電気自動車の「ゴルフ」になれるか? フォルクスワーゲンの新型EV「ID.4」に初試乗
フォルクスワーゲンがグローバル市場で販売する初のEV、「ID.4」に小川フミオが試乗した。日本では500万円を切るグレードの導入も! その出来栄えやいかに。
目指すは世界No.1のEVセールス
フォルクスワーゲンがついに日本にもEVを導入。11月22日から発売を開始した。ID.4(アイディーフォー)と呼ばれるクロスオーバー型の車体をもち、サイズはVWゴルフより全長も全高もすこし大きめ。9月に欧州でひと足先に試乗した印象は、かなりよかった。
ID.シリーズは、VWの電気自動車のブランド。本国と一部のマーケットでは、ID.3、ID.4、ID.5、それに先日試乗したID.BUZZとモデルが揃い、なかに4WDのスポーティな仕様の設定もあって、VWの本気度が伝わってくるような気がする。
現在フォルクスワーゲンでは、2026年には4台のうち1台はEVとする戦略を進めている。1590億ユーロの予算を組み、研究開発費とともに、既存の工場を電気自動車専門に変更して供給量も確保していくとする。目標は世界ナンバーワンのEVセールスだ。ID.4は、VWにとって、グローバル市場で販売する初のEVとなる。ドイツをはじめ、北米と中国でも生産される。
ボディ全長は4584mmに対してホイールベースは2766mm。見た目のとおりキャビンが大きくて、室内空間はたっぷりしている。VWゴルフを例にとると、全長は4295mm、全高は1475mm、ホイールベースは2620mmなので、ID.4はひとまわり以上、という感じのサイズだ。
パワートレインは、標準モデルが電気モーターを1基リアに搭載する後輪駆動。さきごろ追加で、前輪用にもモーターを追加した全輪駆動も登場している。私が乗ったのは後輪駆動車で、150kWの最高出力をもつ仕様だった。
EVの味付けもVW流
私のクルマは、77kWhのバッテリーを搭載。フル充電からの航続可能距離は537kmに達するそうだ。床下にバッテリーを敷き詰める設計で、高めの車高に合わせてルーフを高くしていることもあり、床はフラットでかつ頭上の空間に余裕があるため、乗っていると快適だ。
ギアセレクターは、メーターナセルの右から”生えて”いる。軸方向に回転させて、ドライブとかリバースとかポジションを選んでいく。BMWのi3を彷彿させるデザインだ。そして、このメーターナセルが小型の台形というのが、デザイン的におもしろい。多くのメーカーが、液晶パネルを大型化していくなかで、ID.4はあえて小型にこだわる。はたしてダッシュボード越しの前方視界がよく開けていて、ドライバーとしては安心する。
印象としては、ことさらパワー感にこだわっていない。加速のときは、ごく低速域でも、途中からアクセルペダルを踏み込んだときでも、スムーズといえばいいのだろうか。もたつくこともなければ、のけぞるようなトルクに翻弄されることもない。
500万円を切るグレードも
乗り心地も操舵感も同様だ。ひとことでいうと、気持ちがいい。長いホイールベースや、重量がそれなりにある車体のせいもあるのだろう。重厚感すらある乗り心地であり、不愉快な突き上げは感じなかった。
ステアリングホイールを操作したときの車体の動きは反応早い。しかし過敏でない。高速では疲れなそうだし、いっぽう、カーブが連続する道でもそれなりに楽しめそうだと、私は思った。
日本で販売されるID.4は、2種類のパワートレインを用意する。エントリーグレードの「ライト・ローンチエディション」は、最高出力125kW(170ps)のモーターと52kWhのバッテリーを搭載し、WLTCモードの最大航続距離は388km。
いっぽう、上位グレードのプロ・ローンチエディションは、最高出力150kW(204ps)のモーターと77kWhのバッテリーを搭載。航続距離は561kmだ。いずれも200Vの普通充電とCHAdeMO規格の急速充電の充電機能を備える。価格はライト・ローンチエディションが499万9000円。プロ・ローンチエディションが636万5000円。