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最終更新日:2021.12.01 公開日:2021.12.01

フェラーリの限定スペシャルモデル、デイトナSP3が登場! 12気筒ミドシップで840馬力

フェラーリは11月20日(現地時間)、12気筒ミドシップの限定タルガトップモデル「デイトナSP3」を世界初公開しました。デイトナSP3とは一体いかなるスーパーカーなのでしょうか。現地で取材する機会を得たモータージャーナリスト、大谷達也氏が解説します。

文=大谷達也 写真=Ferrari N.V.

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あのデイトナが現代に復活!?

フェラーリ デイトナ SP3|Ferrari Daytona SP3

 フェラーリがイタリア・フィレンツェで行なったニューモデルの発表会を現地で取材してきました。ひと目見ただけで最新のフェラーリとわかるこの新型車、名前はデイトナSP3といいます。デイトナと聞くと、マニアのなかには1968年に発売された365GTB4を思い浮かべる方がいるかもしれませんが、実はあのデイトナは後にファンがつけた愛称のようなもので、メーカー自身はデイトナとは謳っていなかったようです。

 ただし、今回のニューモデルはフェラーリ自身がデイトナSP3と正式に命名しています。なぜ、フェラーリはデイトナと縁が深いのでしょうか?

 デイトナとは、アメリカのフロリダ州デイトナビーチにあるレーシングコース”デイトナ・インターナショナル・レースウェイ”を指しています。フェラーリは、1967年にこのサーキットで行なわれた24時間レースで1位から3位までを独占。しかも、この3台を横並びにしてフィニッシュさせるという派手な演出で世界中の注目を集めました。

1967年にデイトナ・インターナショナル・レースウェイで開催され、フェラーリが1位から3位までを独占した伝説の24時間レース。

 半世紀以上も前に行なわれたレースが、なぜいまも語り継がれているかといえば、ここでフェラーリは宿敵フォードを打ち破ったからです。ご存じのとおり、フォードはアメリカの巨大自動車メーカー。スポーツカー作りでは長い伝統を誇るフェラーリですが、規模の点ではフォードに到底かないません。そんなフォードが1960年代にフェラーリを買収しようとした際、創業者のエンツォ・フェラーリはその申し出を拒絶。これに激怒したフォードのヘンリー・フォード2世会長は、当時フェラーリが活躍していた耐久レースに総力を挙げて参戦することを決めると、ルマン24時間で1966年から4年連続でフォードが勝利してフェラーリの面目を台無しにしたのです。

 そうしたなか、フェラーリが一矢報いたのが、前述した1967年のデイトナ24時間でした。デイトナもルマンも同じ24時間レースで、当時はどちらもスポーツカー世界選手権の1戦に組み込まれていました。しかも、デイトナはフォードのお膝元であるアメリカのサーキット。そこでフォードを完膚なきまで叩きのめしたことで、フェラーリにとっては忘れがたい1戦となったのです。

 なお、この戦いの模様は2019年に公開された映画「フォード対フェラーリ」でも描かれているので、興味のある方はご覧になってください。

デイトナ SP3のデザイン

 話題を新型車の発表会に戻すと、1960年代の耐久レース・シーンをよくご存じの方であれば、このクルマがデイトナと名付けられた理由をすぐに理解できることでしょう。なにしろ、1967年のデイトナ24時間で優勝したフェラーリ330 P3/4やフェラーリ330 P4といったモデルの面影を、この新型車はよく受け継いでいるからです。

 ただし、フェラーリのデザイナーたちはデイトナSP3で当時のモデルを再現しようとしたわけではありません。かつてのレーシングカーに思いを馳せながらも、現代のスポーツカーに相応しい姿を追求した結果が、このデザインだというのです。

フェラーリ デイトナ SP3|Ferrari Daytona SP3

注目を集める名車復刻

 たしかに、デイトナSP3のスタイリングからは330 P3/4330 P4の影響が感じられますが、かといって、当時のデザインをそのまま用いているわけではありません。発表会の席でも、フェラーリのある役員は「どれかひとつのモデルを再現するのではなく、共通のコンセプトを持つ複数のモデルからインスピレーションを得ている」と語っています。

 実は、デイトナSP3に限らず、ここのところ世界中のスポーツカーメーカーやラグジュアリーメーカーから数多くの「復刻版」が登場しています。

 たとえばアストンマーティンは、映画「007シリーズ」に登場するボンドカーの元祖というべき“DB5”を当時の姿そのままに再現したり、ベントレーもブロワーと呼ばれる90年前の名車を復刻生産しています。どちらも、昔のモデルをそのまま再生産するもので、コンチニュエーション(継続)プログラムなどと呼ばれます。

 いっぽうで、先ごろランボルギーニはカウンタックLPI 800-4というモデルを発売しました。往年の名車カウンタックの復刻版ですが、実態はデザインのイメージを引き継いでいるだけで、技術的には完全に現代のクルマです。

 デイトナSP3がこれらと異なっているのは、最新の技術で作られていることと、特定のモデルをモチーフにしていないことの2点にあります。

今年の8月、誕生50周年を記念し現代にその名が蘇った「カウンタック LPI 800-4」。

1920年代後半に誕生したベントレー「ブロワー」が90年ぶりに新車として完成。約2000のパーツをひとつひとつ設計し、手作業で製作された。

55年ぶりに復活したアストンマーティン DB5。映画007にも登場した「世界で最も有名なクルマ」と呼ばれる1台だ。

限定599台。気になる価格は?

 このように、ある時代背景を持ちつつも、それを現在の技術で作り直した最新モデルのことをフェラーリはイコナ・シリーズと呼んでいます。デイトナSP3はその第三弾で、3年前に発表されたモンザSP1とモンザSP2がイコナ・シリーズの始まりでした。

 デイトナSP3は、カーボンモノコックのボディに6.5リッターの最新V12自然吸気エンジンをミッドシップしており、最高出力は840ps、最高速度は340km/h以上で、0-100km/h加速は2.85秒で駆け抜けます。価格はイタリア国内で200万ユーロというのでおよそ26000万円。599台が限定販売されますが、すでに完売しているというから驚きです。

フェラーリ モンザ SP1(左)と SP2(右)

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