「ワーゲンバス」が復活だ! フォルクスワーゲン ID.BUZZに初試乗。
フォルクスワーゲンの「ID.BUZZ」に小川フミオがデンマークで試乗した。電気自動車(BEV)となって現代に蘇った「ワーゲンバス」の魅力とは?
こんなクルマが欲しかった!
EV化が自動車を変える? そんなことを思わせてくれるのが、フォルクスワーゲンが発表した新型車「ID.BUZZ」だ。車名にある「ID.」とは、VWが展開するピュアEVのサブブランド。これまでに「ID.3」や、日本導入が検討されている「ID.4」など、ハッチバックやSUVが欧州で発売されている。
「BUZZ」は厳密な意味はわからないけれど、”バズる”とおなじだと思う。世に広く知れわたること=”膾炙(かいしゃ)”を目指したプロダクトってことだろう。なにしろ、1950年発表のタイプ2(タイプ1はオリジナルビートル)を下敷きにしたスタイリングはキュートだ。
私がID.BUZZをドライブしたのは、22年8月。コペンハーゲンで世界各地のジャーナリストを招待しての試乗会が開かれた。空港にほど近い会場には、さまざまなカラーリングの車体がずらりと並べられ壮観だった。
77kWhの容量をもつバッテリーとリアモーターの後輪駆動という組み合わせで、全長は4712mm、全高は1938mmもある5人乗り。航続距離は425kmとされている。このクルマのなにがいいって、車内外のカラーリングの楽しさだ。たとえばオレンジとホワイトの塗り分けの車体だと、インテリアもオレンジとホワイトの2トーンが基調。実際に乗ってみて、気分が浮き立ってきた。
そもそも欧州の物流に使われる、いわゆるユーロパレットを2枚運べる商用用途の「ID.BUZZ カーゴ」なる商用バンの設定もあるぐらいで、室内は広々としている。私が乗ったのはもっぱら乗用の「ID.BUZZ PRO」だったが、後席も広くて静かで快適。こんなクルマを欲しがっている層は、日本にも確実にいるだろう。
街中でのインパクトは絶大!?
モーターは最高出力150kW、最大トルク310Nm。2.5トン程度と車重は軽くないものの、走らせると充分に力強い印象だ。エンジンだと、とくに走り出しはかったるいかもしれないが、いきなり太いトルクが出るモーターは、ミニバンや商業カーゴバンにも向いているのだなあと改めて感心。
コペンハーゲンでは、市中でかなり注目を浴びた。空港からティボリ公園、コペンハーゲン大学植物園や美術館のある公園、カステレット要塞などの観光名所を通って、埠頭のほうまで走った。そのとき周囲のクルマや通行人は”お!”という感じで、私の乗るID.BUZZを注視したのだった。
なかには「いいですね」とか「航続距離はどのぐらいですか」とか話しかけてくるひともいて、街中でEVの多い北欧だけに関心が高いのだなと強く思った次第。ここでは実際に、VWのID.3がタクシーで使われているのだ。
日本で発売するかどうかは検討中、とフォルクスワーゲンジャパンの広報。要望が多ければより実現性が高まるようだ。ちなみにこのさき、ロングホイールベース(ということは3列シートかな)の計画もあるとか。家族がいるひとなら注目必至のクルマである。