真夏に走らせるのはシンドい!? スーパーカーあるあるトラブル
真夏の真っ昼間に出動するのは自殺行為!? これまでフェラーリを13台、ランボルギーニを2台買った生粋のスーパーカージャーナリスト、清水草一氏が究極のトラブル回避方法を伝授。もう真夏のトラブルは怖くない!
日本の猛暑でもビクともしない
タイトルを見て、さて、どんな悲惨なトラブルが登場するんだろうと、期待をふくらませた方もいるだろう。先日も確かフェラーリが燃えたはず。やっぱりスーパーカーは燃えるのか。夏はより燃えやすくなるのか。ネット上では、「フェラーリやランボルギーニは大抵燃える」「買うのはバカ」と言った声も転がっている。もはや燃えるくらいじゃ物足りない、「真夏の猛暑で爆発した」くらいの話を聞かせろ! といったところか。
しかし残念ながら、そのテの話は、個人的にはまったく持ち合わせがない。これまでフェラーリを13台、ランボルギーニを2台買ったが、真夏に走らせてシンドイ思いをしたことは皆無だ。
なぜか。
夏はスーパーカーに乗らないからだ。
やっぱり真夏にスーパーカーに乗ったらシンドイから? と思われるだろうが、実際には、それほどシンドイことはない。特に新しめのスーパーカーは、エアコンはビンビンに効くし、オーバーヒートなんて前世紀的なトラブルとも無縁だ。日本の猛暑でもビクともしない。
でも、真夏、炎天下でスーパーカーに乗っても、あまり楽しくない。
なぜなら、まず窓が開けられない。開けてもいいが、開けると暑いのでつい閉める。窓を閉めると、スーパーカーの官能的な排気音があまり聞こえない。私の場合、8割がた、あのサウンドを聞くためにスーパーカーに乗ってきた。だから乗るときは、いつも窓は全開だ。冬でも全開だ。ヒーターをつければそれほど寒くない。
でも夏はイカン。窓が開けられないなら、わざわざスーパーカーに乗るのは無意味。だから乗りません! 乗らなきゃトラブルも起きるはずがない。
いったいなにが起きているんだ!?
いや、思い起こせばスーパーカー初心者の頃は、多少はあった。
真夏、夜なら大丈夫かと思って軽井沢(涼しいところ)に向けて出撃し、その途中、急にフェラーリが遅くなった。道路がものすごい上り坂になったわけでもないのに、突然軽自動車のような感覚になった。
私はものすごく焦った。いったい何が起きたのか!? と。エンジンが止まるならまだわかる。遅くなるというのはどういうことなのか。水温計や油温計は正常だ。警告灯も点灯していない。なのにフェラーリが軽自動車になった。俺の命よりも大切なフェラーリ様に、いったいなにが起きているんだ!?
原因は、謎の電気系トラブルにより、8気筒のうち片側の4気筒が止まった(点火・爆発しなくなった)ことにあった。特に夏とは関係のないトラブルだったが、でもひょっとして、暑いからトラブった可能性もある。とにかく夏はスーパーカーに乗らないに限る!
それも、もう25年も前のこと。現代のスーパーカーなら、そんなトラブルはほぼ絶対に起きない。
とは言うものの、スーパーカーの命は永遠だ。古ければ古いほど価値が上がるので、古いからと言って廃車にされるはずもなく、すべて宝石のように大切にされている。
つまり、すべてのスーパーカーが日本の猛暑でもカイテキかと言えば、そんなことはない。エアコンなんて効かない(あるいはない)上に、冷却性能も脆弱な古~いスーパーカーは、たくさん棲息している。そんなクルマで、真夏の真っ昼間に出動するのは自殺行為だ。自爆と言ってもいいだろう。
でも、オーナーがそのことを知らないはずがない。「今コイツに乗ったら自爆だな」とわかっていて、わざわざ自爆するのは本物の自爆。自爆したいなら別だが、したくないならわざわざするはずがない。
スーパーカーは女王様
スーパーカーは、移動するための機械ではなく、快楽のために生まれた女王様だ。移動機械なら、過酷な条件でも移動するのが使命だが、快楽のための女王様は、快楽を得るためだけに乗られるのだから、条件が悪い時に乗る意味はない。
特に、オープンボディのスーパーカーはそうだ。オープンも快楽のため。快楽のために乗っているのに、真夏の太陽に頭のてっぺんをじりじりと焼かれるなんて、快楽どころか拷問ではないか。
とにかく私は、夏はスーパーカーに乗らないと決めている。若い頃は、「夜なら涼しいから」と、たまに乗ったが、そこまでして無理に乗る必要はもうない。スーパーカーは基本的に宝石なので、持っているだけで満足できる。つまり乗る必要すらないのだ!
そんなクルマに、わざわざ真夏に乗るなんて、女王様に雑巾がけをやらせるようなもの。それは失礼というものである。なにしろ、スーパーカーは女王様。オーナーの私よりはるかに偉いのだから。