アウディが三輪車「リキシャー」を再発明! 電気自動車の廃バッテリーを再利用しインドでデビュー。
2022年6月15日、アウディが発表したニューモデルはなんと三輪車! リキシャーやトゥクトゥクなどと呼ばれ、インドや東南アジアの街角でよく見かけるあの乗り物が、電動化&サイバーなデザインをまとって生まれ変わった。注目は電気自動車で使用した廃バッテリーの活用法。モータージャーナリストの小川フミオが解説する。
BEVの廃バッテリーをリキシャーで再利用!
電気自動車用の高性能バッテリーは、いかなるリユースの道があるか。大きな課題として、自動車メーカーも知恵をしぼっている模様。アウディでは2022年6月に、インドのスタートアップと協力して、リキシャー(人が引っ張る二輪や三輪のトランスポート。トゥクトゥクやオート三輪とも呼ばれる)の電動化に役立てると発表した。なかなかおもしろいプロジェクトだ。
アウディとインドのスタートアップ「Nunam」が共同でスタートさせたこのプロジェクト。アウディのBEV(バッテリー駆動のピュアEV)であるe-tronのテスト車で、お役御免になったバッテリーを使って、リキシャーを電動化するという。
Nunamの共同創設者のプロディップ・チャタジー(Prodip Chatterjee)氏(31歳)は「e-tronのバッテリーは中古とはいえ、リキシャーに使うにはたいへんパワフル」としている。クルマで使うには規定値以下になっても、自転車より少々重い程度のリキシャーは使用環境も限られているし、充分な価値を持つのだろう。
「このプロジェクトがうまくいけば、電動化でパワフルになったリキシャーを使って、新しいビジネスチャンスを見つけられるひとも増えるでしょう」。チャタジー氏の談話が、アウディのプレスリリース中で紹介されている。
すでにインドでは他メーカーによって電動化されたリキシャーも走ってはいるものの、たいていの場合、安価な鉛電池を使っていて、結果、航続距離は短いし、パワーも出ない。それに対して、e-tron(どのモデルかは特定されていない)のリチウムイオン電池は、はるか上をいく性能を有しているのだ。
「e-rickshaw」と呼ばれている今回のプロジェクト。当面、3台のプロトタイプを開発し、23年初頭にはインドで実走行に移りたいと、先のチャタジー氏は語っている。給電はソーラーパネルを使った専用のステーションで行い、リキシャー自体にもソーラーパネルを取り付けるとか。
目指すはリユース・システムのオープンソース化
今回のプロジェクトでは、走行実験とそれに続く量産化を通じて、走行にまつわるもろもろのデータを収集。そして、e-rickshawのシステムをオープンソース化することを目指しているそうだ。
「オープンソース化することで、世界中でこのプロジェクトを利用したプロダクトが生まれてくることを願っています。BEVのさまざまなパーツが二次利用されることを含めて、エコソーシャルな動きに、私たちも協力していきたいと思います」
アウディの環境基金(Environmental Foundation)のディレクターを務めるリュディガー・リックナゲル氏は、上記のようにコメントしている。
坂の多い日本では、リキシャーはなかなか苦労の多い輸送手段だ。エコロジカルな側面は高く評価されても、漕ぎ手(特に自転車のようなをものを漕いで引っ張る場合)の労苦は小さくない。でもe-rickshawだったら? ローカルな移動手段としては、タクシーに勝る側面もありそうだ。
BEVのバッテリーをやっかいな問題ととらえるのでなく、そこから新しいものを生み出していこうという姿勢こそ、BEVとつきあっていくなかで、私たちが必要としているものなのだ。