランケットクッション(ムートンカバータイプ):
私はお姉さまたちみたいに、ペチャクチャとおしゃべりするようなことはほとんどありませんわ。
生まれたのは1990年10月の「レジェンド」のカタログです。誕生以来、レジェンドにしか掲載されていないと思います、うふふ。
自称お上品なベロアカバーお姉さまには申し訳ないんだけど、高級感でいったら私にはかなわないと思いますわ。お値段も勝負になりませんし、うふふ。実際に手で触っていただければ、こんな言葉での説明なんて冗長というか蛇足にしか思えないでしょうけどね。
あまりお話することもありませんので、カタログのカットでもご覧くださいな。
そこにいるだけで車内の空気を変えてしまうようで、なんだか恐縮ですわ、うふふ。そういう高貴なる雰囲気は、持って生まれてしまったものなので仕方ないですわね…。
ブランケットクッション(ポンチョタイプ):
お姉さまたちったら、なんだか仲が悪そうな感じね…。誤解されてる方がいると思うのでいちおう言っておくけど、そんなことなくて四人でとっても仲がよくてよ。
あ、自己紹介しわすれてたわ。私、四女のポンチョタイプです。お姉さまたちはどちらかといえば上品って感じだけど、私は上品というかポップな感じね。色だって三色もあって、ポンチョタイプだから、広げれば頭からかぶって使うことだってできちゃうのよ。
まぁ末っ子だから好き勝手やらせてもらったといえば、そうなのかもしれないわね。でも私だっていろんな車種で紹介してもらったわ。ムートンカバー姉さんみたいにお高く止まっているのは私のタチじゃなくて、みんなに気軽に使ってもらいたいっていうのが私の運命みたいなものかしらね。よく同乗している子どもたちが頭にかぶって遊んでくれたわ。
お姉さまたちはみんな高級車「レジェンド」のカタログに掲載されたことがあるみたいだけど(長女のHマーク付きお姉さまも87年~89年あたりには載っていたらしいわ)、私はその経験は無くてね。
でも掲載されたことのある車種数だったら負けてないんじゃないかしら? あら、私もお姉さまたちみたいにケンカ腰になっちゃったけど、そんなつもりはなくて、純粋にどんな違いがあるのかを紹介したくってね。
たとえばそうね、「ステップワゴン」、「S-MX」、「CR-V」、「ライフ」なんかのカタログだとお姉さまたちは誰もいなくて、私しか掲載されていないことが多かったわ。すごいでしょ? たとえば、下のカタログ写真は1997年の「ステップワゴン」のカタログね。ポップでしょ~! くまのぬいぐるみの向かいに座らせてもらって楽しかったわ~。
こっちは同じく1997年の「S-MX」のカタログよ。色はパープル。どう? セクシィな雰囲気も出せる私に驚いた?
さらに下のは「CR-V」のカタログよ。同じく1997年。
アウトドアを楽しむようなアクセサリーが多い中でもまったく浮かずに雰囲気出せてるでしょ?(でも、このカタログの色は存在したことがなくて、当時限定でつくったのか、カタログ上だけのものなのかは、私も記憶が思い出せないわ)
きわめつけは、商用バン「ストリート」のカタログよ。
え?ちょっと不思議な車内に見えるって? そうね、設定としては夫婦で山登りみたいね。下のがそのページ全体だけど、私真ん中に陣取ってちょっと目立ちすぎちゃったかなと思うくらいだわ、でも素敵よね。
これだけ好き勝手やらせてもらってるのを見てくると、自分でもやっぱり末っ子だなぁって思っちゃうわね。
最後に、私の思い出のカタログ写真を紹介するわね。それがこれ。
コンパクトカー「Logo」の1997年のカタログからよ。ムートンカバー姉さんがいないのは残念なんだけど、それでも三姉妹が揃ってカタログで紹介されているの。お姉さまたちは「エンジ」と「ブルー」なんて色で分けられちゃってるから不本意だったかもしれないけど、3人揃って紹介されたのはほんと嬉しかったわ~。
私が想像するによ、お姉さまたちは「車内にクッションを置くことが大人の嗜み(たしなみ)」みたいな時代に生きてたと思うのよ。それが今はもうそういう時代じゃないのね。
だから私たちがいなくなったのも「時代」のせい。そんなにちゃんとした理由があったわけじゃないわ。お姉さまたちともよくそんな話をしてたわ。
車内にいたころはほんとに楽しかったわ~。販売してくれた人にも、私たちを車内に置いてくれてた人たちにもほんと感謝ね。ひょっとしたらまだ車内で私たちを使ってくれている人もいるかしら? もしいたら今後も大切に使ってくれると嬉しいわ!
※本記事の内容はHonda車の純正アクセサリーを前提に書いているため、車全般に当てはまるものではない点ご了承ください。
文/神山ともひろ(カエライフ編集部)
※この記事は、カエライフに2021年7月8日に掲載されたものです。