最新カスタム車から旧車レストアまで「オートサロン2023」の見どころを一挙紹介
大盛況のうちに幕を閉じた「東京オートサロン2023」の見どころを、モータージャーナリストの小川フミオが解説。注目すべきカスタム車両と最新トレンドを一挙ご紹介します。
EV? 水素? 元祖ハチロクが大変身
東京オートサロン2023が、2023年1月13日から15日にかけての週末に、幕張メッセで開催されました。「日本が誇る世界最大のカスタムカーイベント」を主催者が謳うだけあって、第41回を数える23年度は、およそ350社が参加。国内主要自動車メーカー、外国車インポーター、タイヤメーカー、アフターパーツメーカー、カスタムショップなどが勢揃いするイベントとなりました。
「2022年のショーは、コロナ禍の影響があって、いまひとつ盛り上がりに欠けた感もありましたが、今回はすごいですね」
会場で会ったトヨタ自動車の広報部員の感想です。そもそも上記のとおり、カスタムショップやアフターパーツのメーカーのために始まった展示会。マクロな視点でショーの傾向を概括するのはムズカシイのですが、23年で印象的だったのは、トヨタ自動車が、水素や電気を積極的に喧伝したことでしょう。
朝いちばんのマスコミ向けプレスカンファレンスで、おおぜいの取材陣を前に壇上に姿を現したトヨタ自動車の豊田章男社長。ステージ右手に置かれた2台のAE86の車体側面には「電気じどう車」と「水素エンジン」と書かれていました。
「クルマ好きだからこそできるカーボンニュートラルの道がある」とした豊田社長。トレノは、4AGエンジンをそのままに、水素で走れるよう改造した車両です。いっぽうレビンは、電気。ただしクラッチやマニュアル変速機は残してあるといいます。
「カーボンニュートラルの時代でも愛車に乗り続けたい!というチャレンジです」
豊田社長の言葉にあるように、続けて登場したGRカンパニーの佐藤恒治プレジデントは、EVを売っているだけでは、2050年のカーボンニュートラルは達成しないと指摘。ひとがいま好きで乗っているクルマ(これをトヨタでは「愛車」と表現)をベースに、内燃機関を電気モーターに、あるいは燃料を水素に替えていくほうが、目標達成が早くなるというのです。
オートサロンで注目を集めたクルマたち
全体として、代替燃料車の展示は少なかったのですが、ひとつ、「テスラアライアンス」なるブースに興味を惹かれました。
アライアンス(企業の提携などの意味あり)というだけに、ボディペイント、内装、サスペンションシステムに手を入れたりと、複数のショップでカスタマイズされたテスラ車がずらり。なかには、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが「バットモビルみたいに仕上げてほしい」と依頼したという「ポリッシュガレージ」のモデルYもありました。
カスタマイズドGT-Rの世界における教祖的存在ともいえる「TOP SECRET」のスモーキーこと永田和彦氏も、600馬力のゴールドGT-Rを前に、「電気自動車も時期がくれば手がけるかもしれない」と言っています。
進化する旧車のレストア
もうひとつ、おもしろい傾向は、地味といえば地味ですが、旧車のレストアに、真剣に向き合おうという企業が出てきたこと。
TOYOTA GAZOO Racingは「GRヘリテージパーツプロジェクト」もスタートさせています。なかには、ランドクルーザーや2000GTまで含まれています。
会場内には、ランクルの開発を手がけているトヨタ車体が出展していて、ランドクルーザー専⾨店「ランクルBASE」をオ−プンすると発表。事業の一例として、ランクル40系のボディをランクル70系のベアシャシーに載せた車両を展示。
ボディのマウントポイントは変わっていますが、「性能はきちんと担保しています」と三浦正人店長の頼もしいコメント。
40系はディーゼルエンジンが粒子状物質排出基準を満たさないとして東京都などでは車検が通りませんでしたが、ランクルBASEによる新生40系は、フィルター装着で対応できると、これもファンにはうれしいニュース。
幕張メッセの会場には、初日から入場待ちのひとが大行列。来場者の数は3日間の会期を通して17万9434人と、昨年の12万6869人を大きく上回る結果に。自動車への情熱は衰えていない、と確信させられる光景でした。