飛行場の働く車を自動運転化! AiROが運送作業を実証実験
空港内での自動走行車両を手がけるAiROが、空港の滑走路敷地内で働くグランドハンドリングの省人化を目指して実証実験を行った。自動運転化で運送作業はどう変わる? 会田 肇 氏がレポートする。
人手不足解決の切り札となるか?
丸紅とZMPの合弁会社であるAiROは2020年11月10日、成田国際空港において3日間にわたる自動運転の貨物けん引車の実証実験を実施。その模様を報道関係者に公開した。実験では制限区域内における手荷物を積載し、積み込み拠点から旅客機までの間を自動走行する。深刻化する人手不足を解決するため、25年以降、レベル4での無人自動運転を目指す。
空港内での積載物の運搬作業は、ここ数年、深刻な人手不足が続いている。AiRO代表取締役 浅野通元氏によれば「政府は2030年に6000万人のインバウンド需要を見込んでおり、それに伴うグランドスタッフの人材不足は顕在化している。近年ではこれが要因となって海外LCCの新規就航ができなくなるという事態も発生した」ほどだ。
コロナ禍にある現在こそ一時的にこの状況は収まっているが、コロナ後は再び同じような状況が繰り返される可能性は十分予測できる。AiROはそうした事態に備え、「グランドハンドリング車両の自動運転化によって応えていく」(浅野氏)考えで、今回の実験はそれを見据えての実施となった。
この日、運搬を担ったのは自動運転機能を備えた貨物けん引車「ZMP 製CarriRo Tractor 25T」。この車両はEVトーイングトラクター仕様となっており、無人状態で最大25トンの貨物をけん引できる能力を備える。自動走行にはLiDARやGNSS(GPS)など複数のセンサーを使用し、自車位置や周囲の状況を認識しながら高精度走行マップに沿って走行。この車両が成田空港第2ターミナル本館から駐機場/サテライトまでを運搬用コンテナ4台をけん引して往復した。実験には日本航空がパートナーとして協力した。
2025年以降はレベル4での運用を予定
自動運転の制御を司るのは、ZMPが開発した「IZAC(アイザック)」と呼ばれる自動運転用のソフトウェアプラットフォームだ。各センサーはIZACを搭載したコンピュータへ接続され、その情報に応じて自律移動の「認知」「判断」「操作」などの最適化を図る。
たとえば今回の実験では、ターミナル沿いは目標物が得やすいために主にLiDARを使用する一方で、沖止めスポットまで行くときは目標物が得にくいためにGNSS(GPS)を使う必要がある。この実験ではIZACが環境に応じて最適なセンサーを選択し、空港という特殊な環境に合わせた自動走行に役立たせる。
今回は、万一の緊急停止などに備えて運転手が乗車したほか、クラウドシステム「Robo-Hi」による遠隔モニタリングも実施した。モニタリングは車両の運転モードなどのステータスを確認するほか、走行ルートの選択や自動運転開始といった指示を行うことができる。
なお、この実験では要員として計2名が必要となるが、「2025年以降、一定の条件下で運転を全て車両に委ねるレベル4を実現できることで、シフト交代要員を勘案して1台あたり3人の省人化が実現する」(浅野氏)。この実験はここに目標を置いて実験を行っているのだ。
いまは信頼性を高める段階
AiROは2018年12月に設立して以降、これまでに自動運転走行による実証実験を3回にわたって取り組んできた。1回目は19年1月、成田空港において、エスティマによるスタッフの輸送を想定した実験を実施。2回目(19年3月)と3回目(19年12月)は中部国際空港において、11人乗りの小型バス「ZMP製RoboCar Mini EV Bus」が誘導路を横断しながら乗客の輸送する実験を実施した。今回の実験は貨物けん引車「ZMP 製CarriRo Tractor 25T」を使った4回目となる。
また、CarriRo Tractorは、人手不足が続く空港内のコンテナ輸送のほか、工場敷地内や港湾での輸送といった場面での運送作業の自動運転化を想定して開発されており、他にもより小型で小回りが利く2.5トンタイプ「CarriRo Tractor 2.5T」もラインナップする。浅野氏によればこれらを含め、「現段階ではまだ(車両の)販売実績はない」とのことだが、AiROとしてまずは実験を通して信頼性を高めていき、今後の販売につなげていくことにしている。