ワーゲンバスが自動運転バスに変身!? VWが展開する公共交通サービス「MOIA(モイア)」とは?
フォルクスワーゲンがドイツの都市、ハンブルクとハノーファーで新しい公共交通サービス「MOIA(モイア)」を試験中だ。モータージャーナリストの小川フミオがさっそく体験。リポートをお届けする。
すでにのべ750万人が利用
過疎地の公共交通をどうするかが問題になっています。欧州や米国では、過疎でなく大都市でも、公共交通網がとぼしいところがあります。その対策のひとつが、eモビリティといいます。
eモビリティとは、デジタル技術や、電気で走る乗り物を使っての交通手段。フォルクスワーゲン本社は、2023年3月に、MOIA(モイア)なる同社のサービスを体験させてくれました。
MOIAは、2016年にフォルクスワーゲンが立ち上げたMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)とTaaS(トランスポート・アズ・ア・サービス)のための会社。「当面の目標は、欧米の諸都市で、自動運転の車両によるライドシェアサービスを展開すること」(MOIAを担当するVW商用車部門のクリスチャン・ゼンガー取締役)といいます。
現在は、その前段階として、ハンブルクとハノーファー、2つの市と契約して、オンデマンド型のライドシェアを試験的に運行させています。このサービスに使われているのは、フォルクスワーゲンの商用車部門がわずか10カ月でスピード開発したという「MOIAプラス6」。数字の意味は、ドライバー以外6名乗車が可能だから。
利用者はMOIAのアプリを使い、スマートフォンで車両を呼び出します。乗車時にはスマホが切符がわり。現時点では1キロメートルで1ユーロ(混み具合などで多少変動ありとのこと)が課金されます。自分の名前と乗車人数を、現在地と目的地とともにアプリに入力すると、MOIAから3つまでの提案が戻ってきます。料金と所要時間から、自分に合ったものを選び返すという流れです。
自分のいる場所まで車両が来てくれることはなく、平均して200メートル歩いて、ピックアップポイントに指定された場所(バーチャルバスストップなんて言われています)まで行きます。
保護者といっしょにいる14歳までの子ども(たち)は無料。この情報はMOIAのホームページに載っていますが、市の施策とも関連しているかもしれません。
ワーゲンバスが自動運転バスとして登場!?
MOIAプラス6は、10カ月でスピード開発されたというわりには、大変よくデザインされています。電動ドアとステップで乗降は楽だし、室内は天井高が高くスペースもたっぷり。2.05メートルも全高が確保されているため、歩いて室内移動できるのも便利です。シートは独立タイプで、顔を覆うようなデザインのヘッドレストで個室感があります。
クリーム色のPVC(ポリ塩化ビニル)でしょうか。合成皮革で覆われたシートは、ホールド性がいいうえに、デザイン性も優れています。ドイツのメーカーが作っただけある、という感じです。
ハンブルクの街中にいると、このMOIAプラス6をしょっちゅう見かけます。現在は曜日も時間帯も限られての運行といいますが、すでにのべ750万人の利用者数が記録されています。
この先、2025年を目処にMOIAでは、いま人気のバッテリー駆動のミニバン、ID.BUZZをベースに、自動運転のID.BUZZ AD(AD=自動運転)の車両を投入しようと計画中です。
日本でも流行るか
私がハンブルグ市のはずれにあるMOIAのデポー(車庫)を訪れたとき、充電中の数多くのMOIAプラス6に加えて、そろそろ試験運行というID.BUZZ ADが置かれていました。
いまはドライバーがいますが、ID.BUZZ ADの運行が始まると、このサービスは無人で行われるようになるのでしょうか。
「すぐにそうはなりません。最初はプラス6とID.BUZZ ADは並行して運行されるでしょうし、クルマ椅子の移動のための車両などは介助のためにドライバーが不可欠です」
MOIA広報担当者が答えてくれました。
今回話を聞いたなかで、日本はサービス展開の候補地に含まれていませんでした。でも、地方自治体は、MOIAそのものとまではいわなくても、大いに参考にしたいサービスになるかもしれません。